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特集「アニマルフェスティバル」

2018年1月4日

特集「それいけアニマルフェスティヴァル5」④
〜あけましておめでとうございます〜
ホワイト・ゴッド少女と犬の狂想曲(2015年 動物映画)

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監督 コーネル・ムンドルッツォ
出演 ジョーフィア・プショッタ

シネマ365日 No.2350

…愛を必要とする 

それいけアニマル1-4

今までのドッグ・ムーヴィーと一線を画した傑作です。ラスト、暴走する犬集団のリーダーとなったハーゲンが、飼い主のリリと巡り会います。雑種犬に重税を課す法律が施行され、リリのパパはハーゲンを高架下に置き去りにしたのです。きっと迎えにくるからと、泣くリリを乗せた車が走り去る。ハーゲンはトラックや乗用車がガンガン行き交う道路を力尽きるまで追いかけます。これは人間のエゴで始まり、ハーゲンの野生の目覚めと悲劇で終わる物語です。ハーゲンは賢く誠実な犬でした。リリがいつも練習するトランペットの「タンホイザー」を覚えていた。人間への復讐と反逆で野生化したハーゲンとその集団がリリの前にいる。リリはトランペットを吹きます。ハーゲンが鎮まり「伏せ」したのを見てとった犬たちは、次々前脚を揃え腹ばいになる。何人もの人間を殺傷し、噛み殺した犬たちに救いはありません。もうすぐ銃撃班が到着する。リリもまた腹ばいになり犬目線で向き合います。何百匹いるか知れない犬の群れと、少女を星明かりだけが照らす。犬の襲撃から住民は避難し、街は無人でした。詩のようなシーンです▼さまよっていたハーゲンをホームレスが闘犬屋に売る。彼は過酷な訓練を与えハーゲンを闘犬に仕立てる。鎖につないだまま鉄の棒で殴り憎しみを植え付ける。体幹部を両脇の棒に縛り、ベルトコンベアの上を走らせる。麻酔を打ち牙にヤスリをかけ尖らせる。最初の試合でハーゲンは一瞬で相手に瀕死の深手を負わせました。闘犬屋の隙を見てハーゲンは脱出する。野良犬の集合地であるゴミ捨て場に来た。ここにも捕獲斑が来ていた。ハーゲンは捕らえられ動物保護収容所に連れて行かれる。獣医の担当者はハーゲンの脚を見て「ひどい傷ね。これじゃ誰ももらってくれないわ」無表情な声で「処分」を決める▼リリの友達はハーゲンだけでした。離婚した両親との折り合いが悪く、父に預けられたものの心が開けない。クラスの男友だちとバーに行き、深夜の手入れで補導されてから、パパは娘の孤独に気がつき「新しい犬をもらおう」と歩み寄りますが「いらない」リリは断る。彼女にとっていちばん大事なのはハーゲンでした。雨の日も街を探し続けた。ハーゲンはその頃収容所で、監視員を噛み殺します。口と舌を血まみれにし、ブルッと頭をふると血潮が飛び散った。もはや元のハーゲンではありませんでした。獣医も殺され収容所から何百匹の犬が一斉に脱走した。風のように走りぬける犬の集団に、街はパニック。犬たちは車を襲い、人を襲撃し、外出禁止の避難令が出され、死の街となったのです▼ニュースは「百匹以上の犬が脱走し、職員数名が殺害、目撃者は、犬の集団は統率の取れた軍隊のようであったと話しています」。ハーゲンだとリリはわかる。彼が操っているのだ。心ここにないまま、リリは「タンホイザー」の発表会を迎えた。「大丈夫、立派に吹けるよ」パパは気を落している娘を励ました。演奏が始まった。ホールから聞こえたトランペットの音色に、ハーゲンは会館の中に入る。階段を登る。続いて続々と犬が会場に詰めかけ、二階の手すりのあちこちから頭を出し、窓の向こうにはピンと立った耳の影がいくつも、いくつも映ったのだ。全員退避。リリだけは自転車で空っぽの街に走り出す。処分される前にハーゲンに会いたい…リリの後を追った先頭はハーゲンでした。街角から一斉に走り出てくる犬の群れは怒涛の迫力です。やがて、リリとハーゲンは向かい合う。夜の帳が下りる街。収容所の窓の明かりに黒い影を作って浮かんだ少女が一人。足を踏ん張ったハーゲンがその前に。ハーゲンの後ろには数え切れない犬、犬、犬。真横からこのショット捉えたこのシーンは宗教画のように厳粛でした▼「ハーゲン、私を忘れちゃったの。どうしちゃったの」ハーゲンは近づいてきた。火炎噴射器を持って現れたパパに「お願いだからもうやめて」そしてトランペットを取り出したのだ。リリの吹く音色にハーゲンは鎮まる。腰を下ろし、他の犬が続く。ムンドルッツォ監督は冒頭にリルケを引用しました。「恐ろしいものごとは愛を必要とする」。泣かせました。少女と犬とそれを囲むように座った犬の群像の詩情を、忘れることはできないでしょう。

 

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