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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月22日

特集「昭和のスター列伝1」 江波杏子②
女賭博師乗り込む(1968年 アクション映画)

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監督 田中重雄

出演 江波杏子/大楠道代/三条魔子/滝田裕介/浪花千栄子/

シネマ365日 No.2276

ダーク・ヒロイン 

昭和のスター列伝1

ヒロイン大滝銀子(江波杏子)に、これでもかと災難が降り注ぎます。彼女を取り巻く男たちは、父親であれ、弟であれヘタレの見本。本作は妹ですが、妹・昌代(大楠道代)が銀子姉さんの頭痛のタネである。でも元深川芸者の母親にとっては姉妹二人ともが悩みの元なのだ。母親の血を引き、銀子は踊り、昌代は三味線に筋がいいのに、どっちも置屋を継がず、姉は「昇り龍のお銀」と異名をとる壺振り、妹は女だけのバンド「ピンキー・チップス」を結成してエレキに夢中。敵役は横井組の社長・山茶花究だ。銀子は彼の賭場で壺を振っている。最近ストリッパーのユカリが横井の愛人となり賭場が開帳する前に踊っていた。銀子は嫌気がさしている。ユカリは密かに壺振りの練習をし、銀子を蹴落とすことに執念を燃やしているのだ▼横井はユカリを華々しくデビューさせるために、全国の親分衆を集め、銀子と勝負させると決める。そのために胴師の辰三(滝田裕介)に披露の盆でイカサマを頼む。昌代がドジを踏んで指を詰めることになり、辰三は「あっしに免じて」でもその交換条件にイカサマを引き受けることになる。銀子はユカリに敗北する。素人のユカリに負けて銀子は賭場を去る。母親が急逝し、置屋を継いだ銀子はたちまち深川一の芸者になる。深川芸者が憧れる「深川踊り」にでないかと先輩芸者に誘われるが、出場費(のようなもの)の200万円が工面できず諦める。横井はその金を出すから自分の賭場で壺を振らないかと声をかける。壺を封印した銀子は断るもののどうしても深川踊りには出たい。横井の話を受け、封印を解こうとするが、寺尾組の社長キク(浪花千栄子)が来て、(昔銀子の母親に助けられた)「そのお母ちゃんに誓った封印を破ることは、ならん!」キクは200万を用立て深川踊りに銀子を出場させる。振られたことを根に持つ横井は、東海筋で盆を引く一切の権利をかけて熱海で勝負したいとキクに申し込む。キクは受ける。盆の日は深川踊りと同じ日だった。キクは銀子に踊りに専念させるため組員に緘口令を引き、盆の勝負には自分が胴をやると決める▼当日深夜、訳を知った銀子は踊りを終え熱海に急行し、自分がやるとキクに訴え壺の封印を切る。横井は再び辰三にイカサマを頼むが、辰三は最後の目に「ビンゾロの二」を出し、「一」を出せという横井の注文をはねつけた。勝負は銀子の勝ち。辰三は刺され、銀子の腕の中で死ぬ。銀子は生きる道を賭場と決め「寺尾のおばさんの盆でお世話になっています」と母親の墓に報告する。芸者置屋は妹が継ぎ今や三味線の名手だ。「今夜は戻らないかもしれないけど、頼んだわよ」そういって銀子は出かけた。賭場にいる。銀子の着物の半身に天を駆ける昇り龍。静まった盆に銀子の声が響く「入ります」▼銀子とはダーク・ファンタジーのヒロインでした。時代とはいつだって大変なのです。生きる苦しさ、思うようにいかない辛さ、特に女性は夢を叶えようもないモラルや制度の制約から抜けきれなかった。大学進学率が上がったとはいえ、卒業しても職業の門は狭かった。入社してもガラスの天井があることは、ヒラリー・クリントンでさえ、まだ打ち破れないのである。女性の選べる職業がほぼ教師か看護師か尼僧かに限られ、たとえ就職しても昇任昇格の閉ざされた女性たちにとって、ひとり道を切り開く銀子はいかばかり孤独に、勇敢に、そして美しく映ったか、半世紀を経た今だからこそ想像がつく。それがこの映画を古くさせていない。

 

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