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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年9月19日

特集「B級映画に愛を込めて7」①
ドント・ブリーズ(2016年 ホラー映画)

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監督 フェデ・アルバレス

出演 ジェーン・レヴィ/スティーヴン・ラング

シネマ365日 No.2243

密度の高い佳品 

★19-22_B級映画に愛をこめて7-1

元軍人の盲目の老人、定職を持たず盗みで稼いでいる若い3人の男女、ロッキー(ジェーン・レヴィ)、ロッキーの恋人のマネー、ロッキーが好きなアレックスが交通事故の示談金30万ドルを持っていると噂される老人(スティーヴン・ラング)の家に押し入る計画を立てた。目が不自由だし、近隣の家は空き家だった。オープニングそうそう、目的の家が映る。孤立し真昼だというのに静まり返って物音ひとつしない。人が住んでいる気配がない。でもここに盲目となった元軍人が一人で住んでいるのだ。とてもセンスのいい出だしだ。あらかじめストーリーは知っていたとしても、映像の力が粉砕していく▼スティーヴン・ラングが圧倒的にいい。目は見えないが、自分の家の中では全知全能だ。彼の聴覚は針一本落ちる音も聞き逃さない。老人は上半身ランニング一枚にチノパン、不審な空気を感じ取り、「誰かいるのか」と、手探りしながら壁つたいに歩いてくる。スティーヴン・ラングの筋骨隆々の肉体が見事。何か重大なことをしでかすにちがいないという緊迫オーラが全身に立ち込めている。彼を侮って拳銃で脅していたマネーを、至近距離まで近づいた老人は、信じられない敏捷な身ごなしで腕を押さえ、マネーを射殺する。目の前で目撃したロッキーはかろうじて自分の口を押さえ、悲鳴を押し殺す。老人は仲間がいることを察知、家中のドアに鍵をかけ、窓を打ち付け、侵入者を逆に閉じ込めてしまう。ロッキーとアレックスは音を立てないよう移動するが、老人の耳をごまかせない。出口を求めて地下に降りた二人は幽閉されている若い女にたまげる▼彼女シンディは老人の娘を車の事故で死なせてしまった。妻も失い、娘が生きがいだった老人は悲嘆のドン底、シンディを誘拐し、彼女に子供を産ませようとして妊娠させ(レイプではなく受精で)、子供を産んだら家に帰してやるというのだ。狂気の沙汰である。恐ろしい。シンディは口にテープを貼られ、天井から長いロープで両手首を繋がれ、わずかに床を移動できるだけ。ロッキーは娘を助け、3人で逃げようとした途端、老人がヌッ。銃をぶっ放しシンディが撃たれる。老人は嘆き「お腹に子供がいた。お前たちさえ来なければ二人は無事だった」あとは復讐あるのみ。密室劇です。派手なアクションはありませんが、テンションの高さは充分。自然光によるほの暗さがリアルで、ホラー映画独特の大仰な飾り立てがありません。一人消え、二人消え、シンディはともかく示談金狙いの泥棒三人と誘拐監禁のサイコ親父の勝負です。どっちも脛に傷のある身ですが、どう考えても元軍人の戦闘能力にはかなわない。武器の扱い、音だけ聞いて狙っても正確、家の中を蛇のように音もなくしかも速く、スルスルと移動しあっという間に背後に回りこむ。ホントに見えへんのか!▼老人はロッキーを宙吊りにし、シンディの代わりに償ってもらおうと白濁した精子を持ってくるではないか。キャーッ、お願いだから家に帰らせて、だれにもいわない…ンなこと、通用するはずないだろ。ロッキーも頑張る。彼女の泥棒根性は死なず。殴られても蹴られても気絶しても100万ドル入れたバッグだけは離さない。というのも、彼女は身障者の妹と二人姉妹。母親は生活能力がなく、男を連れ込み子供の世話などしない、どこか行きたいところはあるかと妹に聞くと、「海へ行きたい」と不自由な体でいうではないか。ここはデトロイトだ。カリフォルニアに行こう。ロッキーは「お姉ちゃんと一緒に家を出よう」と約束した。だから死んでもこの金を奪われるわけにはいかない(奪ったのはロッキーだが)▼最後の死闘がなされ老人は地下室に突き落とされ気絶。その隙に逃げ出したロッキーは、妹を連れ駅に来た。カフェにいるとテレビのニュースが老人宅に押し入った泥棒二人組みが殺され、老人は重傷を負ったものの命に別条はなく、病院で回復を待っている、「被害はないそうです」。彼は金のことは諦める、バラしはしない、そのかわりお前はシンディのこともいうなと、暗黙の取り決めを持ちかけたわけね。あたりに目を配りながら妹とホームに向かうロッキー。ラストシーンの含みが暗雲を予想させています。佳品。

 

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