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特集「最高のビッチ」

2018年1月30日

特集「最高のビッチ5」⑧レア・セドゥ
若き人妻の秘密(2011年 日本未公開)

監督 ジャムシェド・ウスマノフ

出演 レア・セドゥ/オリヴィエ・グルメ

シネマ365日 No.2376

ニコリともしません

特集「最高のビッチ5」①ティルダ・スウィントン

例によって、ヒロイン、エーヴを演じるレア・セドゥがニコリともしません。不機嫌三代女優を選ぶとしたらトップはレアですね。次に来るのはエヴァ・グリーンかルーニー・マーラ。みなさんストイックな役がお得意で、ルーニーなんか「キャロル」でケイト・ブランシェットですらまだやさしげな笑顔を見せるのに、ひとり「不安の詩人」パトリシア・ハイスミス代表としてムスッ。特にラストなんかね。本作はかなりセンスのいいミステリーです。派手な盛り上がりを極力抑え、最後のどんでん返しも一言のセリフでケリをつける。地味目ですが脇見させない。事件が進行するにつれ、エーヴの内面が揺れ動く。うまくいったはずなのに悪巧みに加担する自分につくづく愛想がつき、共犯者の亭主をポイ。レアのむなしさ満開の表情。こういう虚無感を表すときの彼女は天下一品です▼エーヴが警察に夫ポールの捜索願を頼んでいる。ジョギングに出たきり帰らなくなった。20歳で結婚してエーヴは25歳。結婚以来朝食は必ず一緒に食べる習慣だったのに、その朝はいなかった。弁護士ショレ(オリヴィエ・グルメ)の事務所で夫は弁護士活動を始め独立した。夫の事務所に行くと管理人は「4か月前から空き家」だという。デスクも家具も事務機器もないがらんどうの部屋。次に裁判所から債務不履行による差し押さえが来た。夫は多額の借金を抱えたまま姿を消したのだ。夫はショレ弁護士の教え子だった。ショレは何くれと面倒を見てくれた。エーヴは多額の借金を彼が全額返済してくれたばかりか、当面の生活費まで振り込んでくれていることを知る。ショレは1年前に息子と妻を亡くしていた。二人とも自殺だった。エーヴはショレに「好きです」と打ち明けるが「年が違うよ。それに心臓の持病がある。寿命はあと4、5年らしい。妻と息子の死で私の人生は完全に終わったのさ」でもなんだ、かんだ言いながら結局受け入れる。ショレは妻と子供の写真をさっさと片付け、エーヴに「引っ越しておいで」調子のいい薄ハゲ親父ね▼そこへ刑事が。くどくど聞き取りをした挙句「ご主人の破産は彼の企みだ」と。「まず大口顧客ふたりを失わせた。事務所は不振に陥ったが、贅沢と権力の快楽を覚えたご主人は歯止めがきかず破滅に一直線。結果としてあなたは彼のものに」。エーヴはショレに「引っ越しはやめたわ。気が変わったの」ショレは動じるふうもなく、遺言書のコピーを見せる。「私は少なからぬ資産を持っている。命は長くて5年だ。君は相当な遺産を相続する」「引き替えに寝るの?」「言葉を選びたまえ。去ってほしいか。相続もなくなるぞ」「夫の破産は私を奪うためにあなたが仕組んだと刑事は言ったわ」「信じたのか。刑事の仮説の一つさ。私が求めるのは君に愛されることさ。たっぷりとね」その夜はそうなったらしい。翌日ショレの心臓の具合が悪い。薬を買ってきてくれとエーヴに頼む。日曜日でどの薬局も休み。車で出会った元カレが、なんで俺を捨てたとグダグダ絡んだ挙句車の中で暴行。薬局の前でエーヴを捨て走り去る。帰宅したらショレは息を引き取っていた。エーヴ、しゃがみこんでタバコを吸いながら号泣。とぼとぼと公衆電話に。出た相手に「ポール? 私よ。やったわ」「さすがだ、よくやった。寂しかったよ、すぐ会いたい」「もう会わない」ガチャン。橋の上のエーヴ。茫々と川は流れる。虚脱感の塊になったヒロインを見せて映画はエンド。サラサラ流れがちの内容に、句読点をはっきり打っているのがやっぱりレアちゃん。26歳でした。本作のあと「マリー・アントワネットに別れをつげて」「アデル、ブルーは熱い色」など、年齢より屈折した難しい役をよくこなしています。