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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月24日

特集「昭和のスター列伝1」 江波杏子④
悲しい色やねん(1988年 恋愛映画)

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監督 森田芳光

出演 仲村トオル/高嶋政宏/小林薫/江波杏子

シネマ365日 No.2278

江波と小林 

★23-27‗昭和のスター列伝1-2

1988年というと昭和63年ね。公開は12月だった。翌年1月7日で昭和は終わるから、昭和のギリギリだった。この年、ソウルオリンピックがあった。なら・シルクロード博覧会があった。美空ひばりが東京ドームで5万人を集めた「不死鳥コンサート」があった。大河ドラマの「武田信玄」で大井夫人(若尾文子)の「今夜はここまでにいたしとうござりまする」が流行語大賞となった。そんなことを意味もなく思い出した。この映画は烈々たる昭和の掉尾を飾る傑作、には程遠いものの、せめて佳品と言いたかったがそれさえもサッパリの映画だった。ゆるいキャラにありきたりのストーリーで耳障りな下手な大阪弁にうんざりした。夕張組の組長、高島忠夫がお遍路に出る、ヤクザの親分が今までの懺悔を込めて、らしい。高嶋が年齢相応にとぼけた味を出し、コメディになるのかなと思ったらそれとも違った▼夕張組の跡取りトオル(仲村トオル)はお堅い銀行員だ。父が(これが高島忠夫)三池組系の喧嘩で大怪我をした。トオルは友人である三池組の桐山(高嶋政宏)と話をつけどちらからも手出しはしないと話をつけ身内の騒動を治める。今はヤクザの時代じゃないという息子に、高嶋パパは「子分らをどうする。就職する言うたかて、履歴書も満足に書けんやつばっかりや」と嘆く。トオルは夕張組を解散させ、組員を会社で雇用し、カジノハウスを拡張し、日本のラスベガスを作ろうとする。解散と同時にヤクから完全に手を引いたのに、夕張組の幹部、盛山が黒浜温泉でヤクを流す。桐山は盛山を殺害する。トオルは黒浜にラスベガスを作ろうとするが、計画を知った三池組が妨害に出る。江波杏子は何をしているのか。三池組の組長の右腕なのだ。組長が小林薫。江波は男役なのである。二人はゲイの関係で、江波は組長を後追い心中する。ほとんどセリフなし。どれもこれも通りいっぺんの平凡なキャラの中で、小林と江波が異色だった。小林は黒いベレー帽なんかかぶり、猫なで声でショボショボと抑揚なくしゃべり、いやらしい目で見るでもなく見ないでもなく、動物が闇に気配を伺うような視線を送る。そばにいる江波は、ジョン・レノンのような眼鏡をかけ、たっぷりした髪を高々とオールバックにした、早く言えば背広を着た大滝銀子である▼江波は芸能生活50年のキャリアだ。いつまでも「女賭博師」と「津軽じょんがら節」を引き合いに出すのはむしろ失礼なのである。きっと迷惑に違いない。彼女は映画に、舞台に、テレビに出演する、現役の大女優だ。幅広い役をこなし、朝の連ドラでだってお馴染みだった。しかし「背広の銀子」を見て、本来この人の持ち味はユニなのだと思った。大滝銀子だってフツーの女性とは懸け離れていたではないか。そういえば江波杏子はヌードにもなり、水着にもなったが、結婚だ、離婚だ、恋愛だという色っぽいお話とは無縁だった。同棲の話はあったが20代後半で打ち止め。以後絶えて聞こえてこない。静かな生活は、人さまのことには無関心を主張しているようだ▼本作でも、正直いうと江波の役は何のために出てきたのかわからない。小林と揃って爬虫類の兄弟みたいに身をくねらせ、映画の暗い、微妙な陰影を受け持っていたが、本来ならこの手の存在を描き込めば、本作はここまで愚作にならなかっただろう。高嶋パパの流暢な大阪弁と、挿入される道頓堀とベイエリアの夜景が、上田正樹の佳曲「悲しい色やね」の叙情をとどめている。いいたくないが「悲しい色やね」と「悲しい色やねん」のニュアンスの違いも、この映画は「わからんようになったんか」

 

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