女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「昭和のスター列伝」

2017年10月21日

特集「昭和のスター列伝1」 江波杏子①  
女の賭場(1966年 アクション映画)

Pocket
LINEで送る

監督 田中重雄

出演 江波杏子

シネマ365日 No.2275

昭和のビッチ

昭和のスター列伝1

「緋牡丹博徒」に先駆けること2年、「女の賭場」が、続いて「女賭博師」が公開され、17作が続く大映のヒットシリーズとなりました。主演は江波杏子。ニューフェースのオーディションにパスして大映の女優になったものの、脇役とすら呼べない端役ばかり。助演58本にして巡ってきた主役が「女の賭場」でした。若尾文子が撮影中怪我をして続行が困難になり、急遽代役を立てることになった。選ばれたのが江波だった。24歳でした。なぜ彼女だったかというとその2年前の「不倫」で、江波は若尾文子と一人の男をめぐる悪女役を演じました。この監督も田中重雄だった。平凡な役ばかりに辟易していた江波は悪役に張り切り、女優として特異な存在を印象づけました。これが「女の賭場」での主役につながります。つまり、江波は「ビッチ出身」の昭和の女優といっていい▼江波は女賭博師シリーズを「見たことも聞いたこともない世界のことで、やりにくかった」ともらしており、あまり気に入ってはいなかった。それでものちに「女賭博師」シリーズが彼女の代表作となり、ヒロイン「大滝銀子」が江波の代名詞になるのは、一にも二にも江波のキャラにはまっていたからです。特にその容貌。切れ上った鋭い目。筋の通った鼻梁。厚すぎず、薄すぎず、酷薄にもなれば艶冶にも見える唇。落ち着いたアルトの声。造作の一つ一つをとれば規格外れの大きさで、おさまりのいい美人ではないかもしれないが、ソフィア・ローレンと同じで、ショッキングなものがありました。ドキッとさせられる顔なのです。藤純子の緋牡丹お竜は、小さいながらも一家を構える親分の娘。蝶よ、花よ、と育てられ、広い部屋がいくつもある大きな屋敷に住み、子供の頃から父親の「帝王学」を肌で覚えた。江波の役はたいてい賭博場の胴師、それも名人と呼ばれる胴師を父に持つ娘です。質素な長屋に住み、今は堅気になって小料理屋の女将などをやっている。弟がいるが絵に描いたような愚弟で、学歴のいらない世界で好きなことをやりたいとヤクザに憧れる。姉は苦労が絶えない。大小のトラブルが付きまとうのが江波なのである。一瞬の勝負に札束が舞う博打の世界。盆に座る孤独な胴師には、江波のシャープな、ストイックな容貌が似合った。藤純子はどこか、お嬢さん、お嬢さん、した可愛らしさがあった。いくら睨みつけたとしても、クルッとした瞳には愛らしさがあった。江波の鷹のような目は、無邪気な可愛らしさなど皆無であるばかりか、胸騒ぎを掻き立てる暗い情念をたたえる。こんな女に関わってはいけない、そうわかっていながら惹かれてしまう、昭和の元祖クールビューティが江波でした▼「女の賭場」続く「女賭博師」は、江波の助走期だ。名胴師の父親を亡くし、後を継いで盆に座り、復讐を果たす。賭博の裏社会から抜けきれない女に男は引いてしまう。江波は男の、それも博徒の世界の荒波を腕一本で生き抜いていく。これをヒットさせたのは男たちでもあろうが、現実の男の鬱憤がつもり積もった女たちではなかったかと未だに思える。同時に、賭博師や博徒のような女が銀幕に登場しても違和感の消えた時代が昭和だった。彼女らは迎えられたのである。昭和とは、男に運命を委ねないばかりか、男の運命をも変えてしまう、ファム・ファタールやビッチを、女は潜在意識のうちで待望していた時代だった。日本人離れした美貌の江波がスクリーンに現れたとき、女たちは出自の良し悪しでもモラルでもない、自分が在りたい強き分身を、次代の予感のように感じ取っていたと思える。

 

Pocket
LINEで送る