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特集「最高のビッチ」

2018年1月27日

特集「最高のビッチ5」⑤カトリーヌ・ドヌーブ
幸せはパリで(1970年 恋愛映画)

監督 スチュアート・ローゼンバーグ

出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャック・レモン

シネマ365日 No.2373

ビッチが好きなドヌーヴ

特集「最高のビッチ5」①ティルダ・スウィントン

セレブの大邸宅でパーティがある。豪華なディナー・ドレス、ブラックタイの客人たちが詰めかけ大賑わい。階段から降りてくる脚が見える。そう、マレーネ・ディートリッヒが「狂恋」で有名にした「階段の美脚」です。もちろんこれがカトリーヌ・ドヌーヴ。主催者の社長夫人カトリーヌです。ドヌーヴが案外綺麗な脚をしています。気がつかなかったわ。彼女は26歳。すでに名声を得、大スターの仲間入りをしていましたが、どうかした表情にドヌーヴの幼さがよく出ています。ドヌーヴという人は不思議と暑苦しくない。映画の役柄にもよくそれが現れ、男にベタベタまとわりついてジメジメ泣く、という作品がありません。ダメなものはダメ、じゃサヨナラって感じの、男っぽい性格のヒロインが多い。「昼顔」や「反撥」で醸したアブナイ女の片鱗は本作にはまだありませんが、でもやってくれる。結婚して2年目、結婚してパリからニューヨークにきたが夫はとうに妻に無関心、妻はアメリカ社会に馴染めず、パーティで浮いています。監督はスチュアート・ローゼンバーグです。「暴力脱獄」や「さすらいの航海」「マシンガン・パニック」を見ても、この人、すごく繊細だと思うのよね。男性にも女性にも▼パーティでジャック・レモンと出会い、パリに駆け落ちするまで二日間の物語です。二人が好意を持ち、自分と同じ種類の人間だと感じ合う、そのへんをきめ細かく扱っていて、いきなりベッドシーンだなんて、撮っていませんよ。パーティではカトリーヌがタバコをふかしながら座に入ってきます。知られているかどうか、ドヌーヴは少なくとも若い時ヘビスモで、姉のフランソワーズ・ドルレアックが「あなた、煙突みたいに煙だしていたわね」とバラしていました。そのせいかどうかタバコが板についています。タバコ好きのドヌーヴのために、監督が入れたシーンじゃないでしょうか。もっともドヌーヴはフランス人の両親から、パリ生まれのパリ育ち、純度100%のパリジェンヌです。ニューヨークの成金のパーティで浮いてしまうのは、タバコだけでなく、全く異質のヨーロピアン・テイストのせいかも▼で、フツーに考えて有り余る資産を持つ夫から、いくらフィーリングがあったとはいえ、子供にも妻にも相手にされない男とパリに飛ぶのだから、思い切っています。ドヌーヴには現状否定の脱出行という映画が案外多いですよ。男をたぶらかして破滅させることによって「現状から脱出する女」が。彼女の20代、30代の作品なんか特にそう、しかも女優としての評価を決定的にした代表作ばかりです。「昼顔」「哀しみのトリスターナ」「暗くなるまでこの恋を」なんてね。「ハンガー」は40歳だったけど、それでも嬉々としてデヴィッド・ボウイを見捨てていました。ドヌーヴはビッチが好きなのよ。本作でも、パリに行った後どうなるか知りませんよ。かたや、地元に戻って水を得た魚、羽を伸ばす妻、かたや、異国のパリのアメリカ人の夫…どうかなあ▼子供コドモしていると書きました。神話の美女のようにドヌーヴは言われますが、どうかした拍子に実に無邪気な顔になる。子供っぽいわがままや、我の強さや、気取りのない性格に違いない。それに体型にも関係ある。頭が大きくて重心が上にあって危なっかしい。おまけにワ〜ンと見事なブロンドが盛り上がっていますから、ますます頭が大きくなる。ドヌーヴは本来とても体格のいい人だし、上手下手はともかく、歌も歌うし踊りも踊ります。それなのにこの映画では、本場パリで見せた、例えば「恋のモンマルトル」みたいなイキのよさが影を潜めています。ハリウッドに来た「借りてきた猫」か(笑)。そこが物足りないけど、まあ、いいか。ローゼンバーグ監督のやさしい作り方と、それと、なんといってもジャック・レモンね。彼のコメディの奥の深さは、紙一重で「男の哀愁」を感じさせる演技にあります。世間に揉まれ、家族にうとまれ、でも妻や子供の喜ぶ顔が見たい、昇進したとイの一番に電話したら、妻は「あ、そう」で終わり。「お疲れさま」でもなければ「あなた、ありがとう」でもない。世界のどこよりも誰よりも、妻と家庭を愛している男の気持ちが伝わらない、いや、結婚生活に磨滅され、伝わらなくなってしまっている。そんな「現状」からの脱出行を、ジャック・レモンが大げさにせず演じています。彼の場合、カトリーヌは「希望」なのです。欲も得も捨てて、希望だけを持って人生再出発する中年男が爽やかに見えました。彼の「希望」の体現であるドヌーヴがサラサラして、とても綺麗でした。