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特集「昭和のスター列伝」

2017年10月31日

特集「昭和のスター列伝1」 石原裕次郎⑦
鉄火場の風(1960年 アクション映画)

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監督 牛原陽一

出演 石原裕次郎/北原三枝/芦田伸介/赤木圭一郎

シネマ365日 No.2285

また二人になったな 

★28-31‗昭和のスター列伝1-3

裕次郎の映画のタイトルには風と、それに類するイメージがよくあります。「嵐を呼ぶ男」「明日は明日の風が吹く」「風速40メートル」「街から街へつむじ風」「アラブの嵐」「嵐来たり去る」「嵐の勇者たち」など。本作もズバリ「鉄火場の風」。今から思うと、52歳で世を去った裕次郎と風がダブルのです。裕次郎の独身最後に撮った映画です。北原三枝は本作の出演を以って引退しました。冒頭は網走刑務所。出所した双葉組元代貸し・畑中英次(石原裕次郎)を黙々とカメラが追います。無実の罪で服役し、復讐を誓った畑中の心象のように、網走から東京までの風景が映ります。最果ての海のそばを走る列車。釧路本線かと思われます。広い牧草地に馬が一頭。煙を吐いて通過する蒸気機関車はC58。雪の残る原野を走るのはD51。車内に裕次郎がいます。遠くを見ています▼湖畔を行くD51のバックに見えるのは駒ヶ岳。北海道を離れるシーンはもちろん青函連絡船。東北に入り、見はるかす遥かな野を力強く煙を上げる「はつかり」。鉄橋を渡る特急はなんでしょう。残念なことにわかりませんでした。列車はゆっくり上野駅13番ホームに到着しました。とても暗いホームです。この映画、基本的にダークな雰囲気で仕上がりそうです。畑中は銀座に舞い戻り、キャバレー・モンパルナスに行く。「那美をよんでくれ」と頼む。現れた那美が北原三枝です。彼女は店の歌手でありホステスだ。黒いドレスを着て、痩せてシャープです。本作で北原三枝はこれまでの裕次郎の相手役と違い、汚れ役です。「寒いのかい。ガタガタ震えてるじゃねえか」裕次郎が嫌味たっぷりに訊く。「刑務所はいくらシャバから離れていようと、いろんな噂が入ってくるぜ。例えばお前のこともな」ハナから威嚇射撃です。モンパルナスの店長で、呉羽組の組長である高木(芦田伸介)と「できているのだろう」と決めつけます。呉羽組の親分を射殺した罪状で畑中は3年間ムショ入りしたわけ▼役者の顔ぶれを見てもすぐわかります。畑中をはめたのは高木。彼は目障りな畑中を所払いしたい。畑中の破門状を関東一円に回してくれと顔役の馬瀬に頼む。畑中と高木は盆を挟んでの勝負となります。高木の代理人のイカサマを見破った畑中が「どこが任侠だ。こんな汚い世界はこっちからおさらばしてやる」と啖呵を切って脱ヤクザ宣言。いっぽう高木は組の資金手当に野球場の現金強奪を企んでいた。赤木圭一郎が畑中をつけ狙う高木の手下、健です。彼は本作の翌年21歳の若さで事故死します。劇中ですが、芦田伸介は心臓に持病がある親分である。脚色が熊井啓のせいか、冒頭の寂しい景色といい、全編に叙情感と寂寞感が滲んでくるのは気のせいか。ラストは高飛びする高木が那美を待つバス停。飛行場のある基地です。あたりは一面の野原。一本道の遠くからトコトコ、田舎のバスがやってくる。那美がバスから降りた。バスが発車した。那美の後ろに畑中がたっている。よく知られたシーンです。高木は畑中に撃たれ救急車で搬送。畑中が那美に「また二人になったな」。このセリフが聞かせました。那美は畑中を慕う娘を幸せにしてあげて、といい「私は出直すわ。そして新しい人を見つけるわ。あなたのような」そしてパトカーで去る。特別いい映画とはいえないにしても、冒頭とラスト、漠々たる風景のかもす寂寞感が、ただの「つまらなさ」を救っていました。北原三枝がそれまでのフツーのヒロインと違う、生き延びるために情婦になった、とんがったビッチがなかなか似合っていました。

 

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