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特集「最高のビッチ」

2018年1月28日

特集「最高のビッチ5」⑥エリザベス・モンゴメリ
リジー・ボーデン 奥様は殺人鬼(1975年 日本未公開)

監督 ポール・ウェンドコス

出演 エリザベス・モンゴメリ

シネマ365日 No.2374

伝説の未解決事件

特集「最高のビッチ5」①ティルダ・スウィントン

事実に基づく映画です。1892年8月4日。マサチューセッツ州フォールリバーで起こった殺人事件。実父と継母が斧で惨殺された。容疑者はリジー・ボーデン(エリザベス・モンゴメリ)。父は町の実業家で、一家は裕福だったが実母が亡くなってから継母と次女リジーの間に争いが絶えなかった。長女エマとリジーは仲がよかった。エマは殺人があったと聞いた直後、妹に訊いている。「あなたなの、リジー。お父さまを殺したのは」リジーは無表情に「ちがうわ」。法務官は二人の遺体の頭部を外し、姉妹には内緒でハーバード大學の法医学部教授に送りたいと、被害者ボーデンの弟に許可を求める。二人は斧で頭部を十数回にわたり滅多うちにされ、頭蓋骨が砕かれていた。検視の結果がどう出たのか、映画ではつまびらかにされない▼殺人の時刻(午前11時)家にいたのはリジーだけで、家政婦マギーは庭で窓枠の修繕をしていた。マギーは26歳、ボーデン家に来て2年9か月になる。リジーの証言はあやふやで一貫性がなかった。検事に追い込まれ「覚えている限り正直に答えています」と繰り返す。仲の悪かった義母との関係や、リジーが父の遺産相続できる莫大な額などにより、犯人はリジー以外にないのだが、凶器の斧が見つからない。リジーが返り血を一滴も浴びていないことなどからリジー犯人説は決め手を欠いた。一方、リジーが日曜学校の教師をしており、外国人宣教師の世話をしていたボランティア活動から、「リジーは無罪だ」と町の人々はプラカードを持って裁判所に詰めかける。判決は「無罪」。リジーは釈放され、裁判所の玄関では、ブラスバンドが演奏して迎える。真犯人は分からないまま現在に至る▼映画はリジー真犯人説を取り、マギーが屋外で作業中の隙を見計らい全裸になって斧を手に、継母と父を殺害し、血を洗い流して別の服に着替えた、汚れた服は燃やしてしまった、としている。はっきりした証拠がないので、どことなくぼかした点が多々ある。劇中、父と姉が度々リジーに言及する「お前は特別だ」「あなたは特別だった」。何が特別だったのか具体的な理由がわからない。姉が「あなたの女性的な感性」と指摘しているだけ。両親が殺された後「ようやく私たちは二人だけになれたのよ」とリジー。姉は「時々あなたがわからなくなる」勘ぐれば何となく意味深で、二人姉妹の濃い関係をほのめかす▼リジーには「やさしいかと思うと冷たく頑な」な相反する性格があり、突然激発すると父親は言う。しかしそんな病的な傾向を「特別」というだろうか。リジーは裁判後高級マンションに移り、66歳で死ぬまでそこに暮らした。リジーの死から9日後エマも同じ墓に入った。後追い心中かと思った。リジーは伝説の主人公となり、いくつもの小説、舞台、映画が事件を取り上げエド・マクベインの「Lizzie」は、リジーはボストンで女優と恋に落ちた、そのためエマと決別したとなった。裁判では無罪となり、支持派の歓呼で迎えられたが事実は村八分同様だったらしい。1933年にはリリアン・ギッシュ主演で舞台化された。クリスティーナ・リッチは2014年、テレビ映画「MONSTERモンスター」でリジーを演じた。クロエ・セビニーがリジー、クリステン・スチュワートがマギー、ふたりが恋愛関係にあったという設定で映画化の話が出たが、実現していない。世紀の未解決事件として今なおリジーは伝説のヒロインとなっている▼本作のリジーを演じたエリザベス・モンゴメリは「奥様は魔女」のサマンサだ。長寿番組に飽きて、後半生は女優としてキャリアを積み、エミー賞にノミネートされた。邦題の「奥様」云々は、モンゴメリの当たり役にこじつけたものだが、劣悪の最たるものだろう。本作はモンゴメリ42歳のとき。その2年前に終了した「奥様は魔女」の後を受け、モンゴメリが女優としての新境地に取り組んだものだ。可否はさておき、あるときは憎々しげに、あるときは意地悪く、あるときははかなげに、でも本作でリジーを取り巻く男性関係が一つもないのは、やはりゲイ説に思い当たるが、殺害の理由は依然として明らかにならない。キャリアの再スタートに「R」指定のビッチを選んだ、モンゴメリのチャレンジを多としよう。