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特集「タイムレスな女優」

2017年8月21日

特集「タイムレスな女優2」③アン・バンクロフト1
奇跡の人(上)(1963年 事実に基づく映画)

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監督 アーサー・ペン

出演 アン・バンクロフト/パティ・デューク

シネマ365日 No.2214

名前があるのよ 

★19-22_タイムレスな女優2-1

サリバン先生はアン・バンクロフトで正解ね。舞台で大ヒットした本作の映画化に当たって、映画会社はもっと知名度のあるエリザベス・テイラーを充てようとしたが、監督のアーサー・ペンはアン・バンクロフトだと主張して譲らなかった。バンクロフトもヘレン・ケラーを演じたパティ・デュークも、アカデミー主演・女優賞をそろって受賞し監督の抜擢に応えました。見ごたえありますよ。サリバンがヘレンの家庭教師になって赴任したのは20歳のときだ。何度も目の手術を繰り返し、見えるようにはなったものの弱視だった。弟を施設で亡くし、天涯孤独の身だ。校長先生は最後まで「他人に屈服する能力が君には欠如しているからね」と彼女の頑固な性分を懸念した。小さなヘレンは言葉というものを知らない。目も見えず耳も聞こえない、しゃべることもできない少女をなんとかすることができるのか、母親の危惧にサリバンは「赤ん坊と一緒です。最初は何もわかっていない、でも聞いているうちに理解します」「いつ理解するでしょう」「100万の言葉の後かも」▼ヘレンとサリバンの格闘が始まる。自分の主張が通らないと野獣のように暴れるヘレンを、サリバンは力ずくでしつけようとする。「君に憐れみはないのか」と怒る父親に「現実を知らないほうがよほどあわれです。哀れみが何の役に立ちます。教えるより哀れむほうが簡単です」。部屋から全員追い出し、ヘレンを椅子に座らせる。スプーンを持たせる、スプーンで食べ物を口に運ぶ。部屋は台風が過ぎ去ったよう。皿を割る、椅子を倒す、つかみかかる、突き倒す。監督は「思い切りあばれろ」とパティに指示し、バンクロフトはブラウスとスカートの下にプロテクターをつけて臨んだ。ヘレンの悪いところは目や耳じゃない、「あなた方の愛と哀れみです。ペットのように扱っている。犬でさえ躾は必要です」両親はうなだれ「施設に入れることも考えました。見学に行きましたが酷い環境だった。ネズミだらけだ。先生が諦めたらもうなすすべがない」。サリバンは答える「私はその施設にいました。ある部屋はお年寄りでいっぱい。伝染病にかかっても移せず、向かいの部屋は病気にかかった娼婦。若い娘にしつこく仕事をすすめ、13〜14歳で望まぬ子を産んで施設を出るけれど赤ん坊は残され、多くは病気のせいで腫れ物ができ、大抵死にます。1年で70〜80人。弟と私は死体置き場で遊びました。おかげで強くなりましたが、ヘレンは今のままでも強いです」▼サリバンはこの家にいる限りヘレンはダメになるとわかっていた。「離れを貸してください。わざと遠回りして連れてきてください。ヘレンと二人きりになって、ヘレンが私だけを頼るようにしたいのです」。父親は二週間の期限をきった。食事時の荒っぽいしつけ方で、サリバンだとわかると気が狂ったように怖がるヘレンと二人きりになって、どうする? 案の定逃げ回るヘレンにサリバンはマナーを守らない限り食事を与えない強硬手段で対応する。「ちょっとやりすぎでは」という批判に「兵糧攻めは戦の常套手段です」「これは戦争じゃない」「同様です」一歩も下がらない。サリバンはしかし悩んでいた。手話を教えながら「言葉さえわかれば世界をあなたにあげられる」そして指文字を繰り返し覚えさせるのだった。ヘレンは頭のいい子だった。教えたことをすぐ覚えた。しかし最後の壁が、文字と物が一致しないのだ。すべてのものには名前があり、それはイコール存在であり、意味であり、世界を造る概念なのだ。認識のすべてが言葉と意味にある。「何としてでもわからせるわ」弱い目を見開いたサリバンの眼光は、今やワイルドなまでの鋭さを放つ。

 

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