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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年12月17日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力6」⑨
トールマン(上)(2012年 ホラー映画)

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監督 パスカル・ロジェ

出演 ジェシカ・ビール

シネマ365日 No.2332

ヒロインの心の空虚 

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ヒロイン、ジュリアのやったことは、いくら彼女なりの信念に基づいたとしても犯罪です。しかし誘拐した18人の子供たちの実の親に追跡を諦めさせるために、子供たちが死んだ(自分が殺した)ことにして死刑を引きうけるのには、あまりにもジュリアの一生が空虚だ。彼女が理想とした現実はありえないものだったと思うと、彼女のとった行動が切ない。ジュリアに扮したジェシカ・ビールは、パスカル・ロジェ監督が初めから彼女の主演を望んでいたというキモ入りで、ジェシカにしても代表作となりました。力のこもったいい映画です。ジュリアは住民に尽くす誠実で有能な看護師です。女を痛めつけるのが好きなロジェ監督は、「マーターズ」に続いて、ヒロインをメタメタにしています。それはあくまで問題定義のための映画的状況であり、どう受け止めるかはお任せする、こういう提出の仕方は、ミヒャエル・ハネケの手法と似ていますが彼はインタビューで、名指しでハネケが大嫌い、彼の「ファニーゲーム」はホラーファンを侮辱した作品だと斬って棄てました。「近親、相食む」のでは?▼「マーターズ」と同じく、本作も二重底です。そうくるか、というどんでん返しが待っています。冒頭の字幕「米国では年間50万人の子供が失踪している、大抵は数日中に発見されるが、1000人は跡形もなく姿を消す」。コールド・ロックは6年前炭鉱が閉鎖され町はさびれきった。ジュリアの診療所に妊婦が担ぎ込まれお産する。「この町では望まれない子供が産まれることがある。人々は大騒ぎせず何とかやっていく。ちょっと悲しいがもっとひどいことが起きている。望まれた子であっても突然消えるのだ。何かが町から子供たちを連れ去っている。人々はその何かにトールマンと名付けた」導入部がいいです。ジュリアは自宅に友人のクリスティーンと住んでいる。デヴィッドという男の子がいる。平和な夜をジュリアはデヴィッドと過ごし寝かしつけた。夜中、異常を覚えたジュリアは階下に降りる。クリスティーンが縛り上げられ、猿轡を咬まされて血だらけで倒れている。ジュリアは窓に黒いフードを被った人影が子供を抱いて逃げるのを目撃する。デヴィッドが誘拐された。飛び出したジュリアはトラックの後を追い、後部ドアのレバーをつかみ、地べたに引きずられ窓から侵入すると犬に噛まれ、車は横転、デヴィッドとトールマンは脱出、遅れてジュリアも這い出す。森を歩き沼地にはまり、腕も足も傷だらけ、「マーターズ」モードになってきました。力尽きて道に倒れた。車が近づきジュリアを助けたのは誘拐事件を担当するFBI捜査官のドッドだ▼ドッドは町外れのダイナーにジュリアを預け捜査に出かけた。ダイナーの女主人トリッシュはたむろする常連客からジュリアを離し、手当てして二階で休ませた。客たちの不気味な会話が聞こえてくる。「彼女の計画を確認してこい」「署に連絡を」「子供の写真を見ている。疑っているぞ」誰かが二階を覗き「逃げたぞ、森だ」。ダイナーにいた客達は総出でジュリアを追跡するのだ。こいつら誘拐犯とグルなのだ、と思う。ジュリアは森の中で廃棄病院のような建物に行き着く。ドアの一つから明かりが漏れ、デヴィッドがいた。デヴィッドはジュリアを見ると逃げた。トールマンが来てジュリアを殴りつけた。デヴィッドはトールマンを「ママ」と呼んだ。トールマンこと、ママはデヴィッドを抱きしめ「全部終わったわ。もう大丈夫よ。おうちに帰れるわ。大丈夫だからね」。そう呼びかける彼女は、子供を誘拐された母親のひとり、ジョンソン夫人だった。これが前半部の逆転です。18人もの子供の誘拐犯はトールマンではなく、ジュリアでした。開いた口がふさがらなかった、鮮やかなどんでん返しでした。

 

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