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特集「ヤバい女」

2017年11月9日

特集「ヤバい女」⑨
ジャッキー/ファーストレディ最後の使命(2017年 事実に基づく物語)

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監督 パブロ・ラライン

出演 ナタリー・ポートマン/グレタ・ガーウィング/ジョン・ハート

シネマ365日 No.2294

それでよいのだ 

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「やばい女」トリは「ジャッキー」です。ケネディ暗殺から葬儀までの、4日間のジャッキーに焦点を絞ったところがニクかった。ナタリー・ポートマンの一人舞台です。さすがですね。ジャッキーの腹心としてホワイトハウス入りした親友のナンシーをグレタ・ガーウィングが、ジャッキーが「葬儀はジャックではなく私のためでした」と告解する神父をジョン・ハートが演じて奥行きを作っています。ジャッキーとは実に複雑で強く、重層的な女性です。ケネディの葬儀でジャッキーは棺の後を歩いて行進する、やめる、やっぱりもとどおり行進する、と二転三転して結局は自分の意思を貫きます。「馬車と馬を用意させて。圧倒的な美しさで葬列者はジャックとともに歩くのよ。人々の記憶に残る美しい葬列にする」アメリカの歴史に残る葬儀にするためです。屋上や窓のあるビルが多く、危険を回避するために許可されるはずもなかった。それを押し切る▼ジャッキーも一度は(やっぱり予算の無駄遣いかな〜。危険も多いし、やめようか)と端の意見を取り入れますが、大統領にふさわしい美しさと厳粛さを守ることにこだわり抜きました。相手がジョンソン大統領だろうとジャックの実家だろうと、姑だろうとビクともしない「大統領の妻」。勇敢な女性ですが、それでもファーストレディの座を去った自分の未来に思いは乱れます。「リンカーンの妻は極貧の中で死んだ。イリノイに戻ったの。家具を全部売り払って。ジョンとキャロラインの学資のため私も売り払わないと」。墓地はケネディ家伝来のブルックラインにという義母の意見を一蹴、アーリントンの見晴らしのいい最高の場所を自分で選びます。ジャッキーはジャックをアメリカの象徴にしたいのです。一セレブの長男の葬式ではない。その一方でホワイトハウス立ち退きの催促が来る。ジャッキーは慌てない。「ファーストレディはすぐに荷造り出来なくては。それが務めよ」▼秘書のナンシーってジャッキーの元カノなのでしょうか。「私たちは昔から一緒ね」とジャッキー。「はい」「あなたが嫉妬しないか心配だった」「まさか」「そんな素振りは一度も見せなかったけれど。私が結婚し選挙に勝った後は不安だった。今思えば馬鹿げている。子供二人を亡くし、夫まで亡くす女なんて」「あなたには未来があります」「ひどいこと言うのね」「本当です」「この先どうするの?」「そばにいます」「私を見捨てない? 怖いの、ナンシー」「よくわかります」。グレタ・ガーウィングが上滑りしない演技で、ナタリー・ポートマンを受け止めています。頼りになる相棒ね。問題の葬列ですが、「控えめな葬儀をしたいとか」担当者が念をおす。「考えを変えたの」「(ギョッ)」「葬列を組み、私は棺とともに歩きます」「103人の国家元首が集まります。ド・ゴール大統領は危険を危惧されています」「ヴァレンティさん」と担当者の名を呼び「要人の方がついたら私の伝言を届けてくださる? 明日私はジャックの棺と歩きます。たとえ一人でも。ド・ゴール大統領が車にお乗りなら、戦車でも装甲車でもかまいません。ご自由に。何千万もの視聴者も気にしないでしょう」ヴァレンティは引き下がる▼ジャッキーは彼女自身の才覚でケネディ政権のイメージを作り上げました。危機的状況でこそその人の生き方が見える。「映像に真実を記録させなくては。父を失った子供ふたりの悲しい姿を含めて。ジャックと二人でいつも聴いた「私の頭の中で響き続けている歌があるー忘れてはならない、かつて存在した輝かしいときーキャメロット」。キャメロットはアーサー王伝説の王国の居城です。ケネディの好みでした。エアホース・ワンの機内でジョンソン夫人が「着替えては」と勧めたとき、ジャッキーはきっぱりと退け「見せてやるわ」血に染まったピンクのスーツのままタラップを降ります▼神父への告解のシーンはこの映画の重要な部分です。「私は報われぬ苦しみに耐えてきました。女には二種類あります。世界で権力を欲する女と、ベッドで権力を求める女と。今の私に残されたのは? 男は私を見て何を感じるのです? かつてはみな私に微笑んだ。誰も夫の苦悩や忠誠心を理解しなかった。彼は最高の父親でした」神父「私は幸せに人生を送ってきた。しかしふと、ただそれだけのことだったのか、もっと他の道もあったのではと思うときがある。命ある限り人は迷うものだ。神はいう、それでよいのだと」。ジャッキーは5年後オナシスと再婚します。それはナンシーのいう未来だったのか、神父の示した、許されるべき道だったのか。いずれにせよジャッキーは「それでよいのだ」という声を聞いたのです。最後にひとつ。ファーストシーンで、記者のインタビューを受けながらジャッキーがタバコをふかします。ナタリー・ポートマンが、これだからファーストレディの重責と中傷にへこたれなかった、そう思わせるのに充分な、危険でセクシーな「やばい女」の匂いを放っています。

 

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