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特集「タイムレスな女優」

2017年8月31日

特集「タイムレスな女優2」⑬ ニコール・キッドマン3
アラビアの女王 愛と宿命の日々(下)(2017年 事実に基づく映画)

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監督 ヴェルナー・ヘルツォーク

出演 ニコール・キッドマン/ロバート・パティンソン

シネマ365日 No.2224

紛争の地に国境を引く 

★28-31_タイムレスな女優2-3

ガートルードは、何十年もの間誰も入ったことのないドルーズ山地へ、アラビア砂漠の真ん中、未踏のハーイルへ、ファトゥーフと彼の部下を頼りに踏み込んでいく。部族間の複雑さが鮮やかに見えてくる。英国領事リチャードにガートルードは「あなたには砂漠の国と人間が理解できないわ。ベドウィンの自由は彼らの尊厳。詩情あふれる生き方よ」。リチャードは求婚しますが「二度と男性とは深い関係になりたくない」といって断ります。彼のことは好きでしたが、「深い関係」に付随してくる束縛がイヤだったのでしょうね。日記か手紙かにこう書いている。「リチャード、再び足を踏み入れた砂漠は、まさに私の場所。分厚いベールのような静寂と孤独が私を包む。文明社会で得られるよりも深い眠り。そして道なき砂漠が広がる。無限に」。こういう実感を得たら、チマチマした文明社会とか人間関係に、縛られたくなくなるのはわかる気がします▼ガートルードは誰も手が出せなかったイラクとヨルダンの国境を線引きする大仕事を平和裏にやり遂げます。有力な部族の首長がガートルードを信頼したこと、また彼女が虚飾なく彼らに接したことで、表面的な付き合いでは得られなかった理解と共感が、砂漠の民の心をつかんだのです。「リチャード、今の私ほど幸せな人間はこの世にいないわ。砂漠という洗礼を受け、砂漠だけが魂の救済。全てを導きひたすら前に進む」。ある部族の首長が「なぜ英国女性のあなたがそこまで我々に味方する」ガートルードは答える「私の信頼するホムス出身の従者がいます。彼に私は何度も命を救われました。彼の母親は息子に“ファトゥーフ、我が埋葬を託した息子よ”といい、それから天気や庭の話をする。その思いだけでも砂漠の民は私の心を打つのです」▼ガートルードとファトゥーフの友情もジンときます。ガートルードが砂漠の真ん中でオスマン帝国の砦の守備兵に尋問を受け、窮地に陥る。ファトゥーフは慌てず「通行許可証を持っています」ものものしい書類を見せる。隊長は一読し、敬礼して一行の通過を許可する。通り過ぎてから小声でガートルードが「いつ許可証を?」「なんでも作ってくれる代書屋がいます」とケロリ。素晴らしい従者ね。第一次大戦が勃発していた。「ファトゥーフ、あなただけが頼りよ」「世界の果てまでお供します」なんだかんだ言ったって、結局人と人は心の結びつきなのね。国と国でも、分解していけば人と人なのよ。聡明で誠実なファトゥーフの信頼を得たことが、ガートルードの幸運だった。ガートルードの意見を容れ、イラク領土は画定されました。ガートルードは民政移管後もバクダッドに残り、再び考古学に熱中します。小さな博物館を設け、出土品を展示しました。この博物館がのちにイラク国立博物館に発展します。1926年夏、バクダッドで致死量の睡眠薬の服用により死去。事故か自殺かは明らかにされていません。68歳でした▼ニコール・キッドマンがよかったですよ。グレース・ケリーよりこっちの方が似合っていたわね。ギャラの割に客の呼べない女優だとか一時いわれたってなんのその、悪口、そねみ、ねたみは有名になればなるほどついてまわるもの、いちいち相手にしておれるかい…その姿勢が決まっているわね(笑)。受賞する映画賞では助演女優賞が多くなりました。それもキッドマンのセルフコントロールのうまさよ。どこに置かれても光る女優って、同業者にとって、最もいやなやつじゃない? 最近の作品「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」では早速アカデミー助演女優賞にノミネートされるし。どうせなら「キッドマンが今年出るなら、わたしの映画、撮影は来年にして」なんて、同じ年の出演は敬遠されるような、そこまでイヤがられる大女優になってほしいわ。

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