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特集「意外な代表作」

2017年9月1日

特集「意外な代表作」① オードリー・ヘプバーン
マイヤーリング(2014年 事実に基づいた映画)

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監督 アナトール・リトヴァク

出演 オードリー・ヘプバーン/メル・ファーラー

シネマ365日 No.2225

よみがえるヘプバーン 

★01-05_意外な代表作

オードリー・ヘプバーンが「ローマの休日」から4年後、メル・ファーラーと結婚2年後、テレビ映画として制作され、1957年2月4日オン・エアされました。当時のテレビは完全生放送だったことから、ビデオ化も劇場公開もされず、絶対見ることのできないオードリーの映画として存在のみが伝説化されました。しかしキネスコープとして保存されたマスターが最新のデジタル技術で復元、2013年6月24日、ミュンヘンで開催したヘプバーン記念展で上映され、56年ぶりに「幻のヘプバーン」がよみがえりました。物語の舞台は1881年から1889年のオーストリア=ハンガリー帝国、実在のルドルフ皇太子と、男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件です▼ハンガリー帝国の黄昏ともいう時代です。実質上最後の皇帝となったフランツ・ヨーゼフ1世は厳格な保守主義、母親は美貌の皇后シシーことエリザベート。進歩的な母の影響を受け、ルドルフ(メル・ファーラー)は父王と意見が合わない。父が決めた相手と意に沿わぬ結婚をするが、派手な女性関係が絶えず、皇室相手の娼婦たちと浮名を流していた。オードリーはなかなか出てきません。物語も中盤に差し掛かり、ルドルフが友人と来た公園で、17歳のマリー(オードリー・ヘプバーン)と出会い、お互いに一目惚れ。歌劇場で再会し、一気に燃えあがる。ルドルフは離婚したいとローマ教皇に手紙を書くが許可されるはずもなく、逆に父陛下は逆上、女と手を切れと迫る。マイヤーリングとは狩猟場の別荘です。ルドルフはマリーを招き寄せ、ここでピストル自殺する。しかしマリーは確かに「どこまでも一緒に行きます」とは言っていたが、まさかここで死ぬとは思っていなかったようである。というのも、ルドルフというのがこの映画で見る限り、顰蹙モノなのだ。「8歳の時から軍服を着せられ、どこへ行くのも尾行された」皇太子に護衛がつくのは当たり前だろう。「女が私に近づくのはうぬぼれか欲か、うわべだけのくだらない恋愛さ」。見ようによってはそうかもしれないが、彼の女性に対する態度は品くだるのだ。娼館で酔っ払って娼婦に酒を浴びせ、つきたおし、鏡に向かって怒鳴り銃で撃つ、人さわがせな男なのよ。世間は第一次世界大戦を控え、不穏な空気に包まれているのに、この国王後継者は全然関心なさそう。少なくともそう描かれている▼アナトール・リトヴァク監督は精神病院の内情を描いた「蛇の穴」でアカデミー監督賞にノミネート、ヒトラー暗殺計画を背景にした、猟奇殺人「将軍たちの夜」あるいはイングリッド・バーグマンに二度目のオスカーをもたらした「追想」など、バリバリの社会派監督だ。彼がなんでルドルフをかくまで甘い男にしたのか解しかねる。まるで(つまりは結局、こういう男なのさ)と言わんばかり。そのルドルフとメル・ファーラーが気の毒ではあるがダブってしまうのだ。ファーラーは名門プリンストン大学出身、多才多芸な人で俳優、監督、プロデューサーをこなしたが、「オードリーの夫」がいちばん彼を有名にした。オードリーとは4度目の結婚、一子をもうけ離婚、理由は彼の派手な女性関係だった、というからルドルフとの共通点は大ありである。映画はさておき、ルドルフの心中相手は元から懇意な別の女性であり、心中を持ちかけたところ彼女が断ったので(当然であろう)マリーにしたという見方もある。マリーにしてみれば別荘に呼び出されいきなり拳銃で撃ち抜かれたのだから、無理心中も甚だしい。オードリーが結婚数年を経て、親友のエリザベス・テイラーとほとほと話し込むことがあった。二人はああ見えて気があった。打明け話は多分、お互いが巡り合った、稼ぎはないのに女遊びばかりする、甲斐性のない亭主についてであったに違いない。それはともかく57年後にしてよみがえったヘプバーンは美しい。この世にただ一度しか上映されなかったヘプバーンを、関係者が総力を挙げてよみがえらせようとした情熱がわかる気がする。

 

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