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特集「タイムレスな女優」

2017年8月29日

特集「タイムレスな女優2」⑪ニコール・キッドマン1
ファング一家の奇想天外な秘密(2016年 日本未公開)

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監督 ジェイソン・ベイトマン

出演 ニコール・キッドマン/ジェイソン・ベイトマン/クリストファー・ウォーケン

シネマ365日 No.2222

父親の陰りのなかで 

★28-31_タイムレスな女優2-3

前衛芸術家であるという、奇妙な両親の元で姉のアニー(ニコール・キッドマン)は「子供A」という役を割り当てられていた。弟のバクスター(ジェイソン・ベイトマン)は「子供B」だ。前衛芸術とは何をするかというと、パパ(クリストファー・ウォーケン)がいうには「人をアッと驚かせるパフォーマンス」で「人々の目を覚まさせ、人生を鮮やかに見せる」のだ。具体的には大勢の前で銀行強盗を装って闖入したり、ボウガンで人を撃ったり、高校の演劇会では担当の先生を抱き込み、教師・保護者らがクレームをつけるに決まっている、ロミオとジュリエットのキスシーンを姉弟に強引にやらせた。世間があっけにとられることを思春期に無理やりやらされてきた姉弟は、神経に変調をきたし、いまだにトラウマを引きずっている▼姉は女優になるため家を出たものの、衝動制御障害のままで、取材に来た記者と寝る。マネージャーは「仕事がこないからって取り乱さないで」というが、本音を吐くと「返り咲きは無理」だと思っている。弟は小説家を志したが、一作目は当たったものの二作目から頓挫、業界紙の取材記事で糊口をしのぐ。要は物心ついたときから、変わり者の両親の「前衛芸術」によって、子供達の神経はよじれてしまったわけ。まがりなりにも自立した姉弟は、死ぬまで親に会いたくないと思っていた。ところが弟が事故で入院し、看護師は両親に連絡を取り、揃って見舞いにやってくることに。会いたくない、姉さん、なんとかして…危機を訴えた弟を、姉は病院から脱出させようと駆けつけるが親の方が早かった。久しぶりに顔を合わせた両親は、相変わらず前衛にのめり込んでいると知る。病院の帰途、両親は事故に遭い-警察がいうには奇妙なことに事故車は放置されたまま、中に誰も乗っておらず、血がシートに付着していた。同じ道路で連続殺人があり、手口がよく似ている…「お芝居です。いつものお騒がせよ」と姉弟は本気にしない▼両親は姿をくらましたままだ。姉は「ふたりを探しに行くのよ」と弟に持ちかける。弟は気乗り薄だ。「約束したでしょ。姉弟は何でも助け合うと」。幼い頃はそうやって、力を合わせ両親の奇矯な行為に耐えてきた。父親の唯一の知人を探し当てた。彼はなぜか「両親を探すな。関係がもつれるだけだ。今は自由の身だろ。失踪は親からの贈り物と思え」と諭すように告げるのだ。姉弟はヤードセールを開き、両親の品物を売りはらうことにした。その時聞き覚えのある歌が流れてきた。姉が子供のころ作った歌だ。「親を殺せ、親を殺せ」がCDになっている。製造をさかのぼって歌っている兄弟を探し当てた。問い詰めていたとき、買い物から帰ってきたのは父親と、高校の演劇部のコーチ、デラノ先生ではないか。彼女は「ロミオとジュリエット」のトラブルが原因でクビになったはず…▼「見つかると思ったよ」パパはしょんぼり。「ママは?」と姉が恐ろしい剣幕で訊く。「うちにはいない」「うち? ここがパパのうちなの?」「この人は俺の妻だ」「ずっと前から計画していたのね。わたしがメチャクチャにしてやるわ。ママのところに連れて行って!」。ママはひとりで暮らしていた。子供達と夫を迎え「アニーが生まれたとき約束した。家族で幸せになる方法があれば何でもすると」。そ、それがパパのお騒がせ芸術に協力することだったの、と娘は頭にくる。「何でこんなことをしたの?」「これが最後の仕事だ。お前達が俺の仕事に価値を感じないのはわかっていた。それである計画を立てた。デラノ先生と見せ掛けの夫婦になり…でもちょっとした行き違いってあるだろ?」「じゃ、パパはあの兄弟の父親なの!」「アートのためだ」。なんたる屁理屈。クリストファー・ウォーケンのパパのアタマは、もはや怪物の域に達しています。姉はついに「死んだことにされたいの? そうしてあげるわ!」前衛芸術に人生を捧げていた、カリスマ・パパは「アートのため」と称してママを打ち捨て、子供までこしらえていたただの浮気男だったのね。父親の呪縛から解放された姉弟はやっと自分の人生を取り戻した。弟は作家となり学生の前で自作を講演した。ひな壇の上の方に姉が聴講に来ている。「暗い穴から出て、姉と弟は新たな世界で幸せを見つける。ふたりは手をとりあって光の中へ消えていった…」姉は「グッド」とつぶやき涙を拭う▼本作の圧勝はクリストファー・ウォーケンよ。キッドマンも悪くはないけど、なんで彼女、このごろ憂鬱な役ばかり選ぶのでしょう。本作は自分でプロデュースをしていますが「悪くはない」程度では、キッドマンの本領発揮とは思えない、そういうファンのほうが多いはずだ。ボトックスだ、ヘチマだとくだらん話題を提供するのはよして、泣く子も黙る映画で、タイムレスな女優であることを実証してほしい。

 

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