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特集「ヤバい女」

2017年11月2日

特集「ヤバい女」②
ウーナ 13歳の欲動(2017年 社会派映画)

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監督 ベネディクト・アンドリューズ

出演 ルーニー・マーラ/ベン・メンデルスゾーン/リズ・アーメッド

シネマ365日 No.2287

薄幸クィーン 

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少女時代のウーナがしばらくスクリーンに映され、ルーニー・マーラはなかなか姿を現しません。やがて場末のクラブみたいなところで、明滅するライトを背に、暗闇から「ヌ」とアップで登場する。痩せてほほ骨が飛び出し顎はとんがり、長い髪は野放図に背中にバラリン。役の設定では28歳ですが、およそ「豊かさ」「明るさ」「堅実」「安定」のかけらも感じられません。ルーニーって、なんでこう「薄幸オーラ」出しまくりの役が多いのかしら。本作は13歳のとき、隣家のおじさんレイ(ベン・メンデルスゾーン)と関係を持ち、男は逮捕、4年の実刑、出所後引っ越して行き先はわからない。ウーナは地元の町にとどまり、近所から白い目で見られながら15年、同じ家で母親と二人過ごす。父は事件がきっかけで、ウーナがいうには「階段から転落死」した。母親は腫れ物に触るように娘を扱っているが、娘の接し方は冷たい▼娘は男の勤務先を探し当てる。大きな工場の管理職となり、妻がいる。ウーナの訪問に驚愕する。君は別人だろうとしらばくれるが「ホクロを見せましょうか。あなたがキスした」ウーナはテコでも動かない。陰の気を発散させたらルーニーにかなう女優は誰がいるだろう。男は辟易し、大事なリストラ会議でも手はずを狂わせ上層部はカンカン。それでも男はウーナに、会議が終わるまで「車で待て」なんていうのだから、焼け木杭に火はついているのだ。会議で大チョンボしたまま社内でいなくなった男を、上司・部下は探しまわるが、男はトイレと倉庫でしっかり「しのび逢い」である。ウーナも男と別れて以来、心は空っぽ。ゆきずりの男とその場限りの関係を持ち「憎んだわ。人生を」というかなり重度の社会不適合者となっている。男の妻に「会うわ」と言い出し男は狼狽する。ウーナにしたら男が小児性愛者かどうか、始めからそのつもりで自分に近づいたのか(つまり愛情ではなく性癖で)知りたがるのだが、男は否定し「君を愛していた」と繰り返す。今さら言って、聞いて、どうなるのよ▼ウーナの心の傷はザックリのまま。男はキレイさっぱり新しい人生を踏み出しているのだから、現れたウーナは悪夢に等しい。しかもウーナは男の部下スコット(リズ・アーメッド)の部屋に押しかけ、酒を飲み、「遅いから送っていって」といった送り先が男の家だ。その夜仲間内でパーティを開いている家にズカズカ入っていき、妻に「幸せ? まずい質問だった?」。妻は返す言葉がない。男はスコットに「今すぐ連れ出せ」と命じる。彼はスコットの上司である。そうそう、ウーナはスコットの家でちゃっかり白いドレスに着替えた。スコットの元カノの服だ。男の家に10代の少女がいるのを見て、やっぱりレイは少女好み変態オヤジだったとウーナは思う。自分との関係もただの変態ゲームだったのだろう。ウーナは夜道に一人、白いドレスのまま立っている▼ウーナとはどこまでも後ろ向きで、過去の怨念にかたまったまま行きくれ、男を破滅の道連れにしようとする女を、「薄幸クィーン」ルーニーが鬼気迫る演技でやってのけます。幼児のトラウマが尾を引いた彼女の作品には「エルム街の悪夢」。「ドラゴン・タトゥーの女」では天才ハッカー・リスベットが変態ブタの強姦魔、社会福祉士にめちゃくちゃにされ、コテンパに復讐する。「サイド・エフェクト」では、ウツを装って夫を殺したヒロインが、ゲイの相手であるキャサリン・ゼタ=ジョーンズを罠に陥れる。「セインツ—約束の果て」は泥棒カップルが最後の仕事に銀行を襲い、妊娠している女の代わりに男がムショ入り。女は出産し、出所する男を待っているが男は昔のしがらみで追われる身。女はどこにいても男は自分を見つけるはずと信じて逃走するが、男は殺されていた。「キャロル」。これこそ純愛ハッピー・エンド、どこが薄幸かと思われようが、ルーニー扮するテレーズは母親が嫌い。母親も娘に情がなくさっさと再婚し、娘を寄宿舎に放り込んで厄介払いする。将来のあてもなく自信もなく、社会を浮遊しているのは本作のヒロインと似ている。キャロルがこだわりのないサバサバした性格であるのと対照的で、キャロルに置き去りにされたことを根に持ち頑固にキャロルを拒む。そのコワモテぶりに、案外キャロルに同情した女性も少なくないはず。まあそういうふうに、幸福に恨みでもあるかのように暗いヒロインが多い。本作だって、過去にこだわるのはもういい加減にしたらと思うのは、俗人のフツーの感覚であって、ルーニーが選ぶ超ヒロインは「フツー」で手を打つなど、もっての他だ。それでウーナはどうなる? さあね。好きなだけのたうつしかないわね。

 

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