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特集「銀幕のアーティスト」

2017年12月28日

特集「銀幕のアーティスト7」⑤
ハウス・オブ・ヴェルサーチ(2013年 日本未公開)

監督 サラ・シュガーマン

出演 ジーナ・ガーション

シネマ365日 No.2343

ヴェルサーチの血

銀幕のアーティスト6-1

ジャンニ・ヴェルサーチがミラノに一号店を出したのが1978年。三兄妹が力を合わせ有名ブランドに発展した。経営は長兄のサント、デザインは次兄のジャンニ、妹のドナテラはスタイリストにマーケティング。1997年、ジャンニが殺害され、経営は暗礁に乗り上げる。引き継いだドナテラは奮戦するが兄の「天才」がプレッシャーになり、経営は行き詰まる。酒とドラッグに溺れ売り上げは6割減。幹部従業員の離職が相次ぎ、ドナテラは家族からも見放される。療養所に入った彼女はそこで入所者たちから、女性の求める服のナマの声を聞く。酒とドラッグを絶ち、現場復帰。兄の亡霊から脱却した彼女のデザインは市場の共感を呼び、ヴェルサーチは再浮上、アパレル、バッグ、靴などに商品を拡大、現在に至る。悪戦苦闘のすえ、絶望から再起したヒロインを、ジーナ・ガーションが演じます▼ドナテラが来ると工房が明るくなる。スタッフたちは「お兄さんと大違いだ。彼は暴君だよ」。工房の中はいつもジャンニとドナテラの口論が絶えない。「僕が太陽でお前は月さ。反射して輝いているだけ」「何が太陽よ。老いぼれのゲイのくせに。私が学校をやめて会社を手伝っていなければ兄さんなんてただのお洒落な道楽者よ」。長男は「株式公開は無視するのか、お前とドナテラはそっくりだ」と、兄妹は意見が合わない。長兄は堅実、下の二人は金遣いの荒い暴君気質。モデルにはマドンナ、ダイアナ元妃たちが妍を競っていた。ジャンニはマイアミの自宅でシリアルキラーに殺害された。コレクションまで6週間。何もかもジャンニが仕切っていた、全ては彼の頭の中だ。ブランドの維持は外部に頼めない。ジャンニの一番の理解者だったドナテラに白羽の矢が立つ。遺言書によればドナテラの娘、つまりジャンニの姪アレグラが相続人だった。ゲイのパートナーにはミラノ、マイアミ、ニューヨークなど別荘地での居住権に加え、月々5000万リラの支給など好条件が明示、しかしドナテッロとサントにはゼロ。献身的に支えてきたドナテッロは愕然。なぜ「兄は私を嫌うの?」失意の心にむちうってコレクションに臨む▼しかし力不足はどうしようもない。ヴェルサーチはダメだと風評が出回る。パパラッチが次期後継者のアグレラを追い回す。夫と娘は仕事に追われる母親を批判する。ついに離婚、子供たちは夫とニューヨークへ。兄妹を母親代わりに見てきた叔母ルチアにラクウェル・ウェルチだ。「亡霊を追いかけていちゃいけない。あなたの言いたいことをデザインに込めれば女性は飛びつく」そう励ます。「ドナテラは甲羅を外されたロブスターだ」「ヴェルサーチの遺産を食い潰した」「破産寸前だ」従業員にはヘッドハントが相次ぐ。弱り目にたたり目だ。大手デパートに引き抜かれたという古参社員に、ドナテラは自分の金時計をはずし「引退記念にあげるわ」「引退じゃない、ここを辞めるだけよ」「私と働いた後は引退も同然よ」。今さらながらドナテラは兄の才能に打ちのめされた。工房に来るとジャンニが歩き回って自分を嘲笑している。アレグラが18歳となり正式にヴェルサーチを相続した。「おめでとう、私のボスね」そういう母親に「ママが自滅するのをこれ以上見ていられない。施設に入って。断ったら家族全員がママと縁を切る。永遠に」ドナテラは自家用機で施設に連れていかれた▼リハビリセンターで一夏を過ごしたドナテラは、酒とドラッグ依存から脱却。工房に復帰した。「ここの一人一人におわびしたい。許してもらえるなら償いたい。やたらクビにしたり、怒鳴り散らすのも卒業した。これは今を生きる女性たちのためのコレクションよ。力強くセクシーで、胸を張ってたくましく生きて欲しいの」。サントに訊く。「なぜ債権者たちは私を会社に戻したと思う?」「ハウス・オブ・ヴェルサーチのネームバリューさ」「その通り。でもこれが評価されなければ身を引くわ。ジャンニが好んで求めていた形のコピーじゃない。私の形よ」。大胆でワイルドな発表に業界は湧いた。ヴェルサーチはプレタポルテのあと、オートクチュールに復帰、高評価を受けた。ドナテラはブランドを維持し、評価を高め、2015年、アイコンにマドンナを起用した。ドナテラは今もヴェルサーチの専任デザイナーとして活動している。