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特集「新春ベストコレクション」

2018年1月16日

特集「新春ベストコレクション」⑨
静寂の森の凍えた姉妹(2016年 ミステリー映画)

監督 アントン・シグルドソン

出演 マルグレード・ヴィルヒャムズドッテイル

シネマ365日 No.2362

ちょっとあんまりよ

新春ベストコレクション

粒ぞろいの北欧ミステリーの大ファンとしては「おしっ。行くぞ」期待に溢れて静寂に満ちたスクリーンの情景に引き込まれていきました。アイスランドの平和な都市ヘイズモルクで散歩中のおじさんが道路からちょっと逸れた木立の陰に、少女二人の遺体を見つける。姉シグルンは絞殺、妹ハットラは頸部外傷による脳出血。精子の残留物も打撲痕も残っていないが、妹のほうは繰り返し虐待を受けた、そんな検死結果が上がってきた。刑事エッダ(マルグレード・ヴィルヒャムズドッテイル)は、地域に住む性犯罪者29人のうち、4人に任意同行を求めた。小児性愛者、娘への性的虐待、小学校で子供ばかり覗くマグニはIQ80のホテルの皿洗い。姉妹の母親ファンネイは、子供たちの部屋で日記を見つけた。「彼はドライブに連れて行ってくれた。ライオンって呼んでいる。彼がそう呼べといった」。母親はなぜかそのページを破り取る▼エッダは悪夢にうなされ夫に起こされた。彼女が打ち明けた話は「9歳の時、父が帰ってきた。酔っていた。何も心配するなと言い、私の肩を抱いて寝室に連れていった。私は早く終わってと思うだけだった。でも私でよかった。妹でなく」。彼女には父親の性的虐待があったのね。夫が協力した。「なぜライオンなのだ」娘がそれを小耳にはさみ「よくそういう呼び方をするのよ。友達は獅子座なの」。エッダは7月23日から8月22日生まれの男に絞る。シーンが変わり中年の男が怒鳴っている。「誰がメシを作っている。俺だ。誰が掃除をしている。俺だ。誰が世話をしている。俺だ。ありがとうの一言くらい言ったらどうだ…母さん、頼むよ、俺が悪かった、言い過ぎだ、勘弁して」。出所したばかりのエッダの弟アンドリも容疑者の一人だった。やっと理解ある経営者に雇用され、印刷所で働いている。アンドリが事情聴取で呼び出されたばかりに、職場の雰囲気は一変、やっぱり変態だ、おかしいやつだと思っていた…アンドリの顔の変質者のポスターが作られ、ペタペタと貼られた▼ファンネイは「娘たちを殺した俺が、お前も殺す」切り抜きの文字ばかりの脅迫文を受け取った。母親の世話をしている男の部屋。彼が話しかけ、食事を与えているのはマネキンだった。アンドリは職場の男たちに襲撃され、瀕死の重傷を負って入院した。意識は戻らない。やがて目撃者が現れた。顔は見ていないが紺とグレイのジャケットを着ていたと証言した。アリバイのないマグニが拘留され「自白した」と公表された。エッダはマグニが犯人であるはずはないと確信している。彼は車の運転ができないのだ。難航する捜査に苛立っていた署長はマグニを犯人と断定する。エッダはアンドリの彼女と彼の部屋を訪れた。彼女が着替えを出そうとしたクローゼットにエッダの目が吸いついた。そこにあるのはグレイと紺のツートーンのジャケットだった。犯人は弟だったのか。姉妹に声をかけ、手を引いて白いバンに乗せるアンドリ。彼の横顔のクローズアップで映画は終わりだ▼エピソードを断片的に流すだけで、わからないことばかりだ。ライオンと呼ばれる男は誰だったのか、切り抜き文字の発送者、母親はなぜ娘の日記を破って警察から隠したのか、姉か妹か、どっちの日記だったのだろう。エッダの父親による性的虐待はこの映画にどう関係するのか。するならするで、もう少し具体的に収めてほしい。マグニ犯人の公表は弁護士もつけず、暴挙ではないのか。でも映画は終わってしまうのだ。ちょっとあんまりよ。北欧の白い静寂の世界だけが綺麗だったわ。なんでもかんでも「北欧」ならいいってわけじゃないのよ。