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特集「銀幕のアーティスト」

2017年12月27日

特集「銀幕のアーティスト7」④
ファブリックの女王(下)(2016年 伝記映画)

監督 ヨールン・ドンネル

出演 ミンナ・ハープキュラ

シネマ365日 No.2342

マリメッコは問題ない 

銀幕のアーティスト6-1

初めてのショーの幕が上がった日。それまで木綿の服を大規模に紹介するショーなどなかった。大胆な色とデザインで染め上げた、自作の服を着たアルミが舞台に挨拶に立った。「マリメッコは手作業でプリントされた布で、ドレスや小物などを少量ずつ生産する会社です。布のデザインは才能あるアーティストに任せました。ユニークで特別な、大人の遊び着や、カジュアルウェアも用意しています」服は飛ぶように売れた。女たちは自分たちの束縛を解放する意志とサインをマリメッコの「シンプル・タイムレス・ユニセックス」から感じた。マリメッコとはフィンランド語で「小さなマリ」。Mariを組み替えるとArmiになる。マリメッコとは文字どおりアルミ自身でした。事業が軌道にのると同時に、アルミはプレッシャーと仕事アディクトにはまっていく。アルミを支えるデザイナーや企画担当はすべて女性でした▼アルミの工房に、サンドイッチを売りに来ていたレーナをアルミは呼び止めた。「服装は人柄を表すわ。あなたは真面目でセンスがいいわ。一緒に働かない?」次の日からレーナは従業員となり、横暴ともいえるアルミにはっきりモノをいう人材としてアルミは気に入り、マリメッコの経営危機のときもそばにいてともに仕事します。レーナが早い目に出勤した日。工房にはすでにメンバーが作業していた。「どうしてこんなに早く来られるの?」一人がシレッと「家に帰っていないからよ」「午前2時よ」「ここじゃ時間の設定はないの。企画会議になったらこんなのフツーよ」。残っているほうも来るほうも、どっちもどっち。半分「魔」の憑いた女たちが力を競う、熱気渦巻く工房でした。アルミの傍若無人は相当なものでした。レーナが「会議の始まりが45分も遅れているわ。アルミは何をしているの?」「電話よ」レーナはズカズカとバスルームに行き、湯の中で長話のアルミに会議に出てくれと頼む。アルミは電話をやめない。レーナは服と靴のまま風呂にドブン。「なにすんのよ!」「会議です。ここで打ち合わせしましょう」アルミは大笑い▼アルミは会社と従業員を守ろうと懸命だった。「家族より会社が大事なのね」娘や息子は我慢ならない。アルミは言い返す「男は金の勘定ばかり。私は純真で理想家の従業員たちが好きなの」「パパはお金のやりくりで必死だわ。お母さんがクビになればいいのよ!」。夫が女性とレストランにいた。アルミも男といた。アルミはつかつかと夫のテーブルに近づきワインをぶっかけた。自分の不倫は棚に上げてだ。マリメッコ創業の「アイデアはどこから」という記者の質問に「私たちが作っているのはライフスタイルよ。今日は何をするの。明日は。暮らしを楽しむには。女たちの答えをひたいや首筋に感じるわ。三つ編みの子供たちがカレリアの踊りを裸足で踊っている。人生は糸を紡ぐようなものよ」。それを聞いている従業員が「アルミがまた記者相手におとぎ話を喋っている」▼夫の浮気を知ったアルミは自殺未遂を図る。本気だったか狂言だったかわからない。命は取り留めたが現場責任者は工房で言った「アルミは復帰できないと思う。レーナ、あなたの判断で仕事を進めて」。そこへパンティ一枚のアルミが入ってきて両手を広げ「服を着せて。病院から帰ろうと思ったら服がなかったわ。社長の着る服がないとはどういうこと!」。アルミは復帰した。ますます有名になりますます孤独になった。アメリカを征服すると決意し、ニューヨークに進出した。働く女性たちの拠点を作ろうと「マリメッコ村」を企画した。「暴走だ。アルミの酒と浪費を控えさせろ」経営陣は騒いだが止まらない。夫や子供たちとの不協和音と借金は増大した。アルミの杜撰な運営にアメリカの注文は止まりマリメッコ村も頓挫。従業員100〜150人をリストラしなければならない。「倒産する前に君が去れ」夫は引導を渡す。ついに「マリメッコ社員は全員ホールに集まれ」招集がかかった。みなリストラの発表だと思った。社長は姿を現さず「マリメッコは問題ない」大胆不敵な伝言を残し、ベネツィアに飛び男とゴンドラに乗っていた▼アルミの死後マリメッコは買収された。ヨールン・ドンネル監督とアルミの出会いは1966年。友人の仲介で一時期マリメッコの役員となる。会社を去ったのちもアルミとは友人であり続けた。映画化は50年来の構想だった。「エネルギッシュで心温かな女性。女性のパイオニア的存在であったアルミを映画にしたかった」と語っている。