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特集「祝カンヌ国際映画祭女優賞/ダイアン・クルーガー8日間」

2017年9月15日

特集「祝カンヌ国際映画祭女優賞/ダイアン・クルーガー8日間」⑤
7デイズ(2010年 日本未公開)

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監督 バルタザール・コルマルクル

出演 ダーモット・マローニー/ダイアン・クルーガー/ロザンナ・アークエット/サム・シェパード

シネマ365日 No.2239

剥き出しの孤独 

★15-18_ダイアンクルーガー2

つらい選択ですね。法の番人であり、正義を守る立場にある父親は法を貫いたわけだが、娘の命が助かるか否かを目の前にして、母親は叫ぶように言う、「もう引き返せない。あの子を棺に入れて帰る気はない。二度と来ない街なのよ」だから目をつぶって、というのです。父親ポールにダーモット・マローニー、母親ダイアンにダイアン・クルーガー。娘の主治医ルービンにロザンナ・アークエット、臓器移植を受けた政治家ハリソンにサム・シェパードという豪華な配役です。舞台はメキシコの犯罪都市ファレス。死と隣り合わせの殺人の街だ。犯罪や麻薬、交通事故で毎日人が死んでいく。孤児や貧民層はドナーカードに記入したりしない。だから彼らが死んでも、臓器は法に基づいて利用されない。闇から闇の取引で売買されるのだ▼娘のクロエは重い肺の病で移植しか助かる方法がない。ポールとダイアンはドナーが現れるのを心待ちしている。そんなとき、主治医のルービンから移植手術を受けた政治家がいることを聞く。クロエの容態が悪化し、1週間以内に移植が必要となった。ポールは政治家ハリソンに会い、半ば脅し同様の手段で、執刀者が「ノヴァロ」という医師だったということをかろうじて聞き出した。ポールは妻と娘を連れファレスに入る。病院を訪ね回るが、ノヴァロの名を出すとみな口を閉ざし、ポールはボコボコに殴られてしまう。病院でボランティア活動している、マルチネス医師に出会う。彼はストリート・チルドレンを治療し、健康診断をしている。しかしそれには裏があった。臓器を提供できるドナー・リスト作成のための健康診断であり、緊急の需要を賄うためには殺人もやってのける組織があるというのだ▼マルチネスから電話が入った。「ドナーが出ました。1時間以内に手術します」。ポール親子は病院に急行する。しかし、彼がその途上見たのは、バイクにはねられた少年を、待ち受けていたように現れた救急車だ。少年は病院に搬送され、彼の臓器が移植されることをポールは知った。ポールは妻に「あれは殺人だ。ドナーではない、殺されたのだ、目の前でひき逃げがあり、彼の臓器が使われるのだ」。マルチネスはいう。「非難するのか。どうしろというのだ。君たちは米国で何ヶ月待った。1週間で偶然、都合よくドナーが現れるとでも思っているのか。どんなことも承知でこの国に来たのだろう。この街で子供は長く生きられない。いずれ死ぬ子だ。生きていても意味はない。だが肺を提供すれば娘さんは助かる」さらに付け加えた。「君が正義にこだわるなら、まだ君の言う、正しいことを選ぶ余地はある。手術代を出せばあの子の肺はそのままにして助ける。だが娘さんは死ぬ」妻は張り裂けるような目で夫を見る▼ラストは、娘の葬儀を出しているポールとダイアンだ。ダイアンの顔はくしゃくしゃ、泣きすぎた目は腫れて潰れそうだ。悲しみより、憤怒がみなぎっている。多分離婚に至るだろう。妻は夫の判断が正しかったと、頭では理解するが、母親の情としては許さないだろう。たったひとりの娘を見殺しにしたのだ。二度と行くことのない、無法の犯罪都市で行われた「不正」に、法の「正義」を適用することが、どれほどの意味があったのか。映画はここで終わりである▼ダイアン・クルーガーが難病の子を抱えた母親のストレスと疲労を好演しています。この子を助けるためなら、もうなんだっていい、殺人だろうが強盗だろうが、どんなこともやってやる…追い詰められた母親の剥き出しの孤独。正義だ、法だと、あなた、なにいっているのよ…たぶん、そう言いたかったと思うのです。どっちかいうと軽い恋愛映画に重宝して使われやすかったダイアン・クルーガーの、代表作に数えていいと思われます。そうそう、この人にも一言。ロザンナ・アークエット。芸能一家アークエット家の長女。「デブラ・ウィンガーを探して」で監督デビュー。不明にして「グラン・ブルー」以後、主演作は見ていませんが、スクリーンに現れると、どことなく気になる雰囲気をつくる女優です。妹のパトリシアは「6才のボクが、大人になるまで」でアカデミー助演女優賞をとっています。

 

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