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特集「意外な代表作」

2017年9月4日

特集「意外な代表作」④ マリオン・コティヤール
正しい恋愛小説の作り方(2006年 日本未公開)

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監督 ジュリー・ロペス=クルヴァ

出演 マリオン・コティラール/ジュリー・ドバルデュー

シネマ365日 No.2228

煮え切らない恋愛 

★01-05_意外な代表作

映画が始まってしばらく、マリオン・コティヤールはコメディ体質ではないのかな、と思いました。ジャケ写を見て、珍しい、マリオンのコメディだわと思って買ったのですが、終始一貫、このヒロイン、楽しそうじゃないのです。姉アリアヌに扮したのがジュリー・ドパルデュー。父親が仏映画の重鎮ジェラール・ドパルデューです。妹のレナがマリオン。姉は写真小説家という、つまり写真に物語をつける仕事でして、いつもラブストーリーを考えている。小説の中ではレナはプリンセス、妹の恋愛体験(と言えるかどうか)は、姉の小説の中のみである。姉は本気で結婚を考えていない恋人ファリドをいつも待っている。妹は控えめでボストンに留学したのに、ホームシックでパリに帰ってきて、市立のオーケストラで5年、チェロを弾いているが、ソリストになる気もなく「今のままで充分」だといい、練習にいそしんでいる▼リハーサルにマルクというヴァイオリニストが加わった。ソリストだ。傲慢、エラソーな男で団員に嫌われる。レナに気があり、強引にアプローチするが、レナには教師の恋人フランソワがいる。でもマルクにも惹かれる。アリアヌは身辺の男女を小説のネタにするが、自分自身はいまいち、男にも仕事にも自信がない。年増で才能もないと叔母に嘆く。叔母にしたら姪二人に幸福になってほしいが、本人たちの恋愛関係が煮え切らないのだ。レナはレナで、恋人のフランソワが、子供がほしいというのに答えをはぐらかすし。そのうち姉は窓から出入りする工事のスペイン人パブロと仲よくなる。彼はファリドのように平気で女を連れ込むような男ではなく、誠実である。でもアリアヌはファリドを思い切れない。変だわね、この映画。面白いわけでもないが、全然つまらないというのでもない妙な味がある。レナはレナで男が「エージェントが東京公演を入れた。しばらく帰れない」。で「自分の心に従え、踏み出すのだ。一緒に行こう」とハッパかけまくるが、レナは空港まで行って静かに飛行機を見送る。姉は「もう疲れたわ。いますぐ一緒に暮らして」と恋人に迫る。でも相変わらず「無理だ」の一言。何が無理かというと誰かと一緒に暮らすのは、性に合わないらしいのである▼はたと思いついたのだが、監督がジュリー・ロペス=クルヴァです。わたし、この監督の「隠された日記 母たち、娘たち」が好きで、カトリーヌ・ドヌーヴが、子供の自分を捨て失踪した母が許せず、しかし失踪の真相はわからず、結婚し娘を得たものの、母親への感情を処理できないで苦しむ、そんなヒロインを好演していました。ポップな感覚の底にある恋愛の不定形、愛とはこうあるべきだと断言しない浮遊感は、クルヴァ監督の感性から来ているのです。彼女はハッピーな恋愛映画から最も遠くにいる監督です。劇中、レナは覚めたセリフを度々口にします。「彼の仕事の悩みには耐えられない。残業代が出ないので愚痴をいうの。そんなに気にすること?」すると思うのですけどね、普通は(笑)。「何が辛いの?」と姉に聞かれても「私にかまわないで!」。エディット・ピアフの迫力とは別人のような、引きこもり寸前のヒロインです▼物語は一挙に2年後に飛びます。姉はパブロとスペインに住み、赤ん坊がいる。レナはマルクを訪ねる。彼は結婚していた。念願だった彼のヴァイオリンとチェロを合奏する。レナはオーケストラをリストラになっていたのですが、男と別れ、練習に打ち込んで一緒に弾けるまでになったのでしょうね。姉は早速妹の人生の変化を小説にする。そこでは男がレナを訪ね、ドアを半開きにして「僕だ」という。「結婚したくせに」とレナ。「ウソついたのだ。怖くて」。姉の小説もハッピーエンドから遠いようです。厭世的な着地が、いかにもヨーロッパ体質でした。

 

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