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特集「ダンディズム-dandyism-」

2017年8月17日

特集「ダンディズム4」⑥ヒュー・グラント
マダム・フローレンス!夢見るふたり(上)(2016年 事実に基づく映画)

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監督 スティーヴン・フリアーズ

出演 メリル・ストリープ/ヒュー・グラント/サイモン・ヘルバーグ/レベッカ・ファーガソン/ニナ・アリアンダ

シネマ365日 No.2210

この映画の男たち

★16-18_ダンディズム4-2

マダム・フローレンスの心やさしい夫シンクレア(ヒュー・グラント)が、妻のリサイタルを成功させるため涙ぐましく奮闘する、もちろん上質のコメディとして価値ある映画ですが、それだけなら今まで通りのヒューさまです。でも彼の妻へのいたわりには、どこか人生の哀歓のようなものがある。ひどい音痴でありながら本人だけそれに気付かず、カーネギーホールでリサイタルをひらこうとする妻が、ただの無鉄砲な天然だとは思えない。50年来の病気を抱え、生き延びてきた気力ある勇敢な女性であり、人のためにあろうと、物心ともに力を尽くす稀なる無垢な女性だ。しかしながら、一旦歌を歌うと妻の善良さは置き忘れられ、世の嘲笑を浴びる存在になることを本人は知らない。音楽を愛し、歌を愛する童女のような妻に、夫はドン・キホーテを見るやるせなさがこみあがる▼この陰影の部分がヒューさま、絶品なのです。本作はもちろんメリル・ストリープという心技体ズバぬけた女優による演技が見ものですが、それだけでは語りきれない。夫のヒューさまと、そしてこのふたりをあげたい。フローレンスにヴォイス・トレーニングをする専任のトレーナー、コズメです。扮したのはサイモン・ヘルバーグ。10歳からピアノを弾き名門ニューヨーク大学に学ぶ。ジャズ・ピアニストを目指したこともある本格派で、劇中の演奏は全て自分で弾いています。フローレンスの歌を聴いたコズメは夫にすがりつく。「マダムの声は普通じゃない。発声もデタラメ。医者も治せない」。ヒューさま、顔色も変えずこれまでなんども内輪のコンサートを開き、マダムは歌声を披露した、ただし「会場に入れるのは本当の音楽愛好家だけだ。そのため用心深く準備する」批判する奴は「お断りだ。絶対にダメだ」そして出席予定者に袖の下をつかませ「約束は守ってもらうぞ」ダメ押しする。夫の庇護がよかったのか悪かったのか、フローレンスは守られ、夫いうところの「本当の音楽家」だけに聴かせるコンサートを開いてきました▼ある日フローレンスが体調を崩した。診察した医師は彼女の体に残る特徴に気づき「感染はいつですか」と尋ねる。「18歳。新婚初夜に梅毒を先の夫から。左手に最初の症状が出て、水銀と砒素で治療を」医師は夫に「心臓の雑音が気になるが症状の進行は見られない。発症から50年、生き抜いておられる。今日2時間歌った? 充分な静養が必要です。性生活は?」控えめなものだったと夫は答える。彼はコズメに「僕らの結婚は現実を超えた、精神的な絆で結ばれている」でもシンクレアだって男だから、妻公認の女性がいる。それがキャスリーン。レベッカ・ファーガソンが、チョイ役ですが「日陰の身でも誇りが欲しい」という女性を演じています。「私は練習の虫で、毎日1時間は歌うわ」それにコズメは付き合うのです。しかし彼は真摯でひたむきで、心から音楽を愛するフローレンスに、深い共感と理解を覚えるようになります。夫がゴルフに出かけた日がありました。キャスリーンをなだめるため、まる一日を一緒に過ごすことにしたのです。初めて長時間夫と離れたフローレンスは寂しくて仕方ない。レッスンにコズメの下宿を訪ねます。病気で左手の神経を損傷し、フローレンスは右手でしかピアノを弾けません。貧しい部屋で、鍵盤に置いた右手だけで、ポロンポロンと弾いた。ショパンの前奏曲ホ短調です。聴いていたコズメが黙ってそばに立ち、左手の指だけで合わせる。メリル・ストリープはこのシーンが一番好きだと言っていました。

 

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