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特集「最高のビッチ」

2017年10月17日

特集「最高のビッチ4」⑧ イザベル・ユペール②
ガブリエル(下)(2005年 恋愛映画)

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監督 パトリス・シェロー

出演 イザベル・ユペール/パスカル・グレゴリー

シネマ365日 No.2271

やっぱりジャンにするわ

★14-17_最高のビッチ4-2

ジャンはとりあえずこの地獄のような事件から脱却しなければならない。ガブリエルの言い分は続きます。「あなたがわたしを選んだとき、何も起こらないと思ったわ」「わたしもそう思った」「そしてあなたはわたしをひとりにした。わたしがひとりだと気がつくのに時間がかかった。あなたを知ったとき、なぜわたしはあなたと同じにならなかったのかしら。あなたはなぜわたしを殺さなかったの? あなたとの生活を後悔していない。あなたがいたから彼がわかった。彼を選んだのはあなたではなかったからよ。わたしは血のように彼の中で流れたかった」「あなたの血管が好きなのだ」ジャン、何いっているの、こんなときに。血管と結婚したのと違うでしょう。案の定ガブリエルは「あなたは絶対にわたしに目を向けなかった。彼の体は重くて厚みがある。人生で一回だけ愛とは何かを知る権利があると思った」「なぜわたしをこれだけ長く拒否した?」「あなたの精液がわたしの中に入るのが耐えられないからよ」▼ふうん。で、ガブリエルが帰ってきた理由ですけどね。「あなたはわたしを愛したことがないわ。どんな女でも妻でもいいから必要だった。あなたがわたしを愛していると一瞬でも思っていたら帰ってこなかったわ。何も気にしていないから、また戻ってこられたのよ。まるで何も起こらなかったかのように」「彼に喜びを感じたのか。わたしといるよりも」「もちろんよ」「わたしとでは何も感じないのか」「わたしたちにとって、それは重要ではなかったでしょ。初めの5か月だけ、すべてがわたしのものだった」…どう? 帰ってきた理由がわかった? わたし、わからないわ(笑)。この夫婦、回りくどいことばかり言っているのだもの。ガブリエルだって子供じゃない、愛はいつか冷め(多分その予兆はすでにあるのだろう、7か月もあれば充分だわ)日常に侵食された後悔と不満の日々が愛にとって変わる。ジャンが訊く。「わたしを助けてくれ。わたしを置き去りにして君は戻ってきた。わたしを愛しているだろう、少しだけ」「昔はそうだった。でも終わったわ。あなたを恨まないわ」▼恨まない、それジャンのセリフじゃないの? ガブリエルはベッドに横たわり前を開け、「来て。わたしのところに来るなら今よ」ジャンは被さっただけ。まだるっこい男ね。そしてまだこんなことを訊くのよ。「愛はないのか? これからも絶対? これに耐えられるか」ガブリエル、平然と「ええ」「わたしにはできない!」叫ぶようにいい、部屋から走り出る。テロップが「彼は再び戻らなかった」。出て行ったのはご主人なのね。これじゃガブリエルのひとり勝ちじゃない。青白い女は、3時間半、家をあけただけで嫌なこと、ひとまとめに全部片付けちゃったのね。やるわね(笑)。イザベル・ユペールのこと、フランスのメリル・ストリープと、わたし、呼んでいます。彼女も「なりきり」ではなく「成りかわり」女優です。人間も人格も、まるごとその人物に成り代わる女優です。彼女は長いあいだ、クロード・シャブロルのミューズでした。シャブロルの元で「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」「主婦マリーがしたこと」「甘い罠」「ボヴァリー夫人」などを撮っています。特に「主婦マリー」は、平凡な主婦に生きがいも潤いも、ささやかな贅沢も輝きも許さなかった時代、女たちだけが泣いた、胸が詰まるような悲劇をシャブロルが静かに告発した傑作でした。イザベルでなければ演じられなかった代表作だと思います。本作はイザベルが、秩序と家庭の平和を愛する、貧血症みたいな青白い妻が、実は体の中では血が煮えくり返っている、激しい女を演じます。イザベルが戻ってきた理由は簡単、新しい男はこれからの人生を共にするだけの値打ちも器量もないと見限ったから。ジャンのほうがマシってことね。

 

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