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特集「意外な代表作」

2017年9月8日

特集「意外な代表作」⑧ ジェニファー・ローレンス
早熟のアイオワ(2014年 事実に基づく映画)

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監督 ロリ・ペティ

出演 ジェニファー・ローレンス/セルマ・ブレア/クロエ・グレース・モレッツ

シネマ365日 No.2232

深い瞳 

★06-10_意外な代表作

ジェニファー・ローレンスのデビュー作です。17歳にして骨太の堂々とした演技ですね。すえおそろしいとはこういう女優をいうのでしょう。ハリウッドは女優戦国時代になってきました。ジェニファー・ローレンス(26)「ウィンターズ・ボーン」「ハンガー・ゲーム」、アリシア・ヴィキャンデル(28)「リリーのすべて」「エクス・マキナ」、ブリー・ラーソン(27)「ドン・ジョン」「ルーム」、そこにクリステン・スチュワート(27)「アクトレス」「パーソナル・ショッパー」を加え、頂点に立つ20代女優たちのエネルギーが渦巻いています。彼女らの特色として、女優業だけに止まらず、監督やプロデュースに積極的に乗り出し、映画ビジネスを仕切ろうとする貪欲さがすごい。先輩たちが30代、40代で試みたチャレンジに早々と着手しています▼本作はジェニファー・ローレンスの強いキャラである、ホワイト・トラッシュの世界です。母親が「ポーカー・ハウス」と呼ばれる家で、娘3人を抱え、男たちを相手にクスリと売春で暮らしている。長女が14歳のアグネス(ジェニファー・ローレンス)だ。バスケの選手で地元紙に記事を書いたりして小遣いを稼ぎ、朝は寝起きの黒人相手に「妹が起きてくるから5分で出て行って」とニコリともせずかます。次女ビーは新聞配達。空き瓶を集め小銭に変える。末っ子のキャミーは友達の家に寝泊りさせてもらい、昼は近所のバーでジュースを飲み、チェリーを食べて粘る。母親サラ(セルマ・ブレア)は長女に「そろそろ決心したかい」と聞くのは売春で稼げということ。「タダ飯食っているんだからね、少しは家計に貢献して」そういうことを平気でいう。ジェニファー・ローレンスは、妹思いの戦う長女がそもそも女優キャリアのスタートでした。「ウィンターズ…」にしても「ハンガー・ゲーム」にしても、はまり役になるはずですね▼母親の男にレイプされ、風呂場で体を洗っているところに母親が入ってきて、酒とタバコを買いに行けという。娘が泣きながらレイプされたと告げると、妙チキリンな、子供のとき娘に読んで聞かせた絵本の話を始める。一冊しか絵本がなくて、いつも同じ話だから母親は嫌になって、勝手な作り話を聞かせたところ、1歳にもなっていない娘がしっかりした言葉で「本を読んで」といった。お前は恐ろしい子だよ、というわけね。これも作り話だと思うわ。だって聞きたくない娘のレイプの話をそらせちゃったのだもの。その日はバスケの地区予選の代表が決まる試合だった。アグネスは遅れて入り、監督にぼやかれながら残り7分で20点以上を得点し、見事地区代表に選ばれる。でもそれはアグネスの「現在」からの決別の日だった。帰途、いつものよう家に入れない妹二人を道で拾い、もう家には帰らないと告げ、ボロ車で家出する。途中で切れるラジオから流れてくるのが、ダイアナ・ロスの「エイント・ノーマウンテン・ハイ・イナフ」。高すぎる山なんてない、深すぎる谷なんてない、渡れない川なんてない…姉妹3人が歌う。幼い妹ふたりが、目いっぱい元気を出しているのが健気です。アグネスのモノローグを聞こう。「私は、朝は太陽と、夜は月と競争する。頭にあるのは今日、そして今夜のことだけ。何が起きても不思議じゃない」アグネスは芸術家を目指しニューヨークへ引っ越した。その20年後、彼女は本作の脚本と監督をつとめた。つまり、ロリ・ペティ監督の自伝です▼ヒン曲がってしまっても仕方のない、劣悪な環境で、したたかに生きていく姉妹たち。生きるのは戦いだ、私ら、どこで野垂れ死しても殺されても不思議じゃないのだ、14歳にしてこう腹をくくらねばならなかった彼女らに、激励だの癒しだの、勇気を持てだの、頑張れだのという言葉は空々しい。キッと唇を結び、たじろぐことなど自分には許されないのだと決意した、アグネスの瞳だけが深い強い力を放っている。

 

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