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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年12月11日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力6」③
ブラッディ・ツイン (2016年日本未公開)

監督 コーディ・キャラハン

出演 アラーナ・レビアージ

シネマ365日 No.2326

案外いい映画

9-18_美しい虚無6-1

劇中女医がヒロイン、ヘレン(アラーナ・レビアージ)に、MRIの映像を説明するのに「脳に腫瘍があるの。その中に未発達と思われる脊椎がある。非常に珍しい例だけど多分バニシング・ツイン・シンドロームよ」。これが本作のテーマです。バニシング(失踪した)ツインとは、双子を妊娠したが胎児は母体で死亡し、普通は子宮内に吸収されるが、稀にもう片方の、残った胎児に吸収される例がある。ヘレンは事故で重症になり、治療中投薬された薬物が、脳の遺伝物質を発達させている、「手術しなければ。我慢して消えるものじゃないのよ」と女医はいった。我慢とは、ヘレンは事故以来幻覚に悩まされ、目が覚めると昨夜のことを覚えていなかった。友だちのモリーとは姉妹同様だ。彼女がとてもいいやつで、家族も友だちもいないヘレンのよき友であり、理解者だ。モリーは女優の卵で舞台稽古に精を出している。ある夜ヘレンがタオル一枚で稽古場に現れ、足が血まみれだった。なぜそうなったかも覚えていなかった▼ジャケ写にエロティック・ホラーなんて書いてあるけど、そんないやらしい内容ではありません。うんと真面目な映画です。扇情的な邦題はやめてもらいたいわね。手術は3日後と決まった。話が前後するが、ヘレンの母親は娼婦だった。レイプされ妊娠した。大きくなったお腹にハサミを突き刺し自殺を図ったが、胎児は助かった。それがヘレンだ。ヘレンは母親が自殺したモーテルの部屋の前に来る。「お母さんが自殺したところなんて、気味が悪い」というモリーに「私にとっては懐かしい場所」だという。モリーはその気持ちがわかる。「愛している、ヘレン。大好きよ」「私もママみたいになる?」「あんたは別よ。手術なんか楽勝よ。そうしたらジャンヌ・ダルクみたいなあんたに戻っている」「お母さんのお腹にいたもう一人が、私に移ったなんて」モリーは笑い「3人で撮ろう」。ケータイでヘレンと自分を写す▼しかし、3日後に自分が排除されると知った双子は、ヘレンを乗っ取ろうと、ヘレンの意識の中でパワーを増大させる。双子はヘレンより邪悪な気性で、モリーの彼氏のエドを誘惑する。口から黒い紐を吐き、鏡には口紅で「もうすぐ行く」と書き込みがある。ヘレンは自分が動けないよう、ベッドに縛り付け「あと3日のりきったら終わるのよ」。そう言い聞かせるが…。ヘレンの意識が交互に切り替わる。双子になった時は邪悪で淫乱だ。モリーはヘレンの部屋にある絵を見て驚く。「あいつを殺せ」と乱暴に書きなぐった暴力的な絵だ。「やばいよ、ヘレン、治療しなくちゃ。脳じゃない、心の病気だよ」「モリー。エドと別れて。あいつはろくなやつじゃない。軽い男よ」「?」モリーの目の前で、ヘレンの人格が入れ替わる。かろうじて残るヘレンの意識で「モリー。これは私じゃないの。逃げて」▼もう一人のヘレンがエドを殺害した。ナイフでグサグサに刺し、血で「私はここにいる」と書く。いっぽうモリーは放心して一緒に写したヘレンの写真を見ていた。気がつく「これはヘレンの顔じゃない」。モリーはヘレンの部屋に自転車で走った。「ヘレン、私が助ける」「戻って、私の中に彼女がいるの。彼女と一緒に死ぬべきだった。今日限り彼女を止めるわ。ごめんね、モリー、大好きよ」▼ヘレンは大量の睡眠薬をアルコールで流し込む。死のうとするのだが、双子もまた、強力なパワーでヘレンから抜け出そうとしていた。このシーンが、デヴィッド・クローネンバーグを思わせる迫力です。双子はヘレンにこう言っている。「母親に似てあんたは弱い。母親は私を殺そうとしたからあんたの中に隠れた。つまらない人生だった。でもやっと出られる。今度は私の番よ」ヘレンは自分の腕にナイフで切り込みを入れ、ミリミリと裂け目を引き裂き、次は頭にナイフを入れ、髪ごとズルッと皮膚をめくるのです。駆けつけたモリーは血まみれの筋肉の塊になったヘレンを見る。「ヘレン、何をしたの」「彼女がいる。双子の姉妹よ」「彼女は存在しない。薬を飲んだのね」「モリー、早く逃げて」「あなたを見捨てない、二度と」でも脱皮した双子の力の方が強かった。首を絞められたモリーは手に触ったナイフで「許して」いいながらヘレンの首を掻き切る。モリーはヘレンの死体を抱き上げ顔を確認する。元の表情に戻っているのか、邪悪なままで死んだのか、監督はいちいち映さない。案外やる監督だと思います。緊張を維持していて、80分が長く感じられました。