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特集「最高のビッチ」

2017年8月9日

特集「最高のビッチ3」⑨アンジェリカ・ヒューストン
グリフターズ/詐欺師たち(下)(1991年 犯罪映画)

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監督 スティーヴン・フリアーズ

出演 アンジェリカ・ヒューストン/ジョン・キューザック/アネット・ベニング

シネマ365日 No.2202

生きるって大変なの 

★08-11_最高のビッチ3-3

この映画が重いのは多分、アンジェリカ・ヒューストンのキャラでしょうね。堂々とした存在感です。プラチナブロンドに縁取られた鷲のような容貌。高い鼻、幅広い肩、引き締まった体躯に俊敏な脚。ホテルでサイレンサーの安全弁をカシャっと外し、背中に隠す、流れるような動作。そんな小技さえ絵になる。ロイが自分と組まないのはリリーのせいだと逆恨みしたマイラは、リリーをつけ、彼女が車のトランクに大金を隠していることをボスのボーボーにチクる。裏切られたと思ったボーボーはリリーの殺しを部下に命じる。リリーはモーテルに隠れるが、マイラは「ママ、ママ、見ているがいいわ」謎のような言葉をつぶやき、リリーと同じモーテルに部屋を取り、寝込みを襲う▼ロイはリリーの遺体確認のため警察に行った。「口に拳銃を入れ、頭を吹っ飛ばしました。ひどい状況です。お気の毒ですが」。ロイは遺体を見たが、手の甲にやけどの跡はなかった。ロイにはリリーがマイラを撃ち殺し、マイラになりすまして逃亡したのだとわかるが、死体は母だと警察に証言する。リリーはロイの部屋に来た。室内を見渡し、金を隠しそうな場所に見当をつけ、ピエロの絵を外し、額縁の後ろに隠してあった大金を見つける。バッグに詰め込んでいるときロイが戻ってくる。「あの女のおかげでボーボーに追われる羽目になったわ。私の部屋に入ってきたときガウンを着ていた。古い詐欺の手口よ。氷を買いに出て部屋を間違えたフリよ」「詐欺はやめろ。今から仕事を探すんだ」とロイ。「就職なんてしたことないわ」「競馬場に戻ればまた同じことだ。人生おしまいだ」▼リリーは耳を貸さず「逃げるのに金がいるのよ」「僕の金はやらないぞ」「喉が渇いた。ロイ、飲み物をちょうだい」「飲ませるわけにいかない」「じゃ、水を」「それならいい」リリーはロイにワイン、自分には水を汲んで持ってくる。息子にグラスを渡し「生きるって大変なのよ。私に怒っているのね。いい母親じゃなかったわ。でも二度あなたの命を助けてあげた。今度は私を助けて。お金をちょうだい。詐欺はやめるの? よかった。あなたに向いていないわ。堅気になる? それならお金はいらないわ。私にちょうだい」「僕の金だ」。リリーはややあって訊く。「ロイ、もし私が母親でなかったら? そう望んでいない? わかっているわ。顔に書いてある。構わないのよ、ロイ」リリーはやさしくロイの頬を撫でる。「あんたは母親だ。もう話すことはない」「ロイ。お金をちょうだい。どうすればいいの? なんでもするわ。欲しくない?」「バカはよせ!」リリーは持ち出そうとしたバッグを取り返すはずみに、誤ってグラスを割り、ガラス片がロイの喉に深く突き刺さる。ロイは血まみれで倒れる。リリーは動転してロイを助け起こそうとするが手遅れ。床に散乱した血に濡れた金をかき集め、うろたえながらもロイの死体をまたぎ、後をも見ないで部屋を出る。車で街を出るリリー。街は夜だ。どこに行くとも知れず、リリーは車を走らせる。エンド。ハードボイルドよね。息子との間に近親相姦は実際にはありませんでしたが、母親を女と見てしまうロイが、苦しくなって家出し、母親から離れようとした。母親は息子の執着を知っていて、高跳びの金を奪うため、息子を誘惑する。このときアンジェリカ・ヒューストンの鋭い目が、獣のような静けさを湛えます。息子は危ない世渡りをしている母親に詐欺をやめろ、自分も足を洗うというのですが、母親は自分にはできないとわかっている。堅気の水など合わない。気の弱い息子ならまだ間に合うだろう。彼女がいう「生きるって大変なのよ」は、この母親がおそらく初めて息子にかけるやさしい言葉です。ロイがマイラにいった「君が怖い。強くて切れ者で欲しいものは手に入れる女を知っている」もちろん母親のことね。詐欺師の「だまし・騙され」の物語ではなく、裏道をいくビッチの暗さ、愛とか情緒など振り捨てて生きる、どうにもならない、やりきれなさがこの映画に繊細な陰影を与えています。

 

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