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特集「ほんまか、アラン・ドロン!」

2017年12月6日

特集「ほんまか、アラン・ドロン!」⑥
弁護士デュナンの衝撃(1993年 日本未公開)

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監督 ジャック・ドレー

出演 アラン・ドロン

シネマ365日 No.2321

劇場未公開は当然 

06-08_ほんまかアランドロン-2

アラン・ドロンがやり手の弁護士デュナンです。

テレビが「リヨン市の全市民がフレデリック裁判に釘付けです」とニュースを伝える。「なぜ裕福な家の息子が両親を殺害したか、関心はその動機にあります。休廷に入ってはや4時間。被告の運命はデュナン弁護士の抗弁にかかっています。デュナンは期待を裏切らないでしょう。形勢逆転は彼の得意技です。華麗な反大弁論でフレデリックを無罪に導けるか、デュナン弁護士は釈放を主張しています」で、期待通り無罪を勝ち取る。被告側はバンザイだが、息子だけは浮かぬ顔。デュナンに自分は両親を殺したと告げる。デュナン愕然。悪夢の始まりです。ラストでデュナンは息子にこう言っている。「裁判には二つの意味がある。美徳と処罰だ。君の場合、処罰が必要とは思えない。人生は短い。私は一晩悪夢を共有しただけだが、君は一生逃れられん」そう言って去る。どういうことよ。人二人を殺したやつを野放しか。一事不再理とはいえ、その気になれば別件逮捕の道だってあるでしょう。これじゃ弁護士が自分の不手際を闇に塗り込めたのと一緒じゃないですか▼監督はジャック・ドレーです。「ボルサリーノ」「太陽が知っている」「フリック・ストーリー」「友よ静かに死ね」など、アラン・ドロンと組んだ佳作は多い。本作でアラン・ドロン58歳、ドレーは64歳。老け込む歳ではなく、まして舞台は監督の生まれ故郷リヨンだ。ローマ帝国ガリア属州の中心地、古くから繁栄し、石畳の残る風格ある市街、リヨンの象徴であるサン・ジャン大教会の遠景がノスタルジックだ。この街イチのキレ者弁護士が、20歳そこそこの息子に振り回されているのだ。デュナンは「君は怪奇小説の読みすぎだ。デタラメもいい加減にしろ」と再々、自分自身を軌道修正しようとするかのごとく怒鳴る。息子は能面のような顔に変化も見せず、隠し扉を開けて床下の部屋を見せる。懐中電灯に浮かびあがった白骨は、10年前に失踪したリヨン随一の事業家だ。息子は母親とセレブの情事を12歳の時に知った。二人がベッドにいるとき、たまたま予定より早く帰宅した父親が現場を目撃し、セレブ男を燭台で殴り殺した▼母親は仰天したが父親と一緒に男を地下に放り込んだ。12歳の事件がトラウマになっている…これは本人の弁。そして1年半前、息子は両親を殺害した。動機は母親を憎んでいた。自分は殺されたセレブと母親との情事によってできた子だった。だから継父が殺したのは息子の実父である。「僕は彼を愛していた。(骨は)綺麗だろう。チリ一つ落ちていない。僕が愛情こめて手入れしていたからさ」。ああ、気色悪い、このサイコ息子。デュナン沈黙。トラウマだかなんだか知らないけど、この息子と来たらどだい態度が悪いのだ。自分の収監中、家を管理していた召使いに対する傲慢さ。威張り散らさないとソンみたいだわ。ブルジョワを不倶戴天の敵とするクロード・シャブロルが監督していたら、とっくにメタメタにされていたわよ。恋人の女も女ね。馴れ初めはベランダから見かけた彼女に息子が一目惚れしたこと。パンティ一枚のスレンダーな彼女は理想の女性だったらしい。高精度の望遠鏡をベランダに設置して覗き、女のアパートを地図で突き止め、ある日呼び止めてデートする。女は女優の卵で、劇団のリハーサルがある。両親が死ねば遺産は息子のものだ。男の金を当てにするような女ではなかったにせよ、ほだされ、偽証して息子のアリバイを作ってやる。自立して好きな仕事もある、しっかりした彼女が、偽証を頼んでくるようなやつを、ノーマン・ベイツ級のサイコ男だとわからなかったのがむしろ不自然。弁護士デュナンもデュナンだ。彼は真実を究明する気がないのだ。なぜか。若造にたぶらかされ、まんまといっぱい喰わされたからよ▼ミスキャストね。アラン・ドロンとは内面の暗さに生きる男でこそ光芒を放つのであって、功なり名遂げた花形弁護士は柄じゃないのよ。この映画には腐ってもアラン・ドロンという覇気がないわ。本作は劇場未公開だった。つまり日本で買い手はつかなかったのだ。いくらアラン・ドロンに甘い日本でも、当然よ。

 

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