女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ダンディズム-dandyism-」

2017年8月12日

特集「ダンディズム4」①キアヌ・リーブス
50歳の恋愛白書(2010年 恋愛映画)

Pocket
LINEで送る

監督 レベッカ・ミラー

出演 ロビン・ライト/アラン・アーキン/キアヌ・リーブス

シネマ365日 No.2205

詩を書かない詩人 

★12-15_ダンディズム4-

恋愛適齢期」によく似た映画です。キアヌ・リーブスがアラン・アーキン、ロビン・ライトらベテランに挟まれ、ヒロインに恋する35歳のバツイチ男を演じる。キアヌがバリバリの主演である「ジョン・ウィック」や伝説の域となった名作「マトリックス」をさしおいて、なにゆえくたびれた中年男にダンディズムをこじつけねばならないのか。確かにそうなのですが、ああ見えてキアヌは煮ても焼いても食えない、軟体動物みたいな属性を持っています。彼の出演作のジャンルの多彩なこと。アクションやラブストーリーで終始していません。案外複雑なのです。体を鍛えることにおいてはフィットネス・フェチというか、カンフー・アディクトというか、厳しいトレーニングをものともせず、太りやすい体重を元に戻す。太陽のような息吹を感じさせた美貌に陰りが見えてきた今こそ、彼の只者でない「陰」の部分が冴えるのだ…と勝手に期待しているのです。監督がレベッカ・ミラーというのも関心をそそる。ダニエル・デイ=ルイスの奥さんで、最新作にジュリアン・ムーアの「マギーズ・プラン幸せのあとしまつ」があります▼豪華なキャストです。ヒロイン、ピッパ・リーの10代にブレイク・ライブラリー、現夫であり成功した出版社の社長ハーブにアラン・アーキン、彼の元妻ジジにモニカ・ベルッチ。現在のピッパの親友サンドラにウィノナ・ライダー。彼女が実はハーブと不倫しているのですが、役の上でもトラブルがつきまとう彼女、不倫でよかったわね、万引きなら爆笑モノよ。そうそう、若いピッパが居候していたときの、叔母さんのゲイの相手カットに、出たぞ、ジュリアン・ムーア(笑)。この人とカトリーヌ・ドヌーヴはゲイ・フレンドリーの双璧ね。ゲイ役をやったら出演作が固定される、なんて業界のジョーシキを非ジョーシキにしてしまった傑物であります。次から次、一流監督から舞い込むオファを鮮やかにさばく、女優の中の女優よ▼ピッパ・リーは何不自由ない境遇にいる妻。夫が望む静かな老後を叶えるべく、マンハッタンからコネチカットに引っ越した。夫に尽くす妻であるが、こっそり、年寄りばかりの「死にゆく人の村」だともらす。彼女の10代はドラッグ漬け。生まれたときに金色の体毛があり、母親は「猿を産んだ」とショック死しかけた。その母も神経を病み薬でおかしいときもあるが、やさしい母だった。彼女は心臓麻痺で死ぬ。結婚し、双子の息子と娘を産み、娘は反抗的。母の死を聞き、ピッパ・リーはつぶやく。「もしできるなら、もう一度母と午後を過ごしたい。やさしくしたい」。叔母に引き取られ自由な空気にすぐ馴染み、同棲するカットに惹かれる。彼女は危険な香りがした。叔母の家を出た後クスリならなんでも手を出し堕ち続けた。パーティでハーブと妻ジジに知り合う。ジジは夫の愛を失ったことに絶望し、ピストル自殺する。ピッパ・リーはハーブと結婚し、人が理想的と羨む今の生活に落ち着いた。しかし献身的な妻と母を演じている心は虚しい。「年寄りばかりの村に飽きたか。昔が懐かしいか」とハーブは聞いた▼キッチンが荒らされていた。盗まれたものはないが、ケーキが食べ散らかされていた。カメラを取り付け、写っていたのは自分だ。「むさぼり食っているの。異状よ」ハーブは「君が夢遊病なのと僕がボケるのとどっちがいい?」。娘は報道写真家で紛争の地を飛び回っている。母になつかない。隣に越してきた引きこもりの中年男がクリスだ。妻の浮気の現場を目撃し離婚した。深夜のコンビニに仕事を見つけ、夜働いている。眠ることに怯えるピッパ・リーがコンビニに行き、言葉をかわすようになる。クリスは「ドライブに行こうか」と誘った。ピッパ・リーは幻覚を見るようになる。芝生に水をやっていたらライオンがいるのだ。どことなくファンタジックな幻覚で、フルチのようなホラーではない。熱心に製作しないと、陶芸教室から追い出されたピッパ・リーがいつもより早く帰ると、夫の様子がおかしい。女の靴が脱ぎ捨ててある。バスルームを開けると、サンドラがしゃがみこんで泣いていた。なぜ浮気したのか。「この年でばかげているだろ。でも君は僕を哀れみ始めた」。ピッパ・リーは自分が手にした罪のバトンをサンドラに引き渡した思いがして、急に心が軽くなった。その夜、クリスの部屋に窓から忍び込んだ。娘は「ママにやさしくできない自分が辛い」といって抱きついて泣いた。わかりあえた。「離婚の手続きを進めて」といって、ピッパは家を出る。「ママは尽くしてくれた。バカンスくらい当然よ」娘は笑顔で送り出す。クリスの働くコンビニがあった。女は車をU・ターンさせクリスを迎えに行く。「物語の先は知らない。私は誰になるのかも。知っているのはこれが始まりだということ」でエンド。キアヌは母親に毒づくか、コンビニでブスッとしているか、ピッパ・リーを乗せて夜のドライブか、ラブシーンもないことはないけど、ロビン・ライトの表情だけでおしまい。キミ、なにしに出てきたのか、といえばいえるけど、あの何ともいえん、とらえどころのないヘタレ男に、詩を書かない詩人のような、カッコつけてしまうところが、キアヌ・リーブスならでは、なのであります。

 

Pocket
LINEで送る