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特集「祝カンヌ国際映画祭女優賞/ダイアン・クルーガー8日間」

2017年9月12日

特集「祝カンヌ国際映画祭女優賞/ダイアン・クルーガー8日間」②
ハンティング・パーティ(2008年 事実に基づく映画)

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監督 リチャード・シェパード

出演 リチャード・ギア/テレンス・ハワード/ダイアン・クルーガー

シネマ365日 No.2236

ダイアンのひたい 

★11-14_ダイアンクルーガー1

ボスニア紛争終結から5年後のサラエボ。戦場カメラマンだったダック(テレンス・ハワード)は5年ぶりに取材に訪れた。ダックの元相棒サイモン(リチャード・ギア)は、生放送の最中、上司に暴言を吐き解雇、報道記者ナンバーワンを誇っていた彼も、落ちぶれて姿を消したまま今は行方不明。その彼がダックのホテルに現れた。聞けば、戦争の重要犯罪人フォックスの潜伏先を特定した、インタビューするから、お前が撮影しろというのだ。オープニングに「この物語はまさかと思う部分が真実である」という字幕が出る。そのまさかとは何だ。誰でもそう思うだろう。エンドロールで「ここは真実」「ここは作りごと」とネタバレがあるけど、作りごとの方が断然多い。それに主人公たちの行動がひとつも説得力がない。命のギリギリで仕事する戦場の高揚感が忘れられない、とダックはいうが、サイモンが第一線から脱落したおかげで出世し、5年間セレブどっぷりの生活でコロコロ太ってよくいうよ▼ベン(ジェシー・アイゼンバーグ)が副局長の父親を見返すために、ダックとサイモンの地獄の取材に同行する。二言目には「これでもハーバード出身」を口にする嫌なやつで、ベンの機転でピンチを逃れるシーンはあるものの、彼のおかげでこの映画はコメディかシリアスかがぼやけた。フォックスより先にこいつをスクリーンから消すべきだった。サイモンは恋人がテロに殺され、それも臨月のお腹に銃弾5発を撃ち込まれるという残酷な殺され方だった。彼はそのショックで気持ちが荒れたまま、生放送に臨み、放映中にブチ切れたとダックがベンに教えた。戦争の残酷さを訴えているのだが、ギアが悲壮感を漂わせると、戦争の告発より映画は一挙にラブロマンス色に変わる。おまけにフォックスのボディガードであるサージャンは、ひたいに「生とともに死を授かった男」とキリル文字でタトゥーを入れている。拷問、暴行、殺人、なんでもやる極悪非道な用心棒だというが、「生とともに死を授かった」なんて、人間みんなそうじゃないの。当たり前のことをデカデカおデコに刺青するなんて、あなた、おかしいわよ。あろうことか、彼がサイモンたちに銃を突きつけ、皆殺し、というときに場違いな着信音が鳴る。サイコ男はフムフムと仕事そっちのけでケータイに出るのだ。本物のサイコ男だわ▼この映画で最も雄弁だったのは、サラエボの五輪会場となったスタジアムだ。そこは暗殺者の射撃練習場になっていた。街路にも住居にも壁に銃弾の跡が生々しく、大きな傷口のように戦争の惨禍と虐殺を物語っている。そんな実景に比べたら、劇中登場人物たちがトロトロしゃべるセリフの薄っぺらなこと。フォックスは国連やCIAが総力あげても捕まらなかった。もちろんそれには国際的な裏取引があって、エンドロールで明らかになるが、フォックスはCIAに実は保護されていたのだ。そういう複雑な関係をすっ飛ばして、サイモンが潜伏先を特定した? やっとここでダイアン・クルーガーが登場する。出演はものの10分ほどだ。反フォックスのセルビア人情報屋、マルヤナである。教え子たちがフォックス一派に拉致され二度と戻ってこなかった、と言っているから、彼女は教師で、中学生か高校生を教えていたのだろう。脈絡はないが、沖縄の戦果で散った、教え子の女学生たちを悼んでいた先生を思い出した。ダイアンは髪をひっつめ、広い額がいやましに広く見える。ハリウッドのおデコの面積三大女優は、ダイアンとルーニー・マーラ、エレン・ペイジだと思う。並べたことはないがあの三人が髪を上げた額には「遥かなる悠久」とも呼びたい広さがある。ダイアン、このとき32歳、すでに「戦場のアリア」「敬愛なるベートーヴェン」「マンデラの名もなき看守」などで女優としての基盤は築きつつあったが、本作だけはほとんど無視されている。興収97万ドル、出演時間10分足らずでは無理ない。覚えているのはダイアンのおでこのハレーションくらいだ。

 

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