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特集「昭和のスター列伝」

2017年11月28日

特集「昭和のスター列伝2」吉永小百合⑨
夢千代日記 (1985年 恋愛映画)

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監督 浦山桐郎

出演 吉永小百合/北大路欣也/樹木希林/名取裕子/田中好子

シネマ365日 No.2313

みんなと一緒にいたい

★28-30‗昭和のスター列伝2-3

浦山桐郎監督と吉永小百合は「キューポラのある街」以来23年ぶりの顔合わせです。本作終了後、心不全で急逝した浦山の遺作となりました。浦山が55歳、吉永が40歳のときの作品です。神戸の病院で余命半年と告げられ、湯村に帰る余部の鉄橋という、おなじみのシーンで始まります。夢千代は母の代からの芸者置屋「はる家」の女将。母のお腹の中で浴びた胎内被曝のため白血病を発症しています。薄幸のヒロインです。入院を拒み「たとえあと半年の命でも、湯村で過ごしたい。みんなと一緒にいたい」と汽車の中で夢千代はつぶやく。この気持ち、わかりますね。あと半年だからこそ、自分が人生の足跡を記したホームグラウンドで生きたいのです。ちょっと横道にそれますが、吉永小百合の顔のどこがいいかと訊かれたら、眉です。彼女の意志の強さがよく表れた、くっきりした黒い眉。最近の女優はハリウッドも含め、ほとんど薄い細い眉が好みみたいですが、眉があるのは人間だけ、それがしっかり知性と自己を主張しているっていいと思うな。イングリッド・バーグマンやグレース・ケリーがちょうどそんな眉でした▼余部の鉄橋から身を投げる女性を夢千代は目撃します。警察が殺人事件として容疑者を逮捕した。夢千代は女性が飛び降りる際、両手を合わせていたのを見た、だから自殺であり、殺人ではないと刑事に言う。そのとき乗り合わせた旅役者の男性も目撃した、訊いてみてほしいと。この男性・宗方勝が北大路欣也です。夢千代のたっての願いにも彼は「見ていない」と繰り返す。宗方は父親を殺した罪で逃亡中、あと一ヶ月で15年の時効になります。だから警察の捜査に協力するなんてもってのほか。でも夢千代は宗方が好きになる。全編を通じて、本作は冗長でした。よほど桐山監督は体調が悪かったのか、見たの、見ないの、と繰り返してばかりで、しまいに(もうどっちでもええやん)と、面倒くさくなるところを救ったのが脇役陣です▼夢千代一家の芸者たちと旅役者・春川桃之助の小川真由美です。芸者の古株・菊奴が樹木希林、夢千代の体が「日に日に透明になっていく」と悲しみ、若い子のまとめ役となる。好きな男のため彼の妻の代わりに子を宿す兎(名取裕子)、スキー指導員に恋する紅(田中好子)、「兎ちゃんや紅さんみたいに綺麗やったら売れる芸者になれるけど」自分はそうじゃないと、日本画の大家のヌードモデルになる小夢(斎藤絵里)。夢千代は彼女らを可愛がっている。死ぬのなら「みんなと一緒にいたい」というのは彼女らのことです。旅まわりの女剣劇の座長の小川真由美が、娯楽のない小さな温泉町の、畳に座布団を敷いただけの、十人か十五人しかいない客が、それでも盛り上げてくれる場末の小屋で、のびのび座長をやる。そんなシーンが生き生きしています▼宗方と夢千代は結ばれるのですが、翌日夢千代の容態悪化、隠岐島から湯村に帰り、息を引き取ります。なんで夢千代が宗方に惚れたのか、もひとつ、掘り下げがないのよね。人を好きになるのなんか雷が落ちるようなものだから、掘り下げもヘチマもいらんってことかいな。バタフライで1000メートル泳ぐ、健康そのものの吉永が死期近い病人役で善戦。さすがの女優力を感じました。

 

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