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特集「ダンディズム-dandyism-」

2017年8月16日

特集「ダンディズム4」⑤ピーター・カッシング
スクリーミング/夜歩く手首(1973年 日本未公開)

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監督 ロイ・ウォード・ベイカー

出演 ピーター・カッシング/ステファニー・ビーチャム

シネマ365日 No.2209

お目にかかれて光栄です

★16-18_ダンディズム4-2

この映画を見た二つの理由。ひとつ、「アダムス・ファミリー」の「ハンド」以来、わたし、手首フェチです。ふたつ、ピーター・カッシングが出演している。カッシングは本欄でも「ゾンビ急行地獄行き」「ホラー・エキスプレス」「若妻・恐怖の体験学習」とか、割りとこまめに書いています。「若妻…」なんか、我ながらみっともないくらいベタホメでしてね。黒いケープがよく似合うだとか、やれ細身だ、やれ気品があるとか。でも本作のジャケ写、詐欺に近いわよ。「イギリスを代表する怪奇俳優、ピーター・カッシングら豪華俳優陣」なんてあるから、主役に間違いないと思うでしょう。脇役とまではいかないけど、映画が半分以上進んでから、ひょいと現れるロンドンの高名な精神科医です。何をするのかというと、神経症で衰弱したヒロイン、キャサリン(ステファニー・ビーチャム)の主治医となるだけ▼でも、これだけバカバカしい映画が品格を(ト言えるかどうか苦しむが)保持するのはカッシングのおかげよ。彼が現れると、おお、これが柄の悪い映画業界の連中でさえ、口を揃えて紳士とほめそやす男性なのか、と博物館に来たみたいな錯覚にとらわれる。事実、人品骨柄卑しからず、知性と教養が服を着たような物静かな風貌、ドラキュラだろうとゾンビだろうと、束になってもカッシングは汚れない、と一人で意気がっているのである。役柄としては、だから医者とか弁護士とか、校長先生とかが多かった。彼のシャーロック・ホームズは、コナン・ドイル創作の、原型ともいうべき、古き良きシャーロック・ホームズの典型で、シャーロキアンの中にも大ファンがいます▼さて内容ですが、コキ下ろしたものの、そう退屈はしません。何しろイギリスの片田舎にある豪壮な貴族の屋敷が舞台。典雅な木造ゴシック建築、何万冊の蔵書、螺旋階段の壁に掛けてある歴代当主の肖像画。四角い吹き抜けを囲む回廊。高い天井からぶら下がるシャンデリア。何本もの太いろうそくが照らし出す、幻想的な長い廊下。そこをですね、蟹みたいに這っていく、人間の血まみれの右手首がちょっと漫画チックなのですけど。キャサリンはロンドンから嫁いできました。冒頭の彼女のモノローグ「夢の中で私はいつも1795年の場所に行く。幸せだった。私は結婚して、馬車で新居に向かっていた。しかしそこは紛れもない恐怖の館だった」▼なんで恐怖だったかというと、夫のおじいさんヘンリーが遊び人で、いつも屋敷はどんちゃん騒ぎ。木こりのサイラスが結婚したと聞き、花嫁の処女を奪いに新居に押しかける無法者である。花嫁は強姦され、サイラスは領主に刃向かった理由で手首を切り落とされ、お前の家に嫁ぐ花嫁を汚し、代々呪いをかけてやると誓う。キャサリンは幻影に苦しめられ、手首で首を絞められ、男に覗かれ、とうとう参ってしまう。そこでロンドンから名医のカッシング先生が呼ばれた。いくら名医でも呪いは治療するわけにいかんみたい。おまけに生まれた赤ん坊は顔にサイラスと同じ赤い痣があり、つまり父親は夫ではなくサイラスだってことね。知らなかった、いつのまに?▼夫は狂気のように墓を暴いて埋葬されていた骸骨を打ち砕いてバラバラにし、キャサリンは赤ん坊を抱いて茫然自失、カッシング先生も言葉なし。「父の愚行が子に報い、3代、4代と続くであろう」というナレーションで終わる。呆然。カッシング先生、せめてお目にかかれて光栄でした。

 

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