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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月18日

特集「昭和のスター列伝1」 藤純子① 
緋牡丹博徒(1968年 アクション映画)

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監督 山下耕作

出演 藤純子/高倉健/若山富三郎/待田京介

シネマ365日 No.2272

強きマドンナ

昭和のスター列伝1

緋牡丹博徒シリーズの第一作。テーマを「昭和」に絞り、改めて作品を見直しました。なぜこの映画が受けに受けたのだろう。任侠路線の女子版といえばそれだけで説明がつきそうな、分かりやすい映画です。時代は「明治の中頃」で始まる大雑把な設定が、どことなくどっしりした安定感さえ感じさせる(笑)。オープニングは賭場。居並ぶ博徒の中央に渋い大島紬の似合う矢野竜子(藤純子)が正座する。結いあげた黒髪、すんなりと肩につながる白い襟足。「丁」「半」と短く切ったかけ声が、場の緊迫を高めていく。藤純子の矢野竜子は、この作品後、続く時代に登場する女子ヒーローの「昭和の先駆け」です。終戦後の社会変化で女性の立場は変わりました。女子の大学進学率はまだ低かったが、それでも戦前とは比べものにならず門戸は開かれた。女性の高学歴時代が来ようとしていました。今までの束縛は解かれようとしている。言葉にならない時代の衝動を女性たちは感じつつありました。頭の上を塞いでいた重いフタが少しだけどずれ、細い隙間から、自我の可能性が薄い光のように差し込んできた時期です▼矢野竜子は日本が生んだスーパー・ヒロインです。折り目筋目をきっちりつけ、人さまの恩を忘れず身を呈し一家を守る。自分に女であることを押し付けないでほしい、とお竜は宣言する。女であることの庇護を捨てたのですから、相応のダメージは覚悟のうえ。彼女は小太刀の名手であり、やばくなると拳銃をぶっ放す。お竜がとてもアブない、武器と体技に優れたアクション女子であることを映画は描く。お竜を見ているとそのあと登場した歴代女子ヒーローが彷彿とします。「エイリアン」のエレン・リプリー、「バイオハザード」のアリス、「ターミネーター」のサラ・コナー。「ベルばら」のオスカル、ズバリ直近の「ワンダーウーマン」。おそらく彼女たちは時代を超え受けつがれる戦闘女子の典型でしょう。挑戦し、戦う。別の言い方をすれば我を通すのです。これらの映画の大ヒットは、彼女らは損得や打算で動くチマチマした女ではないこと。サクセスや賞賛すらも目当てではない、自らの決定をやり抜く意志と腕力、エゴイストなまでの自信と自尊心、そんな女たちへの共感とリスペクトだったと思います。それまでの女がやれば白い目で見られた「出る杭」の資質を、昭和という時代で表現しようとすれば「博徒」という、特殊な立ち位置が必要だったのかもしれません▼ともあれ、お竜は誕生した。はてな、と思いました。なぜお竜は世間に送り出されたのだろう。昭和という疾風怒濤時代にふさわしいキャラだったが、それだけか。先発した江波杏子の「女賭博師」が快進撃していた。大映がやるなら東映だってやるさ。それもある。本作には高倉建が、若山富三郎が、大木実が、待田京介が、清川虹子が、義理と人情のしがらみの中で筋を通す任侠の生き方を演じます。その中心にお竜がいる。思い当たった答えはこれ。男たちは自分がふるいつきたくなる「いい女」を創りたかったのではないか。映画ですから客を呼べる市場性も大事だ、若い綺麗な女優も必要だ、さらに誰が見ても納得する魅力を備えさせなければならぬ。そんな女がどこにいる。ならばこれはどうだ…お竜とは男たちが惚れる強いマドンナ。反逆しながらも正義を守り、反社会的でありながらも磁力を放ち、そこにあるのは男にも女にも必要欠くべからざるカリスマ。お竜のスピリッツとは日本人の美意識の底流に連綿と流れる「サムライ」であり、彼女はそして「紅のサムライ」として造型されました。ストイックにして頑固、硬派にして柔軟、折れることも譲ることも学び、人を立て人のために尽くす。そんな女がここにおるのじゃ〜と、男たちの雄叫び…エレン・リプリーはリドリー・スコットによって、サラ・コナーズはジェームズ・キャメロンによって、アリスはポール・W・S・アンダーソンによって、ニキータはリュック・ベッソンによって息を吹き込まれましたが、エレン・リプリーのシガニー・ウィーヴァーを除いて、主演女優は当時監督の妻だったことも面白い。旦那がスクリーンに反映させたのは知り抜いた女房の気質でした。「緋牡丹お竜」の生みの親、製作の俊藤浩滋は藤純子の実父です。泣く子も黙る辣腕のプロデューサーでした。若山富三郎が藤純子にだけは手を出さなかったのは、俊藤を怒らせたら業界におれなくなるからだったと、まことしやかに今に伝わっています。

 

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