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特集「新春ベストコレクション」

2018年1月12日

特集「新春ベストコレクション」⑤
トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男(上)(2015年 伝記映画)

監督 ジェイ・ローチ

出演 ブライアン・クランストン/ダイアン・レイン/ヘレン・ミレン/エル・ファニン

シネマ365日 No.2358

オスカー像は娘に 

新春ベストコレクション

いろんなことを考えさせてくれる。信念、仕事、家族、愛、才能、友情、裏切り、映画、時代、困難を生き抜き乗り切ること。ジェイ・ローチ監督はどれ一つ取っても一本の映画を作れるエレメントを、さりげなく積み上げ、そのくせラストのトランボのスピーチで一気に締めくくりました。わたし、この監督が「オースティン・パワーズ」や「ミート・ザ・ペアレンツ」のときから好きでしたが、まさかこんなシリアスな映画で驚かせるとは思いませんでした。主人公ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)の人柄が、コツコツと脚本の仕事に打ち込む、映画人というより書く職人だった仕事ぶりがわかります。本作でもトランボは信念を曲げず、理不尽な時代と社会に対して戦うのですが、全然ヒーローっぽくありません。そんなふうに監督は描いていきます▼この映画にはとても魅力的な男たち、女たちが登場します。どこにいてもどんな立場になっても、書く仕事を全うするトランボの周りに、彼の力を認める人々が近づいてくる。もちろん彼がレベルの高い脚本家であり、不遇なために安いギャラでも仕事を引き受ける、それもありますが、彼が鼻もちならない嫌な男だったら誰も助けなかったでしょう。職を奪われたトランボを、13年間にわたって支えた妻と子供。仕事に没頭するあまり「パパ、2分でいいから私の誕生日を一緒に祝って」「仕事中だ、ケーキくらい、なんだ!」パパっ子の長女ニコラ(エル・ファニング)は父親を恨むのですが、若い彼女のカンは、すでに時代が変わりつつあることを敏感に感じている。「パパ、連中は手を出し尽くしたのよ。もう何もできないわ。名乗りを上げてオスカーをもらうべきよ」と断言し「赤狩り」の終焉を予測しました。トランボは娘の進言を容れ、自宅で記者会見を行い、匿名で脚本を書いていた事実を公表します。トランボが遅れてオスカー像を受け取ったとき、その像をどうするのかと聞かれ「娘は人から父親は何をしている人? と聞かれるたび答えられず、長い間秘密を抱いてこなければならなかった。でもめげなかった。彼女は我が家の戦士です。娘にあげることになると思います」▼1930年代、大恐慌とファシズムの台頭を受け、数千人のアメリカ人が共産党に入党しました。第二次世界大戦で米ソが同盟を結ぶと入党者は加増した。労働運動の旗手だったトランボは1943年に入党、冷戦が始まった。共産主義者は疑惑の眼差しを向けられ「ハリウッド・テン」は議会侮辱罪で訴追された。全スタジオはハリウッド・テンの解雇を決定。今後共産党員は雇用しないと表明しました。トランボは刑務所に送られた。出所後「アン王女」を、自分の名前を出さないことにして友人に発表を頼む。「内容はいいけどタイトルがダサい」「そう思うわ」とニコラ。友人は「ローマの休日」に変えた。「パパ、私もこっちの方がいい」いくばくかの現金が入り、一家は一息つきます。時代はでも頑なでした。「アメリカの理想を守るための映画同盟」(ジョン・ウェイン議長)が組織され、マッカーシー上院議員が共産主義者の調査を強化します。トランボは仕事がこない。品の悪い映画ばかり作っているプロデューサー、フランク(ジョン・グッドマン)を訪ねる。「あんたは有名な脚本家だ」「いくらなら払える」「1200ドル」「それで書こう。ギャングの栄華と墜落だ」トランボは100ページを3日間で書く。最初の数枚に目を通したフランクは「この男は天才だ、ギャラを払え」。フランクはガラも口も悪く、がめついけどいい男です。「トランボを解雇しないと締め出すぞ」と脅しに来たエージェントに「俺は金と女のために働いているんだ。仕事を奪ってみろ、ただじゃおかん」いうなり、バットを振り上げテーブルと言わず窓と言わず、床と言わずガンガン殴りつけ、男を追い出した。フランクは安い仕事で量を求め、トランボの労働は週7日、1日18時間、ひたすらタイプライターを叩き続ける。