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特集「偏愛力」

2017年11月15日

特集「偏愛力3」⑥
太陽の爪あと(1967年 ホラー映画)

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監督 デイヴィッド・グリーン

出演 キャロル・リンレイ/ギグ・ヤング

シネマ365日 No.2300

悲しみの怪物 

15-19_偏愛力3-2

原作は怪奇幻想作家・ラブクラフトです。精神の疾患ゆえに監禁された状態、というのは彼の作品によく見られる設定ですが、本作もそう。本作はニューイングランドの孤島が舞台。ダンウィッチ島に、島にある家屋敷を遺産相続した新婚夫婦が見に来る、ところから始まります。ゴシック・ホラーの雰囲気も禍々しい古びた製粉工場、その隣の塔に住む魔女めいた老婆。ヒロインのスザンナ(キャロル・リンレイ)は、子供の頃、怖い夢でよくうなされた。悲鳴をあげると父親と母親が飛んできてくれる。その夜も侵入者の気配で目が覚めた。「鍵はかけなかったのか」と父親が怒りながら「戻れ、戻れ」と何者かを威嚇し追い払う。してみると幽霊ではないのだ。父親はかなり強引に部屋から押し出し、秘密の場所に閉じ込める。怪獣でも怪物でもない。場面は変わり、美しく成長したスザンナが新婚の夫のマイク(ギグ・ヤング)とともに島に来ました。遺産相続した家屋敷を見るためです▼島の住民たちは異常によそ者を嫌いながら、スザンナを欲情丸出しの目つきで見る。スザンナが受け継いだのは廃屋となった製粉工場跡だ。スザンナのたった一人の叔母アガサが工場に隣接する塔に住み、工場跡には魔物が住むから即刻島を出た方がよいと忠告する。島にはホテルもない。埃だらけの廃屋の階下を掃除し、マイクは食料調達に町に出ます。その帰り荒っぽい不良たちに襲われ、リンチに会うが、空手で撃退する。アガサ叔母の血縁に当たるイーサンは、工場は自分が引き継ぐはずだとねじ込むが、ならばあの建物で暮らせるかと言い返され引き下がる。怪物が住むという噂は島の住民たちの間で既成の事実となっていました。建物に踏み入った者、近づいた者はひどい目にあって目を突き刺されたり、不慮の死を遂げたりしたからです。イーサンのガールフレンドも何者かに襲われ殺されます。イーサンはスザンナを追いつめ、暴行を加えようとしますが、スザンナは我を忘れ廃屋の秘密の屋根裏部屋に逃げ込みます。追いかけてきたイーサンは低い天井の部屋に、長い鎖で繋がれている女を見る。女はイーサンを地上に突き落とす。スザンナは人々が怪物と呼んでいる正体が、自分の姉だとわかります。精神を病み、凶暴化した娘を、両親は監禁していた、彼らが落雷事故で急死した後、アガサは妹との約束で、姪を引き取り、怪物がいるという噂を流して隔離してきたのです▼イーサンが持ち込んだ火が燃え移り、廃屋は炎に包まれる。救出に来たマイクとアガサは姪を連れて脱出しようとしますが、アガサはマイクだけを逃し「こうするのがいちばんいい」と、狂った姪とともに死を選びます。やるせないストーリーです。スザンナを見つけた姉が襲いかからなかったのは、妹だとわかったからでしょうか。ラブクラフトのほとんどの小説がそうであるように、ハッピーエンドからほど遠い。孤島も彼が好む舞台装置のひとつで、そこに住む住民は、地球人でない場合もあります。常軌を逸した地上の存在はラブクラフトの偏愛のテーマでした。人前に出せない屋根裏の狂女を最後まで面倒を見、死を与えるアガサ叔母にフローラ・ロブソン。長い顔が特徴で、「荒野の女たち」(ジョン・フォード)「黒水仙」(マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー)「北京の55日」(ニコラス・レイ)「嵐が丘」(ウィリアム・ワイラー)など、巨匠の大作・名作に出演し、脇を引き締めました。

 

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