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特集「新春ベストコレクション」

2018年1月20日

特集「新春ベストコレクション」⑬
スポットライト世紀のスクープ(下)(2016年 事実に基づく映画)

監督 トム・マッカーシー

出演 マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス/スタンリー・トゥッチ

シネマ365日 No.2366

その日は日曜日だった

新春ベストコレクション

新聞社側にも落ち度があった。神父の虐待情報を得ながら見逃していた。虐待のケースと扱った弁護士に取材し、神父のデータを渡してくれと頼むと「5年前に送っている。必要なら社内を捜してくれ」。教会という権威への苦手意識、購読者へのおもんばかり。しかし90人近い神父が30年の間に、何百人、何千人の子供を虐待し、子供たちはトラウマを抱え、社会復帰できないまま死んですらいる。教会は神父たちを教区の異動で事実を隠蔽してきた。ほとんどの親は示談金ですまし、口外しない誓約書を書かされていた▼「一日も早く記事の発表を」と迫る記者に編集局長は「神父の虐待を暴いただけでは大騒ぎになるだけで何も変わらない。教会の隠蔽システムを暴け。教会が同じ神父を何度も転属させ、それが上の指示で行われていることを。標的は教会組織だ」。そこへ裁判資料の公開によって、虐待を受けた子供の母親が枢機卿に宛てた手紙が発見された。ゲーカン神父の教区にいた女性だ。「我が家は敬けんな信者なので、私は教会を守りたい。7人の息子たちがレイプされた苦しみを味わおうとも、沈黙を守ってきましたが、ゲーカン神父はまだ教区にいます」この訴えを枢機卿は無視した。組織ぐるみで虐待を隠蔽していた証拠は上がったのだ▼権力とか組織は肥大すればするほど、利権体質に染まっていくのだろう。2002年1月、最初の記事が紙面を飾った。その日は日曜日だった。じっとしていられなくて出勤した部長と担当記者は、フロアが空っぽなのを不審に思う。受付が奥のスポットライト・チームのオフィスを指し「応援に行きましたよ」。二人がドアを開けると、部屋中の電話が鳴りっぱなし。総動員で対応に当たっている…凄まじい反響だった。一年間に虐待取材記事は800本に及んだ。2002年枢機卿はボストン大司教を辞任、ローマにあるカトリック教会最高位の教会に転属した▼実態は明らかになったが、根本的に解決したかどうかはわからない。記事に対して教会は徹底してノーコメントを通した。同じことをする神父は後を絶たないだろう。人間の本性は変わらないのだから。しかしチームは「俺たちは少しだけ、世界を変えたのだ」。チームで唯一の女性であり最年少のサーシャ記者になったレイチェル・マクアダムスは実在のサーシャに取材したとき、男社会の新聞社で引け目はなかった、自分の価値は彼らとイコールなのだと彼女が何度か話したことを述べた。チームの部長ロビーを演じるマイケル・キートンを見て、本物のロビーは「声や話し方まで自分にそっくり。鏡を見ているようだった」。被害者のために憤怒するマイクを演じたマーク・ラファロに対し、実物マイクすら彼の情熱に惚れたようだ。本作は強敵「レヴェナント:蘇りし者」を抑え、アカデミー作品賞を獲得。合わせて脚本賞も。監督(トム・マッカーシー)・助演男優(マーク・ラファロ)・助演女優(レイチェル・マクアダムス)・編集各賞の候補に名を連ねた。