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特集「新春ベストコレクション」

2018年1月17日

特集「新春ベストコレクション」⑩
愛しすぎた男 37年の疑惑(上)(2014年 劇場未公開)

監督 アンドレ・テシネ

出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ギョーム・カネ/アデル・エネル

シネマ365日 No.2363

母が嫌いだった

新春ベストコレクション

見終わってスカッとする映画は、ほとんどアンドレ・テシネ監督にはありません。そのせいかもしれませんが、本作もいい映画なのに劇場未公開でした。テシネとカトリーヌ・ドヌーヴの作品は「夜を殺した女」や「夜の子供たち」があります。前者は自分の気持ちを偽らねばならない証言を拒否して、刑務所を選ぶ女。後者は教え子の女子大生との愛の袋小路に疲れ自殺する教授。人生とは挫折と絶望の連続だ、その実相を捉えようとする限り、ハッピー・エンドのおめでたい映画を、俺は撮る気はない、テシネはそう言っているみたいです。ハリウッドのおよそ真逆にいる監督です。本作もそう。ヒロインのルネ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、カジノ「パレ」経営に成功したニースのセレブ。一人娘アニエス(アデル・エネル)は離婚し母親の元に帰ってきたところから映画は始まります。ルネも現在独身である。彼女らの過去の生活に説明はなく、母娘関係は「母が嫌いだった」娘の一言でテシネはスパッと切り捨てます▼モーリス(ギョーム・カネ)は経営のアドバイスに当たる弁護士です。頭がよく、ソツのない彼はマフィアのボス、フラトンの手先でもある。ルネはモーリスの助言によって社長に就任する。ルネはしかしモーリスを信用していない。アニエスは母親への当てつけのようにモーリスに接近する。「妻も子もいる男よ。彼はお金だけが目当て。一人の女を幸福にする男ではない」と母親の忠告を無視。あろうことか株主総会の社長再任案に反対票を投じ、ルネを追放する。カジノはフラトンの所有となる。フラトンはカジノ経営に興味はなく、転売して高級住宅地にする計画だった。350人の従業員は失業する。カジノはルネの人生そのものだった。ルネは自分でもよい母親でなかったことを認めている。娘にかまってやることができず、それが亀裂を大きくしたことも知っている。「いい母親ではないけれど、あなたを愛している」戻ってきた娘にルネはそういうが、娘は(いまさら)って感じ。アニエスとモーリスは、フラトンから振り込まれた多額の礼金を折半して、銀行の貸金庫に預けた。モーリスは妻も子も、愛人もいながらうまくやっている隙のない男だ▼ある日、ルネの運転手を務めていたマリオが訪ねてきた。彼女は従業員を大事にしてきた。オムレツで簡単なランチを共にしながらマリオが言う。「今回の騒動はお嬢さんのせいだ。なぜあんなことを」「娘はモーリスに操られたの」「母親を裏切るなんて、俺なら許さない。バックミラーを見ればわかる。お嬢さんはあなたに反感を持っていた」。ひとしなみに感じる世間一般の感情を監督は彼に代弁させています。それを聞いてルネは辛そうに席をはずす。アニエスはなに不自由ない自由と金を手に入れた。男はいう。「愛しすぎるな。おかしくなる。友だちのほうがよかった」。直後アニエスは失踪する。