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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月20日

特集「昭和のスター列伝1」 藤純子③  
緋牡丹博徒 仁義通します(1972年 アクション映画)

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監督 斎藤武市

出演 藤純子/菅原文太/待田京介/清川虹子/若山富三郎/片岡千恵蔵/松方弘樹

シネマ365日 No.2274

昭和のワンダーウーマン 

昭和のスター列伝1

緋牡丹博徒シリーズ最終章。今までの「緋牡丹お竜」と、ニュアンスの違う翳りがあります。シリーズの「陽」の部分を受け持っていた、お神楽のおタカ(清川虹子)の死、お竜の兄貴分にして、四国道後に一家を構える熊虎親分(若山富三郎)が松山刑務所にお勤め中で、終盤まで暴れようのないこと、お竜の右腕、不死身の富士松だった待田京介の役が変わり、お竜を倒す敵方に寝返る、堂萬組の代貸し・松川を演じることなど、「陰」の部分が強くなっています。片岡千恵蔵が大阪の侠客、近松左兵衛です。ニヤッとしませんか。彼が演じた「浪速の恋の物語」の近松門左衛門へのオマージュでしょうか。筋書きの中心はおタカ亡き後、堂萬一家の跡目争いです。三代目と自負していた代貸し・松川は、分家の岩木(松方弘樹)が遺言で後継者に指名されたことを知り、堂萬組のライバル伝法一家に走った。岩木の一の子分藤吉(長門裕之)の妻・三津江は松川の妹だ。芸者の小袖を岩木は身請けするつもりだが、小袖の母はおタカの元亭主の愛人であり、おタカは亭主を追い出し、愛人を路頭に迷わせた…今までの若い衆の「惚れた・腫れた」よりやや陰の気が立ち込めているようだ▼主要登場人物のほとんどが死んでしまうのも気が滅入る。三津江は藤吉から離縁され手首を切って死ぬ。兄松川は堂萬組と伝法一家の出入りのときに、お竜に斬られる、と言うよりわざと斬られる。彼の太刀がミネ打ちだったことで、お竜は松川がもともと自分を死なせるつもりのなかったことがわかる。岩木は伝法一家のダイナマイトで死んでしまった。いたるところに死人続出。菅原文太は岩木の戦友である。岩木が殺され、伝法一家の無体なやり方に業を煮やし、たった一人で殴り込みに行く。お竜がついていく。本来なら逆のはずだ。途中、松山刑務所から出所したばかりの熊虎が駆けつける。そうそうたるメンバーによる出入りのはずが、なぜかものさびしいのは、映画界引退を決めた藤純子の、本編が最後の「緋牡丹博徒」であるからか。だからお竜より、これから売り出す菅原文太を先に歩かせたのか▼そういえばお竜は小袖をコンサルして励ますばかりで、妙にわけ知りの侠客女子になっていた。出入りはむろん大立ち回りになるが、肩の緋牡丹はザックリ刀傷を受ける。どこかお竜は弱々しいのだ。それを補うためか、やたら敵をドスでなますみたいに突き刺す、血なまぐさいバイオレンスの場面が多い。最後のとどめは片岡千恵蔵である。修羅場に到着した片岡親分はケンカを制し、お竜を振り向いていうのだ。「お竜はん、思うようにはならんもんやな」つまり、シリーズ最終章はお竜の挫折をもって終わるのである。裏街道を選んだダーク・ヒロインお竜は世間の幸せに背を向け、サタンの分身として悪魔的な力を振るったはずである。跡目争いはなんとか収めた。収めたものの「思うようにはならんもんやな」と千恵蔵親分に、慰められているのか、慰撫されているのか。屁みたいな収束にがっくりしたけど、でもこれがかえって次世代肉食系ヒロイン創生の土台となったのだと思おう。藤純子は20代を緋牡丹博徒で突っ走った。昭和のワンダーウーマンに、拍手。

 

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