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特集「ベストコレクション」

2017年10月8日

特集「白秋のベストコレクション」⑧
レジェンド/狂気の美学(2016年 事実に基づく映画)

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監督 ブライアン・ヘルゲランド

出演 トム・ハーディ(二役)/エミリー・ブラウニング/デヴィッド・シューリス

シネマ365日 No.2262

神が押しつけた運命 

05-09_白秋のベスコレ2

トム・ハーディは「背を向けた男」が似合いますね。組織か、社会か、体制か。彼の映画でいちばん名が売れたのは、アカデミー助演男優賞候補になった「レヴェナント:蘇りし者」でしょうし、興行的に大ヒットした「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でしょうけど、前者はトムの気質にあっていなかったように思うし、後者はシャーリーズ・セロンが目立ってトムが食われていた。地味な映画だった「チャイルド44 森に消えた子供たち」がよかった。スターリン体制下の連続殺人事件という暗い背景で、黙々と責務を果たす男。女房ノオミ・ラパスは最初ヨコを向いているが、トムは我慢強い。事件を解決した後は愛し合える夫婦になり、両親を殺された幼い姉妹を幼女にする。トムが例のボソボソした口調でいうシーンがとてもよかった。「僕と妻が君たちのパパとママになるよ。妻は学校の先生だから勉強も教えてくれる。食事も一緒にして、お風呂にも入る。心配はあるだろうけど、考えてみてくれないか」▼本作でレジー(トム・ハーディ)は部下の妹フランシス(エミリー・ブラウニング)を飴玉で口説きます。彼女の舐めている飴玉を横取りして口に入れ、カリカリ噛んで飲み込む。ちょっとエロチックでしょ。あのいかつい容貌・がっしりした体躯に似合わず、トムって子供と女性がすぐ感じ取れる、先天的な甘さを身につけているのよ。時代は1960年代のロンドン。第二次大戦後、価値観のひっくり返ったロンドンは犯罪都市だった。人々はクレイ兄弟を恐れた。酒場は兄弟の噂話で持ちきり、レジーとロンは双子の兄弟だ。絆は血のつながりより深く、双子という運命を背負い、街を支配するギャングの帝王だった。「ギャングは楽しい?」とフランシスが訊く。「ギャングじゃない、クラブのオーナーだ」とレジーはいうが「堅気になる」はずの結婚の約束は2週間も持たなかった▼ロンはゲイだ。精神病院から退院した。安定剤を服用しないと発作的に暴力に走る激情型だ。ライバルたちを退け、ロンドンはレジーのものになったが、フランシスはつらかった。彼女の母親は最後まで結婚に反対した。レジーは深夜まで仕事から離れず、フランシスは孤独だった。ロンの家に姑と同居したが失敗だった。「紅茶も満足にいれられない」「レジーが可哀想だよ」「服装がインコみたいだ。クズ拾いの男だって無視する。俺だったらドブへ棄てる」義弟と姑はそんなことを聞こえよがしに喋る。レジーはフランシスの誕生祝いにトライアンフ・スピットファイアを買ってくれたが、運転を教える時間は取れなかった。家にいつもひとり。フランシスもクスリに頼るようになる。レジーが刑務所に収監中、ロンの凶暴な振る舞いでクラブの常連だったセレブたちは見限り、閑古鳥が鳴くようになった。出所したレジーは手に負えないロンを「消せないか」ともちかけられても「俺の片割れだぞ」と耳を貸さない。「あなたがロンの尻拭いをする義理はない」というフランシスに「兄弟に忠誠心は俺の誇りだ」とレジー。「私への忠誠心はないの?」フランシスは「家族」からはじき出される▼レジーの愛も覚めた。雨にビショ濡れのオープンカーに、屋根の広げ方がフランシスはわからない。「何をしている、何もできない女がよく今まで生きてこられたな」。妻は家を出る。迎えに来たレジーに「あなたはギャングを選んだのよ」「償いをさせてくれ」。妻は「イサビ島に行きたい」という。彼女のモノローグ。「人は運命を選べない。神は運命を押し付ける。私たちに許されるのは生きるか死ぬかの選択だけ」。レジーは店での乱闘で人を殺し、何度目かの刑務所へ。フランシスは自殺した。33年間刑務所で過ごしたレジーが、最後まで手放さなかったのは航空券のチケット2枚だった。魂となったフランシスがつぶやく「やっとレジーと二人でイビサ島に行ける」。レジーはガンに侵され情状酌量により釈放、8週間後2000年10月1日に死んだ。66歳だった。ロンは1995年3月17日、精神病院で心臓発作により死んでいた。エミリー・ブラウニングが、レジーという男に愛されながらも、接点を得られなかったフランシスを哀れな女でなく、神が押し付けた非情な運命を、生きるか死ぬかの選択で自分を主張した、そんな女性を好演した。

 

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