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特集「偏愛力」

2017年11月18日

特集「偏愛力3」⑨
愛のそよ風(1973年 日本未公開)

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監督 クリント・イーストウッド

出演 ウィリアム・ホールデン/ケイ・レンツ

シネマ365日 No.2303

クリントの隠れ変態

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まるで冗談としか思えないクリント・イーストウッドの監督作品。セレブの不動産会社の社長フランク(ウィリアム・ホールデン)が、転がり込んできたヒッピーの娘エディス(ケイ・レンツ)と恋愛に陥る。フランクはエディスの父親の年齢だ。年の差を理由にフランクは踏み込めないでいるが、娘はそんなフランクを「根性なし」と罵り、積極的にアプローチ。めでたく結ばれる筋書きに変哲もなく、クリントが何ゆえ、こんな映画を作ったのかわからなかった。しかし、思えば連続殺人犯とか、幼児誘拐とか、変態と変質者の系譜ともいうべき作品の流れが、少なからずあったのが事実▼「白い肌の異常な夜」は、森の奥の閉ざされた全寮制女子校に、たったひとりの男として迷い込んだ兵士が毒キノコで殺される。クリントの監督初作品「恐怖のメロディ」はストーカー女に追い詰められる情事の顛末。「ダーティ・ハリー4」では当時の愛人ソンドラ・ロックを復讐の連続殺人鬼にした。「タイトロープ」は殺人犯をロスの闇に追ううち、神経がおかしくなりかけた刑事。「ザ・シークレット・サービス」は共演ジョン・マルコヴィッチ、と書いただけでうなずける変態の主人公。「チェンジリング」は壮絶な異常者の幼児虐殺でした。そんなことを思うと、年の差恋愛なんか、おどおどする初老の主人公を、クリントがからかっているようにさえ受け取れる▼ウィリアム・ホールデンは本作の前に「ワイルド・バンチ」でワイルドなギャングのリーダーを演じて低迷を脱したばかり。ヒッピーの娘が図々しく家に居ついてしまうのを、目尻を下げて「いいよ、いいよ」しているのは、恋愛映画と言うより、中年オヤジのなれの果てだよ、とでも言いたそうなクリントの辛辣な視線を感じる。彼が監督に専念したのは、本当はウィリアム・ホールデンの役をやりたかったが、「クリントめ、やっぱりあいつはこんな趣味だったのだ」と言われそうだったから監督するだけにしたのだろう(笑)。そう勘ぐりたくなるほど、マニッシュの典型みたいに見える彼が、実は複雑な陰影に歪んだ異端者を愛している、と私は思います。フランクは「相手に求めすぎない、縛らない」をルールにしている男。現在進行中の恋愛にもさっぱりしたもので、女は煮え切らない男に愛想を尽かし、別の男と結婚すると告げる。すると、フランクは「君を失いたくない」と甘い言葉。その一方でエディスと深入りしかけているのだから、どこまで調子いいのだか▼フランクのエディスに対する身の回りのお世話が実に念入り。夜中にやってきて「何か食べさせて。リンゴでいいわ」と形だけでも遠慮した娘に「おいで」台所に来てフライパンを握り、ササッとなにか作ってやっている。「一生のお願いがあるの。海を見たいの」「真夜中だぞ」「カリフォルニアまで車で3時間よ」「ついたら夜明けだ」言いながら車を出し、朝日の昇るロス沖を眺める高台で「おいおい」グウグウ眠っている女を揺り起こし「わあ〜」と感激させる。飲んで帰って来たら、酔っ払った女を担ぎ、部屋まで運んで靴をぬがせ、服を脱がせ、女はちゃっかり目を覚まし、フランクに抱きついてなるようになります▼仕事の邪魔をされても叱らない。朝飯は作ってやるし、虫酸が走るような行儀の悪い食べ方も注意しない。行き着いた彼女のセリフはこれ「フランキー、私が愛したら迷惑? あなたを縛らないし、見返りを求めないから」。結局フランクは女を受け入れ相思相愛となり、めでたし、のエンド。「一年はもつかな」と男「そんな考え方はダメ。一年もある、と思うのよ」と女。勝手にしたらいいだろ。

 

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