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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月26日

特集「昭和のスター列伝1」 石原裕次郎②
俺は待ってるぜ(1957年 アクション映画)

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監督 蔵原惟繕

出演 石原裕次郎/北原三枝/二谷英明

シネマ365日 No.2280

こっちへいらっしゃい 

★23-27‗昭和のスター列伝1-2

島木謙次(石原裕次郎)は波止場のそばの小さなレストラン「リーフ」のマスター。店じまいしたあと、そぼ降る雨の波止場で佇んでいる女、早枝子(北原三枝)を見かける。謙次に気がついて、去ろうとする早枝子に声をかける。ここのセリフにびっくりした。「あ、君。今頃こんなところでなにをしてるんです。なにをしようとしていたんです?」「わからないわ。かまわないで」「バカなこと、いうんじゃない。だいぶ濡れている。僕と一緒にいらっしゃい。心配しないで。夜の雨は冷たいよ。体を暖めて、それからどうするか考えたらいい」なんてきれいな言葉遣い。初めて会った女に「僕と一緒にいらっしゃい」なんてスラッといえる青年が何人いるだろう。ついて来ようとしない女に、さらに「なにしてるんです。そんなところに突っ立ってないで、こっちへいらっしゃい」そういって店に入る。「ここは僕の店で誰もいませんよ。食事はなにを作ってあげようかな。まずこれを空けるんだ」とコニャックを注ぐ▼折り目正しい育ちのいい青年・裕次郎の独り言のような殺し文句が続く。「冷えるといけないな。向こうの部屋で着替えなさい。男物しかないけど、濡れているよりマシだろう」黒い男物シャツを着て部屋から出てきた早枝子に「だいぶ疲れているなあ…聞くの、やめよう。聞いたって僕にできるのは、せいぜいお料理のお代わりをするくらいのもんだ」。暖かいスープに「おいしい」と女はぽつり。「もうじきブラジルの兄貴から迎えの手紙が来ることになっているんだ。この店をたたんで出て行くんだよ。だから、僕はあんたの心の邪魔にはならない人間だ。何があったのか言ってごらんなさい」「私、人を殺してしまったのかも。くだらないのよ、何もかも」。早枝子はクラブの歌手で、言い寄ってくる経営者の弟・柴田を花瓶で殴り気絶させ死んだと思っている。その夜謙次の店に泊めてもらい、翌朝。またもや裕次郎が「朝メシ、まだなんだろ。新聞見たけど、男が死んだなんて記事、ないよ。別にとめやしないけど、気がすむまで僕の店にいたっていいんだぜ」なんなの、この“かまいネコ”みたいなかまいようは。定期便みたいに毎朝くる常連客・内山に「兄に出した手紙、3通とも返事、こないんです。待ち遠しいなあ。僕は日本に用がないんです」▼裕次郎のセリフだけで粗筋がわかるようなものだ。早枝子は謙次が買ってくれた黒いブラウスで、謙次はスーツにネクタイでビシッと決め初めてのデート。ボクシングを見に行き、苦しそうな表情に変わる謙次に「どうかなすったの?」徹底的に言葉がきれいですね。裕次郎は元ボクサー。喧嘩で人を殴り殺し、ボクシングを捨てた。兄がブラジルに行き、牧場を経営し1年たったら弟を呼ぶことになっている。早枝子は「リーフ」で働き始めた。二人が好意を持ちあっているのがありありわかるほのぼのシーンが数カット。早枝子を取り返しにきた弟・柴田と一緒に兄・柴田(二谷英明)が来た。元ボクサーだ。殴られるのに耐える謙次を見て、早枝子は「店に帰るからこの人に手を出さないで」と言って男たちに連れられて行く。一人の男が持っていたメダルは新人王になった記念に謙次が兄にあげたものだ。兄の身に何かあった…独自に調べると、兄はブラジルに行く前に柴田の店で殺されていた。謙次は柴田の店「地中海」で柴田兄と大乱闘の末、殴り勝つ。早枝子は謙次の傷を手当し、肩を貸して出て行く。裕次郎のアクションがうまいから、乱闘シーンもボクシングも絵になっていたし。北原三枝がいいですよ。アツアツでしたからね。この3年後に結婚です▼歌も映画もヒットしたけど、理由の一つはタイトルの「俺は待ってるぜ」だったと思う。兄の便りを弟が待っている意味なのだけど、誰もそうは受け取らない。女性は男がいう「待ってるぜ」にしびれた。散々男に待たされるのが女、女を待たすのが男だった時代に「俺は待ってるぜ」は甘く響いた。いい遅れたが、裕次郎の特色は甘さにある。目つきは鋭いのに、どことなく可愛らしさがあり、笑うと八重歯が覗く。不揃いな乱杭歯が、整った美男になれた主人公からヒーロー像を一変させた。前述した前代未聞のセリフ「こっちへいらっしゃい」「お料理」「何を作ってあげようかな」「言ってごらんなさい」な〜んて、板につく男が日本のどこにいただろう。蔵原惟繕の監督デビュー作です。裕次郎とは「栄光への5000キロ」「嵐の中を突っ走れ」「銀座の恋の物語」など多数。観客動員・興収を塗り替えた「南極物語」もこの人でした。

 

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