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特集「新春ベストコレクション」

2018年1月11日

特集「新春ベストコレクション」④
カフェ・ソサエティ(2017年 恋愛映画)

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監督 ウディ・アレン

出演 ジェシー・アイゼンバーグ/クリステン・スチュアート/スティーヴ・カレル/ブレーク・ライヴリー

シネマ365日 No.2357

胃もたれする 

新春ベストコレクション

ウディ・アレンはいつからしょぼい「思い出屋」になってしまったのだろう。登場人物の見事なほどの現実感のなさは、確かにメルヘンかもしれない。ハリウッドの社交界から出発して故郷ニューヨークに戻り、成功する主人公ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)にしても、彼がロス時代に一目惚れしたヴォニー(クリステン・スチュアート)にせよ、遠くを見る眼差しで、返す術のない過去の愛を見つめる。こういうノスタルジイって誰にでも多少はあると思いますよ。大恋愛の末に別れざるをえなくなり、双方別々の家庭に入ったが、愛した人が忘れられない…にしても「一日たりともあなたのことを忘れたことはなかった」って? 人生の重さに、ああ、そんなこともあったとケロリとしている、もしくはそう見せているほうが、よほど大人じゃないの?▼それともう一つ首をひねるのは、女の側の充実感が一つも描けていないのよね。描くも描かないも、彼女らには人生の重みなんか、ハナからないの。ヴォニーはハリウッドの腕利きプロデューサー、フィル(スティーヴ・カレル)と不倫の仲になって一年、妻と離婚できない男にがっくりし、熱烈アタックしてくるフィルの甥ボビーと結婚すると決めた。ボビーは喜んで、じゃニューヨークに戻って新生活を始めよう、僕はこの街の虚飾に染まらない君が好きだったのだとプロポーズ。ところがフィルの離婚が成立し、ヴォニーはフィルを選ぶ。ニューヨークなんて知らない街で、ボビーのユダヤ人家庭の慣れない暮らしに入るより、サクセスしたおじさんと何不自由なく贅沢に暮らす方が、そら、いいかもね。彼女の選択は大いによくわかるわ。ボビーは有名人や金持ちやギャングが来る兄貴のレストランを手伝うことになり、「カフェ・ソサエティ」(社交界)の実態を肌でつかみ、ヴェロニカ(ブレイク・ライブラリー)というバツイチの女性と出会う。ヴェロニカはヴォニーと同じ名だが、それを抜きにしても素敵な女性だ。二人は結婚し娘を得る▼万事順調に進むが、兄貴の人殺しがバレ、悪事がぞろぞろ出てきて死刑判決。兄貴はユダヤ教からキリスト教に改宗する。理由は「来世がある」。その年の暮れも迫った。フィルが妻同伴でニューヨークに出張し、一ヶ月ほど滞在するという。ボビーとヴォニーは再開した。ヴォニーはどっぷりカフェ・ソサエティに浸かり、セレブの知人の自慢話に花を咲かす。ボビーだって兄貴の死刑がかえって評判を掻き立て店は大繁盛。今や押しも押されぬハイソの仲間入りだ。妻ヴェロニカは家で慎ましく育児に専念している。ニューヨークを案内するボビーとヴォニーの間には、消すにも消せぬ過去の愛の思い出がよみがえる。おまけに(こういうところが本作のモタれるところだが)ボビーはロスにも出店する計画だという。さすがにヴォニーはどう懐かしがったところで二人は終わったのだし、「もう会わないでいましょう」でケリ。二人は別々の場所で遠くを見る眼差し▼アレンは80歳になって、やれ現実だ、人生の実相だというのが面倒くさくなったのでしょうね。あんまり綺麗すぎてもナンだな、と思ったらしく、唯一ボビーの父にこんなことを言わせる。「来世だと。死ぬときが来たら死ぬさ。迎えに来た死の天使に、さんざん悪態をついて、な」この役者はコリー・ストール。アメリカで生きてきたユダヤ人は弁護士か医者か、ウォール街か、成功者にして金持ちが多いが、それらのどれでもなく、額に汗して苦労してきた組だ。ボビーの父と母に当たるベン夫婦が、唯一生活の匂いを発し、映画の手触りを感じさせた。たとえ一見軽い「カフェ・ソサエティ」ではあっても、底に「ヴァニティ・フェア」をしっかり入れ込む映画にして欲しかったと願うのは、アレンにはしんどい仕事になったのか。

 

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