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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年9月24日

特集「B級映画に愛を込めて7」⑥
デイズ・オブ・サンダー(1990年 青春映画)

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監督 トニー・スコット

出演 トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/ロバート・デュバル

シネマ365日 No.2248

何もできない人間になることが怖い

★23-26_B級映画に愛をこめて7-2

典型的な「トム・クルーズ仕様」です。トムの映画がワン・パターンというそしりはあるかもしれないけど、製作費6000万ドルの映画が1億5700万ドルの興収をあげたら立派なものね。大衆の歓喜する要素を捉えたトムの映画のエレメントは何か。アメリカの映画批評家ロジャー・イーバートが要約しています。「トム・クルーズが演じる若者の性格は作中最高の実力を持つ可能性のある、素朴で自然な才能のある“子供”」「指導者となる壮年男性は若者が来るはるか以前からその世界で仕事し、若者の才能を見抜く」劇中のハリー(ロバート・デュバル)です。「特別な女性の存在。指導者が若者を身体面で指導するなら、彼女は精神面で支えていく」。「専門技能の習得」「若者の実力が試される舞台の設定」「悪役。若者を挑発し鍛錬に向かわせる原動力となる」。まだいくつかありますが、これらいくつかのエレメントを巧みに組み合わせたトムの映画は、彼がセルフ・プロデュースの達人であることを再確認させます▼本作公開の年にトムと、ニコール・キッドマンは結婚していますから、ふたりがアツアツだったときです。キッドマンが演じるのは、大怪我を負い、ライバルを失い、コースに復帰できるかどうかわからない、若手ドライバー、コールを担当する脳神経外科医クレアです。キッドマンは23歳でした。その歳に似合わぬ落ち着きと貫禄さえ感じさせます。とにかく何でもやる女優さんでして、トム・クルーズの妻という「お飾り」なんてとんでもない。「冷たい月を抱く女」「バットマン・フォー・エヴァー」「誘う女」「ムーラン・ルージュ」。驚くような芸域を示し、成長の勢いが止まらない、そんな印象が当時のキッドマンにはありました。トムだって大車輪でした。本作の6年後、トムのライフワークとなった「ミッション・インポッシブル」に着手しますが、それまでにまあ、ヴァンパイアや弁護士やら、法廷サスペンスやら、トムにしてもキッドマンにしても、人間、勢いがあるということは、仕事の鬼になっているということがよくわかります▼本作の主人公はNASCARドライバーです。ナスカー(全米自動車競技協会)はアメリカ最大のモータースポーツ統括団体。ハリーが走行中のコールが指示を守らない、といって叱りつけるシーンがあります。コールは「言葉がわからない」と白状します。ハリーの指示する単語の意味がわからない。専門用語の類がセリフでおびただしく使用され、やり取りの中でコールも観客も「教育」されていく一体感、これも「トム仕様」の一つです。コールは次第に頭角を現し、ついに念願だったインディアナポリス500に出場する。しかし、大怪我のトラウマが完全に除かれていないと心配するクレア医師。ハリーも「どうなっても知らん」と引導を渡します。コールはでも「人生まず全力を尽くすことだ。このレースに賭ける。オレは事故で死ぬよりも、何もできない人間になることが怖い」。こういうセリフがシビレさせるのですね〜▼コールは9位で残り8周。白旗が振られ最終ライン、あと1周。形をなさぬまでに変形したボコボコの車でコールはトップを抜き去りゴール。優勝です。ここがちょっとね「トムの勝利ありき」がアリアリすぎてあっけなく優勝しちゃうのです、少なくともそう見えた。だからスンナリすぎて物足りないというファンは多かったと思えるのですが、そんなもの(細かいこと、ごちゃごちゃいうな!)で一喝されそうな青春映画なのです。しかし青春する映画はほぼこれで締めくくり。本作以後、トムは本格的に映画ビジネスに取り組み、アクションのみならず、社会派・恋愛・ヒューマン・サスペンスにジャンルを広げ、もちろんアクションは追随を許さぬ切れ味に磨き上げる。トムといえば生身で取り組むアクションばかりが有名ですけど、彼は決して大根役者ではない。「レインマン」や「7月4日に生まれて」演技力は証明ズミです。その後の成功があまり大きいから嫉妬を買っているのね。お決まりごとすぎる、に目をつぶれば、後味のいい映画です。

 

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