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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年12月18日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力6」⑩
トールマン(下)(2012年 ホラー映画)

監督 パスカル・ロジェ

出演 ジェシカ・ビール

シネマ365日 No.2333

理想と犯罪 

9-18_美しい虚無6-2

誘拐された子供の母親、ジョンソン夫人はジュリアを縛り上げ「子供に忘れられた母親の気持ちがわかる? 子供には私がいなくなったと洗脳したのね。目的はなに? 昨日も息子を奪った男、トールマンを探しに森に入った。延々と歩き続け、偶然あなたの家に着いた。息子がいた。信じられなかった。トリッシュ(ダイナーの女主人)に会いにいった。彼女は消えた子供たちの祭壇を作りローソクを灯して祈っている。私を変人扱いしない。そこにあなたがいて、天使のような顔をして、私にコーヒーを出してくれた。不安になった? 罪悪感は感じているの? 世界一冷酷な女だから誘拐した子供の母親と対面できるの? トリッシュは私の話を信じなかった。それでも私が話し続けるとあなたを疑い始めた」ジョンソン夫人はジュリアの家に侵入し息子を取り返した。「他の子供はどこにいるの。言わないとあんたを殺すわよ!」「トールマンに渡した」「ふざけないで。誰なの?」「噂の男よ」▼縄を解いたジュリアは夫人を殴りつけ、逃げたデヴィッドを追う。ジェニー(口がきけない娘)がデヴィッドを捕まえジュリアに渡し、トラックで家に戻った。クリスティーンが迎える。ジュリアは「時間がない。町中の人がここに集まるわ。おしまいよ。ジェニー、帰って。口外しないでね」。ジェニーはメモ帳に「クリスティーンが彼を呼んだ。彼のところへ連れていって」と頼む。ジュリアはクリスティーンに「ジェニーにばれた。彼に会いたいと」「この子を彼に渡したら逃げるわ」ジェニーはまだ待っていた。「彼にあなたの名前と住所を教えたわ。口外したら彼は別の目的で来る。想像もできない目にあわされる。帰りなさい」。ここまで言われてもまだ全体像がつかめません。複雑な構成です。ジュリアはソファで眠った。警察が踏み込んだ。クリスティーンは首を吊って自殺していた▼FBIのドッド捜査官の取り調べが始まった。ジュリアは言う。「鉱山が閉鎖され町は失活、子供たちが貧困の犠牲になっている。なんとかしなければと」「子供たちを部屋に閉じ込めたのか」「子供の部屋には本もあるし音楽も聴ける」「あんたの外出中はクリスティーンが世話を?」「はい」「あんたの単独犯行か」「はい」。失踪した子供たちの手がかりは皆無だった。広大な森と廃坑になったトンネルの迷路で、18人の子供を探すのは至難だった。最後の行方不明者がデヴィッドだった。ジョンソン夫人ジュリアに面会した。ジュリアがつぶやく。「どこでも同じよ。敗北と痛みが循環している。体制は機能していない。支援はどこからも与えられない。子供たちは可能性と希望に満ちている。伸ばすべきなのにできていない。親と同じように、壊れた人間を育てている。悪循環を断ち切らねばならない。多くの場所で試みてきたけど、何も変えられなかった」「ジュリア、答えて。子供たちは死んだの?」うなずく。「私は全員の母親だったけれど、全員は守れなかった」「子供たちはどこに」「あらゆる場所に」▼場面転換。ジェニーが立派な家の夫人に対面している。ジェニーを連れてきたのはトールマンであり、ジュリアの夫だ。死んではいなかった。ある目的のために死んだことにしたのだ。彼らは、仮に「子供を救う組織」と呼ぶが、そこに属し、貧しい子供たちを誘拐して、子供の欲しい富裕層に養子として斡旋していた。それが社会も親も救えない子供たちを助ける方法だと固く信じている。セレブの夫人は「ジェニーの行動で我々の存在が明るみに出ないように」男に念を押す。そして金を渡そうとするが男は受け取らない。「あなたのお金は要らない。彼女(ジェニー)を救った女性たちは命と自由を犠牲にしました」「救われるのはジェニーが最後?」「あの地区からは」▼このセリフが本編の冒頭のナレーションと呼応します。「全米の子供の失踪者年間50万人のうち、ほとんどは発見されるが、1000人は跡形もなく消える」。数ヶ月後、検察はジュリアに死刑を求刑した。ジェニーの母トレイシーはドッドにいう。「娘をさらったのはジュリアじゃない。別人よ」「ジェニーは家出だ。誘拐じゃない」。ジェニーの独白で整理しよう。「ジュリアは最後の子供を夫に託したあと、モンスターとして町に残ると決まっていた。罰を受けて秘密を闇に葬るために。私を養子としてくれた母は世界を見せてくれる。いうことを聞いて母を喜ばせたい。私の世界は変わった。頑張るよう励ましてくれる。新しい母は、世界は美しいという。毎朝、すべてを捨てて家に逃げ帰ろうと考える。でもこれは私が望んで手に入れた生活だ」ジェニーは町の将来に限界を感じ、ジュリアの裏の仕事を知って、トールマンに違う世界に連れだしてほしかったのです。幼児誘拐から、映画はガラッとトーンを変え、社会的貧困が事件の真因であるという重苦しいテーマになります。でもどんな信念があっても、どんなに豊かな暮らしと未来を子どもたちに与えられるとしても、こんなこと勝手にしちゃいけないわよ。ジュリアは犯罪者かもしれないけど、気の毒だわ。彼女の描いた理想は、現実の社会で受け入れられるはずのない夢だったもの。