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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年9月23日

特集「B級映画に愛を込めて7」⑤
ビッグ・ドライバー(2014年 日本未公開)

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監督 ミカエル・サロモン

出演 マリア・ベロ/オリヴィア・デュカキス

シネマ365日 No.2247

レイプ魔に死を

★23-26_B級映画に愛をこめて7-2

原作者スティーブン・キングの他の作品と同じく、怪奇幻想が底辺にあります。本作は「キャリー」や「シャイニング」に比べるとかなりおとなしく、ヒロインのミステリー作家テス(マリア・ベロ)が、唐突にカーナビに話しかけ、受け答えを続けるとか、友人らしき女性、ドリーン(オリヴィア・デュカキス)がいつの間にか後部座席に座っていて、テスに助言を与えるとか、テスが意識下で行っている自問自答を映像にしています。それによるとテスは、早くから危険を予知していたわけです。カーナビは「この道は危険だ、早く引き返せ」とかテスに教えるわけですからね。そもそもテスを講演会によんだ読書会の理事長というのが、胡散臭い女性で、帰路のコースを自分でカーナビにインプット、ここを通れば近道だから早く着くと教えたわけです▼近道どころか、人里離れた森の小道に迷い込み、五寸釘を打ち付けた板を踏んでタイヤはパンク、困りきっているところに通りかかったトラックの運ちゃんが、タイヤを交換してくれた。で上目遣いでチロチロ見る目つきがおかしい。テスは気色が悪くなり、会話もはずまず、何気にトラックの荷台を見ると、釘を打った板が積んである。パンクはこいつの仕業か。そう思ったときは遅かった、ぶん殴られて失神、気がつくと暗い汚い納屋みたいな場所に閉じ込められ、レイプ。犯人はテスが死んだと思い、排水溝に投げ込む。意識を取り戻したテスは、周りに女性の死体が三体。白骨になっているのもある。ここはレイプ魔に陵辱された女性の墓場なのだ。テスはふらつきながら脱出する。やっとコンビニを見つけ電話を借りる。バッグに入れたカードも免許証も盗られた。電話していると彼女を見かけた女性たちが「おばあちゃん探偵の作家よ。恋人に殴られたのね」ヒソヒソ声を交わす。確かにひどい格好だ。テスは警察に届けず復讐を決意する。レイプは自分が恥ずべき行為ではないが、のしかかる現実は重い。ましてテスは人気ミステリー作家だ。売名行為だととられるに決まっている▼テスは帰り道を教えた女性ラモーナの家に行く。彼女には息子が二人いて、長男に性的な病気の兆候が現れると、まず車をパンクさせ、タイヤを交換してやると言って近づき、女性をレイプしては排水溝に棄てていたのだ。とんでもない殺人一家だった。テスの復讐が始まる。テスの幻想の分身ドリーンは「絶対に捕まってはダメ。刑務所に入ったら復讐は果たせない上、精神が蝕まれる。すぐに取り掛かりさっさと始末する」と助言する。ラモーナに拳銃を突きつけるとこういうのだ。「あんたはクズ作家で話はくだらない。筋書きは平凡だし失笑ものだ。予定していた作家がキャンセルしたからあんたを呼んだだけ」「息子の異常がわかったときに去勢すべきだった」。テスから拳銃を奪ったラモーナが撃つが空砲。「常識よ。弾倉の一発目はカラにしておくのよ。誤射を避けるために」でも今度はカラじゃない。テスはためらわず射殺▼こう書いていてもどこか自分でも平々としているわ。レイプの復讐ものの傑作としては「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」や「リップスティック」がありました。前者では、高々と斧を手にしたヒロイン、カミール・キートンが、モーターボートで湖上を疾駆した姿は鬼気迫る美しい死神だった。後者はどうか。マーゴ・ヘミングウェイの、問答無用のライフルの激射はまさに大魔神。痛々しく陵辱された女の憎しみが激発し、映画をカルトのレベルにまで引き上げていた。復讐をナビするトム(テスがカーナビにつけた名前)や、ドリーンの示唆することがいちいちもっともで順序だっていて、復讐とは狂気の所産であり、訳のわかった人がやるものじゃないという、基本がずれてしまったのね。

 

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