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特集「銀幕のアーティスト」

2017年12月29日

特集「銀幕のアーティスト7」⑥
セッション(2015年 社会派映画)

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監督 デミアン・チャゼル

出演 マイルズ・テラー/J・K・シモンズ

シネマ365日 No.2344

感動の中に置き去り 

銀幕のアーティスト6-1

アメリカの名門、シェイファー音楽学院のフレッチャー教授(J・K・シモンズ)は、最高の指揮者です。練習室でひとりドラムを叩いているニーマン(マイルズ・テラー)という学生がいました。教授は自分のバンドの練習に参加するようにいいます。「スタジオ・バンド」はシェイファー音楽院の最高峰です。練習初日、9時きっかりに姿を現したフレッチャー。彼の入室とともに異様な緊張が走るスタジオ。練習が始まる。「音程の外れている者がいるな。名乗りを上げろ。いないのか。私の耳がおかしいのか。もう一度。私の耳じゃない。メッツ、なぜ外れている。出て行け。音程よりメシが大事か。足手まといも限界だ。デブ野郎」フレッチャーの指揮が止まる。「メッツはずれてない。お前だ。エリクソン。だが自覚のなさが命とりだ」。厳しいなんてものじゃない、差別用語オンパレードの罵詈雑言が浴びせかけられ、ニーマンは椅子を投げつけられた▼「なぜ椅子を投げたと思う? なんてことだ。低能を入学させたとは。テンポがわからん? 譜面くらい読めるか」あまりの侮蔑にアンドリューの頬に涙が流れる。「あきれた。お前はお涙頂戴男か。私が虹色に見えるか。お前はクズでオカマ唇のクソ野郎だ。女の子みたいに泣いて、私のドラムがヨダレまみれだ」。それでもアンドリューはレッスンに耐えた。ジャズ・コンテストの日、暗譜していない友人に代わり、アンドリューが叩く。フレッチャーに認められ、コア奏者となる。これが地獄の一丁目だった。ある日、スタジオに来たフレッチャーが過去に在籍した生徒の事故死を告げた。ショーン・ケイシーという学生だった。昨日事故で亡くなったという。涙を流すフレッチャー。怒りと侮辱以外の感情を初めて示す。でもそこまで。次の大会の出場者を決めるのに、ドラマー三人に「私がいいというまで最速で叩け」数時間に及ぶ演習の後、ドラマー達の手から流れ落ちる血でドラムは血まみれ。アンドリューただ一人が最後まで演奏した。大会当日、トラック事故にあい車が横転、執念で会場に来たニーマンは怪我のしびれからスティックを床に落とす。演奏は惨憺たる結果。「お前は終わりだ」冷酷に宣言するフレッチャー。ニーマンは前後の見境を忘れ「クソ野郎、殺してやる」殴りかかり退場、ついで退学▼弁護士によってショーン・ケイシーは事故死ではなく首を吊って自殺したのだとわかる。フレッチャーの過酷な練習にウツとなっていたのだ。ニーマンの証言でフレッチャーをやめさせることはできないか、二度と彼の犠牲になる学生が現れないようにと、ショーンの両親が弁護士に訴えた。ドラムへの情熱が消えていたニーマンは匿名で証言し、フレッチャーは辞任させられた。カフェのアルバイトをしていたニーマンは、ジャズクラブでピアノを弾いているフレッチャーに会う。「厳しいレッスンは次のサッチモ、チャーリー・パーカーを生むためだ。誰も私のことを理解しない。英語で最も危険な言葉はこの二つだ。Good job(上出来だ)」そしてニーマンを自分のバンドのドラマーに誘う。スカウトたちが集まる音楽祭当日、フレッチャーはニーマンにだけ嘘の演目を与え、実際に演奏するのは別の曲だった。フレッチャーはニーマンの顔に近づき歯を剥いていう「私を舐めるなよ。密告したのはお前だな」▼フレッチャーの復讐だった。ドラムは叩くが、隣のバス奏者は「なにやってんだ」。焦るニーマンのドラムは失走。すごすごとステージを去る。フレッチャーが意地悪く北叟笑む。ところがニーマンはフラフラとステージに戻りドラムに座り、フレッチャーを無視してドラムをソロで叩き始める。ここからラストまでに9分、憑かれたようなニーマンの、狂気のドラムが炸裂する。ニーマンの勢いに引きずられたように、バスが、ピアノが続き、ついに「キャラバン」のイントロが流れる。叩き続け「ドラマーズ・ハイ」のニーマンはもはや意識も朦朧、精も根も尽き果てようとするとき、フレッチャーが近づき指揮、というより(抑えろ、スローだ、そうだ)と慰撫するような、励ますような、手真似に近い。残る力を振り絞ってニーマンはフレッチャーの誘導に従う。やがてドラムソロは終わりを迎え、管楽器による「キャラバン」の旋律が始まる。ここでスクリーンはぶった切るようにエンドロールに変わる。デミアン・チャゼル監督は、観客を感動の中に置き去りにする。ものも言わせない映画でした。

 

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