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特集「昭和のスター列伝」

2017年11月21日

特集「昭和のスター列伝2」吉永小百合②
男はつらいよ/柴又慕情(1972年 家族映画)

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監督 山田洋次

出演 渥美清/吉永小百合/倍賞千恵子

シネマ365日 No.2306

希少種 

特集「昭和のスター列伝1」

吉永小百合の悪口を言う人をあまり知りません。サユリストという巨大な円の中心に、デンと位置するのはたぶん団塊の世代ですが、彼らは吉永小百合もしくは彼女の映画とともに、青春を歩んだといってもいい。昭和30年代後半から40年にかけて、日本の高度成長と吉永小百合の青春映画は止まることを知らない勢いでした。吉永小百合が好きであろうがなかろうが、彼女の映画の1本や2本は誰しもが見ていた。特に彼女と同世代は、見ていないと話の輪に入れない、それもあったでしょうが、吉永小百合という女優に、抵抗感や違和感のなかったことが大きな理由だったと思えます。世の中には、あの人が好き、あの人の映画が好き、絵が好き、小説が好きと大っぴらに名を上げるのに、はばかられる人や作品があるものです。吉永小百合とは、彼女のファンだというのに、あたりに目を配り、声のトーンを落とさなくていい、文句ない優良品印だったのです▼彼女の出演した膨大な作品群を通覧して、改めて驚きます。そのひたむきさ、勉強好き、努力家、アタマのよさ、オール主演を張ってきた力量。今さらだけど、馴れ馴れしく「吉永小百合」とか「小百合」とか、わざと乱暴に呼び捨てにしながら、どことなく嬉しそうだった高校時代の男子女子を思い出します。彼らは「吉永小百合」という名前を口に出すことですら、夢をかき立てられたのにちがいない。確かに同世代の大女優と呼ぶにふさわしい女優は何人もいました。過去形で書いたのは、現役であるだけではなく、トップレベルを維持しながら進化し続けている数少ない一人が、まごうかたなき吉永小百合だからです。十代で日活の看板ドル箱女優となり、仕事に忙殺され通学できず、大学進学を断念…ではなく、大検をパスして早稲田の二部に進学する。大検と軽くいうが、働きながら合格するのは難しい。彼女は大学で学ぶ夢のかなった喜びと幸福を素直に表していました。いくら才能だ、ヘチマだといったところで、勉強し続けるやつには勝てない。吉永小百合とは、そもそも勉強することに何の抵抗もないという希少種なのです。彼女には誰にでも好かれる俗世間受けする顔がありますが、それと裏腹の、極めて厳しい希少種であり、もっというなら異人種に近い別の顔があります▼本作はギネス認定の長期シリーズです。今では「代表的日本人」とは内村鑑三の著書ではなく「寅さん」だと思う人の方が圧倒多数ではないでしょうか。東京は浅草の下町、人情あふれる叔父夫婦に妹さくら(倍賞千恵子)夫婦。隣家の小さな印刷屋の社長。そこへテキ屋を家業とする風来坊の寅(渥美清)が飄然と現れ、飄然と去る。その間にあるマドンナとの恋が一作ずつの物語です。山田洋次監督は頑固に基本を厳守する。それなのに、例えば寅さんが二階から降りてくる階段に、彼のステテコと腹巻きが見えただけで笑ってしまう。こうなるとワンパターンなどではなく、映画作りの信念と呼ぶべきです▼マドンナは歌子(吉永小百合)。気難しい小説家の父、母は離婚、父親は歌子の結婚に反対、何となれば「身の回りの世話をする者がいなくなるからです」と歌子はいう。吉永小百合は旅先で寅さんと知り合い、明るい屈託のない彼の性格に救われ、彼の実家である浅草の団子屋「寅屋」の温かい家族に溶け込む。寅さんはお熱となり、彼の一途な三枚目が「わかっちゃいるけど」笑ってしまうのだ。吉永小百合は27歳でした。彼女はこの年結婚します。それまで何人か名前の上がった恋人たちと、キレイさっぱり縁を切り岡田小百合となる。彼女が映画界で長く活躍するのは作品のチョイスのよさもあります。ラブシーンもベッドシーンもやりますが、間違っても「裏切り」と「淫乱」はやらなかった。自分の柄に合わないことを知っています。バックボーンは「愛と献身」です。ヒロインの役作り? むしろ映画へのそれではないですか。まさに「徹すること強し」において希少種です。

 

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