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特集「最高のビッチ」

2017年8月11日

特集「最高のビッチ3」⑪イザベル・ユペール
キューリー夫妻その愛と情熱(下)(1998年 伝記映画)

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監督 クロード・ビノトー

出演 イザベル・ユペール/シャルル・ベルリング/フィリップ・ノワレ

シネマ365日 No.2204

ラジウムの青き光 

★08-11_最高のビッチ3-3

情報が漏れないために新元素の分離はピエールとマリーだけでやるのだ。2トンの瀝青鉱が運び込まれた。場所は昔医学部の死体解剖室だった部屋だ。1ミリグラムの新元素を取り出すために、2トンの瀝青鉱を砕き、溶かし、濾過し、沈殿させ分解を繰り返す。肉体労働以外の何物でもない。例によって急かしに来るシュッツ氏に「正確な情報を得るためには時間が必要だ、チクショー!」マリーはヒステリーを起こして怒鳴る。シュッツ氏もその上司の地区長も負けていない「小生意気な尻軽女。砂利の山で何を探してるんだ、チクショー!」。とうとうシュッツ校長はアカデミーに呼び出された。ピーターは「必ず発見するから時間稼ぎしてくれ」とシュッツに頼んだ。シュッツは「英国人に反論できず逃げ出す気だな。そうはいかんぞ」マリーは「発見したら火の発見を上回る人類史上の快挙になるのよ」となだめたり、おだてたり▼シュッツは協会の審問の席で「天才を管理するのは至難の技です。彼らは再び(ウランに続き)世界を震撼させる。彼らは名誉に無頓着で疲れを知らず、仕事熱心で誠実です。気位が高く、干渉されることを嫌います。偉業を達成する条件は揃っています。クビにするのはわたしだけにしていただきたい。彼らの研究を保護すべきです」汗だくになってかばっていた。研究室では、疲労のあまり失神しかけたマリーに、少し休めとピエールが言っていた。「なぜわたしがここにいると思う? わたしはここにいるのが楽しいからよ。鍋の中の金属、世界の科学者を大騒ぎさせるかもしれないわね。その発見の半分は女でポーランド人のわたしの功績よ」「頭脳明晰な女性科学者さ」「いいから少し座れ、マリー。君は献身的で無欲で、自己犠牲的精神を持っている」「科学界の聖女? 間違っているわ。犠牲や献身が目的で働くのじゃない。発見や研究が楽しいからよ。化学の喜びは一種の麻薬で、肉体的な喜びなの。犠牲だなんて思わない」「すると君は自己中心的で偏執狂的で、執念深いのか」「その通り。だからわたしを家に連れて帰らないで」驚くなかれ、新元素発見に消費された瀝青鉱は11トンに及び、昼夜を分かたぬ執念の追跡によって、ついにラジウムは分離されたのです。「ウランの数百倍の放射能を発する原子量は226」と報告がなされた。研究室が宵の薄闇に包まれたとき、実験室に浮かんだのは人類が初めて見たラジウムの青い光でした▼実験に没頭するあまり家庭を顧みないマリーにジョルジョットが噛み付くシーンがあります。マリーは6人を招待した夕食会を忘れていたのです。客を待たせている。今から用意しろとジョルジョットにいう。「肉屋も八百屋もツケがたまって分けてくれません。子供が不憫です。こんなところにいられません」「子供を寝かしつけたら出ていってちょうだい」「そんなことしかいえないのですか。情けない人」ジョルジョットはマリーに、社会人としての常識を教えられる数少ない大人でした。マリーが常軌を逸した女であることはわかっている、正気と狂気の塀の上を歩いているような女だし、恥知らずなくらい利己的でわがままで、どうしようもないが、誰ももっていない純粋の核のようなものを失わない。ジョルジョットは「大人こども」みたいなマリーが憎めない。出て行けと言われながらイレーヌの手を握って眠る。客間ではマリーが作った得体の知れぬ料理を「まあ珍しい、こんなの食べたことがない」と、何かいうべきことを見つけねばと、客たちは食していた▼ピエールと袂を分かった同僚ギュスターブもわたしは好きです。彼もまた頭脳明晰な優秀な科学者だった。彼の目的は発明品に全て特許をとることだ。学校にいても儲からないと、辞めてしまった。ピエールは「君のやることは科学のためではなく、金もうけのためだけだ」とけなすが「医者の家に生まれた君と貧乏人の家に生まれた僕は違う。特許をとるのはもうけるためだ。いい暮らしをするためだ」。そんな彼がピエールとマリーが悪戦苦闘しているのを聞き、ある品物をプレゼントに来る。光線分離スペクターだった。ピエールとマリーが、初めてこの世に現れたラジウムを分解したのはこのスペクターです。彼やジョルジョットによって、マリーやピエールの偏執的な性格は、社会人としての感覚のバランスを保ち、人が大切にしなければならないものは研究以外にもあると気づかせます。楽しい食事、広い家、子供達と過ごすゆっくりした時間…夫妻がノーベル賞受賞によっていちばん喜んだのは、苦しい家計を助ける賞金でした。ほらね、ギュスターブのことばかりいえない(笑)。

 

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