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特集「タイムレスな女優」

2017年8月26日

特集「タイムレスな女優2」⑧カッチャ・リーマン1
帰ってきたヒトラー(2016年 ファンタジー映画)

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監督 デヴィッド・ヴェント

出演 カッチャ・リーマン/オリヴァー・マスッチ

シネマ365日 No.2219

待ち受けるものはなに? 

★23-27_タイムレスな女優2-2

1945年からタイムスリップして、2014年のベルリンに現れたヒトラー(オリバー・マスッチ)をめぐる大騒動。カッチャ・リーマンはヒトラーをコメディアンとして捉え、喜劇の新しい地平を開く芸人だとして大々的にテレビで売り出す、やり手のベリーニ局長を演じます。ヒトラーは、野原で意識を取り戻した当初こそ戸惑っていましたが、テレビやSNSの新しいメディアにたちまち順応し、大衆の支持を得る絶好のツールだと、積極的にアクションを起こします。ベリーニはヒトラーが本物とは気がついていませんが、ヒトラーの野望・野心を達成させる手伝いをするようなものですから、とんでもない女、ということになります。カッチャ・リーマンは53歳(2017)ですが、ヒトラーがベリーニのことを絶賛するシーンがあり、カッチャの肖像に当てはまりそうですので引用します。「ベリーニ女史はリーフェンシュタール(ドイツの映画監督)並みだ。引き締まった体で背筋を伸ばし、注意深く決断も早い。獲物を狙うオオカミのようだ。彼女は気が張り詰めると電子タバコを長めに吸い込む。常に自分を見失わない。女性の鑑だ」▼彼女はライバルのゼンゼンブリング副局長を退け、局長の地位に就いた。ゼンゼンブリングはベリーニの失脚を画策する。ヒトラーはドイツでは扱いの難しいネタですが、デヴィッド・ヴェント監督は事実を踏まえながらもうまく地雷を避け、ヒトラーのカリスマ性が、天才的な「つかみ」にあったという視点で捉えていきます。彼の俊敏な「つかみ」の能力に最も敏感に反応したのがベリーニです。テレビ業界で鍛え上げてきた彼女は「こいつは使える」と踏みます。まじめくさったニュース解説ではなく、ヒトラーに番組を担当させるべく、ドイツ全土を回る取材を任せる。同行するのが、うだつのあがらないディレクター、ファビアンです。彼のママは収容所経験がある。ヒトラーを一目見て、「極悪人のヒトラーだよ」とすっぱ抜きますが誰も本気にしません。ファビアンだけがビデオに残った映像の切れ端を追いかけ、ヒトラーの出現した場所が大戦中の総督本部地下壕だったことを突き止め、あいつは本物だ、またしてもとんでもないことをやるつもりだ、やめさせなければと、それを訴えに走るのですが、逆に精神病院に収容されてしまう▼ヒトラーのセリフを幾つか紹介します。チャップリンの「独裁者」を見ながら「素人が苦労したようだ。戦争には負けたらしいな。ソ連が他国とつるんでドイツを分割した。ドイツ連邦共和国は目下、陰気なオーラのデブ女(画面にメルケル首相が映っている)に託されている」「戦争後工業化が進んで被害を受けた。ポーランドがまだあるとは。しかもドイツの地に。戦争が無駄になった」。ヒトラーは全国を回り国民の生の声を聴き、情報を収集しながら、人心を掌握していきます。「ドイツの問題はなんだと思う?」と売店の主婦に問いかける。「外国人の流入よ。嬉しくはないわ。でも一人の力じゃ無理」「小さな存在であっても協力して、強く大きな人物を選べばいい」「そうね」そこで力強く「わたしに任せてくれ」▼スタバに来た。「共にドイツを救おう」と客の一人に声をかける。「どうやって?」「確固とした世界観で、変革と責任を取る者が必要なのだ」今度の芸人はすごいわ、とベルーニは驚嘆する。ヒトラーはYouTubeを支配し、「こうだ! グダグダ言うな」と断言できる強い指導者待望論が湧き上がった。しかしヒトラーが犬を撃ち殺した映像が載って、一斉に世論は敵に回り(ドイツ人は犬が大好きです)視聴率は低下、ベルーニは解雇、宿敵ゼンゼンブリングが返り咲く。ところが視聴率は落ちる一方、広告主はソッポを向き、局内でもヒトラー再登場の熱烈コールが沸き起こる。ヒトラーがファビアンにこういう。「わたしは大衆を扇動したわけではない。わたしが怪物なら、怪物を選んだ者を責めるのだな。彼らは優れた人物を選んで国の命運を託したのさ。なぜ人がわたしに従うか、考えたことがあるか。彼らの本質はわたしと同じだ。価値観も同じだ。わたしは人々の一部なのだ」…ヒトラーが民衆の、というよりわたしたちの一部であり、わたしたちはみな心の中にヒトラーを持っているのだという指摘です。ラストはベリーニの勝利宣言です。「彼はドイツのメディアを変えました。娯楽の可能性を高い水準に引き上げた先駆者です」。ヒトラーは軍服に身を固め、ベリーニとオープンカーで行進します。怖いですね、このシーン。待ち受けるのはなんなのでしょうか。不気味です。

 

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