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特集「ヤバい女」

2017年11月5日

特集「ヤバい女」⑤
ワイルド わたしの中の獣(2016年 社会派映画)

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監督 ニコレッティ・クレビッツ

出演 リリト・シュタンゲンベルク

シネマ365日 No.2290

ええい、やっちゃえ

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ニコレッティ・クレビッツ監督は刑務所ロックバンド「バンディッツ」のベースを担当したエンジェルです。彼女、監督に進出したのね。リーダーでドラマーのエマこと、カッチャ・リーマンにいつもとっちめられていた子よ(笑)。ヒロイン、アニアはリリト・シュタンゲンベルク。ドイツ映画界注目の女優で人気上昇中。凛々しい美人でしてね、オオカミでなくても惚れそうよ。彼女は「アイヒマンを追え」で美しい女装男子を演じました。オオカミに恋したアニアが、マンションで一緒に暮らすうち、ワイルドに変貌していきます。一室を解放し、部屋はオオカミの糞尿と食い散らかした食べ物の残滓、アニアがペットショップで買ってきたウサギは引き裂かれます。部屋をチョロチョロしている、おとなしいウサギにアニアが「頑張って」と言い残し、薄笑いして仕事に行くシーンは、この映画で唯一キライです。オオカミの残虐性をアニアが身につけてきたことを言いたかったのでしょうが、わざわざ撮らなくてもいいシーンです▼本作にはドイツ発元祖怪奇映画「カリガリ博士」の遺伝子が脈うっています。「吸血鬼のスフェラトゥ」といい、「ブラッドウルフ」と言い、ドイツ人の幻想好きは、鬱蒼たる北の大地シュバルツバルト(黒い森)のオーラに違いない。日本人にはない大陸のような森林が、魔窟であり、迷宮であり、謎であり幻夢である物語を紡ぎ出してきました。女の縛りを解く、という見地で言えば、例えばボーヴォワールが生きていたら喜んだでしょうね。「第二の性」のこんなくだり、「人類が苦しんでいるあらゆる厄災を箱から解き放ったのはパンドラである。他者とは能動性に対する受動性、形相に対する質料、統一性を破る多様性、秩序に逆らう無秩序である」。これ、この映画に全部ありますよ(笑)。アニアがオオカミに一目惚れした。日常性に埋没し、自分を見失ったアニアにとってオオカミは特異性の象徴でした。アニアはオオカミの野生に欲望する。全てを捨て、オオカミと森に姿を消す。そう決心し空を仰いだアニアの笑顔は、映画の中で彼女が唯一見せる幸福そのものの笑顔です▼野性化するアニアを映していく監督の目は本当にいやらしくてリアル(笑)、オオカミに麻酔銃(アニアの手作りですよ!)を撃って眠らせ、マンションに引き込む。大きな肉片を与え、隣の部屋の様子を見るため、壁に穴を開ける。腹を立てたオオカミが、グワン!と鼻を突き出す。本気で襲わないところを見たら、オオカミは早くもアニアと一心同体感を持っているのだ。経血の血の跡をトイレまで辿り、ぺろぺろ、ぺろぺろ。CGじゃなく本物オオカミよ。ズボッとアニアの両脚の間に頭をつっこむ、その頭の大きいこと。オオカミは次第に情を濃くし、アニアのベッドに上がり込み、やさしく顔を、首を舐める。これがね、オオカミはイヌと違って、人間を喜ばせようなんて愛想よくないから、正味アニアが気にいったのね。ペロンとお義理に舐めて終わり、じゃなくて、アニアののけぞった長い首筋をまあ、丁寧に、丁寧に、長い舌で舐めあげるのよ。調教したとはいえオオカミってここまで芸達者か? 多分ハチミツか何か塗っておいたのよね▼グロいところも結構ある。アニアが上司と関係したものの満足できない。「もうイッたの。もう少し何とかならない」と訊く、男は回復に時間がかかりそう。「しょうがないや」とばかりどっちも白けてズボンをはく。リアルすぎて笑っちゃう。上司が嫌味男です。アニアに気がある。コーヒーを入れさせるときは、アニアの席の背後にある、パーテーションにボールをぶつけるのが合図だ。君は余計なことを聞かないから優秀だ、と上から目線でものをいうジコチュウ男。アニアが退職したいという。男は辞めさせない。「出社しなければ解雇でしょう」「いいや。どこへも行くな」「運命の出会いがあったのです」「なに。その傷は彼の仕業か」「わたしが悪いの」「彼は何の仕事を?」「なにも」「やっぱりな」「外見は最高よ」「君の容姿を何と?」「そばにいるだけで喜んでくれるわ」「俺もほぼ同じことを言ったつもりだが」「空気が悪いので窓を開けてくれない。カーペットが、嫌な臭いがするの」臭覚が異様に敏感になっています▼マンションの管理人から苦情が出て、アニアはオオカミを連れ屋上生活。追ってきた上司が無理やり連れ戻そうとするとオオカミが襲撃します。アニアは救急車を呼んでから逃走しますが、男は多分死んじゃうのでしょうね。オオカミと荒野に。水たまりの水を飲み、ノネズミをむしゃむしゃ食べる。パキパキと聞こえたのは、骨を噛み砕く音でしょうか。それ以外にも、マンションの階段の手すりに股間を摩擦させながら降りていくとか、上司のデスクに脱糞して放火するとか、ショッキングなシーンがけっこうあります。毒食らわば皿まで。世間にいるフツーの女がやりそうにないアブノーマルなこと、この映画でもう全部やっちゃえって感じでした。

 

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