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特集「ほんまか、アラン・ドロン!」

2017年12月2日

特集「ほんまか、アラン・ドロン!」②
刑事フランク・リーヴァ(上)(2007年 テレビ映画)

監督 パトリック・ジャマン

出演 アラン・ドロン/ジャック・ペラン/ミレーユ・ダルク

シネマ365日 No.2317

男の自負 

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アラン・ドロンのデビュー50周年記念として2007年11月8日、72歳の彼の誕生日からWOWOWで放映されました。正式なタイトルは「アラン・ドロンの刑事フランク・リーヴァ」です。ただのフランク・リーヴァではない、アラン・ドロンの、と冠が付いています。こうなるとジコチューも天晴れというべきです。つまらん謙遜なんかクソくらえ、気にいらん監督は更迭、脚本はよし、というまで書き直しさせる、アラン・ドロンが一枚噛んだら現場は地獄…そんな噂がでまかせと思えないところがアラン・ドロンでした。クリント・イーストウッドが脚本に新人をよく登用するのは、若手にチャンスを与える、それもあったでしょうが、力関係で明らかに自分より格下を選び、有無をいわさず書き直しさせられるからだと、これまたまことしやかに伝えられたのと同じ。おまけに「デビュー50周年」と銘打った限りは、アラン・ドロンの集大成にちがいない▼やっぱりテーマは刑事モノ。マフィアとの抗争に一匹狼フランク・リーヴァが姿のない敵に立ち向かう。25年前パリ警察を去った切れ者の刑事、フランク・リーヴァはポリネシアの孤島、エメラルド色の海で漁に出る毎日。なんだか「老人と海」ふうね。灰色の長髪を束ね、赤銅色に焼けたワイルドな海の男です。ちょっとお腹がですぎですが。急遽彼はパリに呼び戻される。警視総監となった親友、グザビエ(ジャック・ペラン)がフランクの弟ルネが殺害されたことを告げたのだ。フランクは警視となって復職する。部下及び署長はいきなり現れた正体の知れぬ、年取った男を冷たい視線で迎える。DVDにある本作のコピーは「蒼き瞳の刑事(刑事にサムライとルビがふってある)、暗黒街(これにはパリとルビ)、マフィアの陰謀に立ち向かう孤高の狼、宿命に揺れ動くパリを、鮮烈なサスペンスと哀愁のロマンで描いた大作ドラマ!」何これ。パリ、暗黒街、孤独、狼、みな過去のアラン・ドロン映画のタイトルじゃない。わけても孤独は、アラン・ドロンの最も好きなキャラなのだけれど、果たして彼は孤独か。少なくとも本作では、過去に女性に愛され娘をなし、元カノに温かく迎えられ、次の恋人となるべき女性が待機中。元カノはもちろんミレーユ・ダルクだ。未来の恋人は美貌の警察署長である。一体どこが孤独や!▼アラン・ドロンは72歳になっていた。セリフもアクションも抑え気味だというのに、一言のセリフがなくても、ベッドに寝たきりの役でも、この人アラン・ドロンだけは自分を目立たせる術を自家薬籠中としている。たとえていえば夜のパリを歩く。まるで「死刑台のエレベーター」のオマージュのように。黒いズボンに白いワイシャツ。「冒険者」のマヌーへのオマージュか。遠くを見る灰色の瞳、銀色の豊かな髪、頬の皺は微笑とともにやさしさをたたえ、30代から彼のトレードマークだった眉間の縦ジワは、時間と経験に洗われた男の思索を思わせる。こういうことをやらせたらアラン・ドロンにセリフなんかいらないのだ。72歳になって、視線の揺らぎひとつに数え切れない意味を与え、無言を通したままで勝負できる俳優が何人いるだろう。額にかかる銀髪だけで、絵になる役者がどこにいるだろう。お腹も出た、贅肉もついた、七面鳥のように喉もたるみ、ボディなしにやってのけた走りも跳躍もできなくなった。それらはみな遠い昔になってしまった。アラン・ドロンはもう歩くことしかできなくなった。だから彼はゆっくりと歩く。それだけでアラン・ドロンだとわかる歩き方で彼は歩いてき、これからも歩くのだ。俺をよく見ろというかのように、スタイリッシュで堂々とし、ひるむことなくドアップで撮らせた容貌に、みなぎる鋭さと艶っぽさは、50年間映画界のトップを疾走した、男の自負がきらめいている。